第五十一話 嵐の予感
人は好きな人ほど構いたくなる
好きな人ほど色んな表情がみたくなる
好きすぎて自分にしかみせない顔をみたくなる
一方的な好き度の高さは相手の恐怖度の高さ
★葵
午前とは違い午後は昨日より強い風が吹き始める。午前の部活の出し物を終え、午後からはクラスの出し物に参加する。オレと柊は執事の格好をし、校門前でクラスの出し物のチラシ配りをする。
「いや~今日は一段と風が強いね~口の中がじゃりじゃりする~」
「そうだな、今日も男らしい風だな」
「……そうだね。なんだろう……デジャブだね~。昨日もこんな会話だった気がする」
「そうだったな」と男前のイケメンの柊が少し微笑む。
「すみません、チラシをいただいてもいいですか?」と女子中学生が柊に上目遣いで声をかけてくる。
「あ、あの……お兄さん、お兄さんたちもお店に出るんですよね」
女子中学生たちの集団が頬を赤くして柊を見つめる。
「ああ、俺らも店に出る」と男前の柊が答える。
うん……なんというデジャブ感、まるで昨日を繰り返しているのかのよう。
柊と女子中学生たちが少し会話を交わし、オレは愛想よく見送る。
「また後でオレたちに会いに来てね~待ってるよ~」
今日も柊のおかげでクラスの出し物が繁盛しそうな予感がする。
今日は百合に怒られないように、時間通りに交代してすぐに教室に向かう。教室の前は柊のファンらしい人たちで行列ができている。と、その中に見覚えが有る人たちが紛れていた。
「あ、葵ちゃ~ん」と柚は笑顔で元気よく手を振っている。
「こんにちは」と菫さんは真顔で会釈をする。
「えへ! 葵、きちゃった~」と兄貴は目元でピースをする。
やあ、兄貴。本当に会いたくなかったよ。兄貴は嫌がらせをする天才だな。
兄貴は小さく手を振り、ウインクをする。
「あ……。お揃いで……いらっしゃいませ」
オレは笑顔が作れずわかりやすいくらいの苦笑いで対応する。
「あれは……百合君? 可愛いね~似合ってるよ~」
百合はオレたちの後ろから走ってきたようで、少し息を切らしている。
「あ……」
百合は兄貴たちに会釈をし、教室に入っていく。
「わ~可愛いな~僕も着てみたいな~」と柚。
「柚も似合いそうだね」と兄貴。
「でしょでしょ~」と柚は可愛いポーズを取る。
オレと柊も教室に入り、スタッフという名のクラスメートが集まるスペースに向かう。
「羽柴!」
「あ、百合君! どうしたの? 慌てていたようだけど? 昨日のことがあったから心配してた?」
「あ、えっと……そうではなく……。お兄さんたちが見えたから先に伝えようと思ったんだけど、間に合わなくて……ごめん……」
「あ~それか…。なんか気を遣わせちゃってごめんね。面倒なのは確かだけどさ~適当に対応するし~問題ないよ~。お気遣い、ありがとね~百合君」
兄貴たちが変にクラスメートに絡んでも嫌なので対応することにする。席に案内すると兄貴と柚はキョロキョロとしはじめる。
「お客様、こちらがメニューになります。ご注文が決まりましたらお呼びください」といってその場を後にしようとすると兄貴に手を引っ張られる。
「葵、メニュー決めている間くらい話をしようよ」
「ねーねー! 可愛いメイドさんに接客お願いしたいよ~」
「柚はワガママだな。葵、申し訳ないけど接客チェンジしてもらえるかな?」
「お客様、申し訳ありません。そのようなシステムは御座いません」と深々と頭を下げていると柊が背中をポンと叩き「葵は下がっていろ」と耳元で囁き「彼が失礼をした。わたしが代わりにご注文を取らせていただきます」とボウ・アンド・スクレープをする。すると教室内にいる女性たちの黄色い声と拍手が響き渡る。兄貴たちは空気を読んだのか注文だけして後は静かに過ごし、オレらに絡むこともなく長居をすることもなく軽い食事を済ませるとさっさと帰っていく。
「葵ちゃ~ん! まったね~」と柚は笑顔で元気よく手を振り、菫さんは会釈をし、教室を出ていく。
「またね~」と兄貴は笑顔で小さく手を振り出ていく。
何事もなく安心する。
「柊、すごく助かった。ありがとう」
「うむ」と柊は得意げな表情をみせる。
「羽柴、少し休憩する?」
「百合君、大丈夫だよ~まだまだたくさんのお客さんいるし頑張るよ~」
「そうか、頑張ろう」
柊目当ての女性人たちの行列は学園祭が終わるまで途絶えることがなかった。なんだかんだでバタバタした学園祭は終了し、残すは片付けのみとなった。
「百合君、お疲れ~やっと終わったね。少し休憩しにいかない」と天井の方を指さす。
「お疲れ。そうだな、行こうか」と百合は笑みを浮かべる。
クラスの出し物が一区切りし、オレと百合は休憩するために屋上に向かう。
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