第四十六話 葵チームと柚チームのアンバト試合
実力の差ってどうしてもあって
向き不向きってのもあって
努力をしたからってその隙間は埋まらない
なら自分が持っている"最強の個性"でカバーしてみるのもいいんじゃない
★葵
オレたちは二回戦も勝ち、決勝へと駒を進める。一方、柚たちのチームも二回戦に勝利し決勝へと進む。兄貴の言う通りにオレたちは戦うこととなった。
「樒先輩の弟くんチームのみなさん、決勝戦頑張りましょう~」と柚はキラキラ笑顔でウインクしながらダブルピースをする。
「お互い、悔いのない戦いをしよう」と無表情と棒読みでコトバを返す。
柚チームのメンバーは、剣が悠馬、双剣が陽翔、槍が颯汰、柚と蓮の五名。
オレらのチームと柚のチームとの戦いが始まる。
試合が開始すると柚と蓮が先行して走りながら陣地取りを始める、さっきと同じ戦略のようだ。オレたちの作戦も柚チームに合わせて朴と柊が先行して走りながら陣地取りをする形をとる。陣地取りはお互い半分ずつのところで一旦落ち着く。柚と蓮は前回の試合のようにアタッカーの人を狙うことを想定し、菖蒲と朴、柾と柊という組み合わせで守りと攻撃をする態勢を作る。
オレは悠真を見つけ戦闘態勢に入る。剣と剣のぶつかり合い。オレはそれなりの本気を出して悠馬に攻撃をする。悠馬は押されながらも怯まずにオレの剣にぶつかってくる。悠馬は受け止めきれないのがわかっていても前へ前へと向かっては戻されるという状態を続ける。オレは悠真に力いっぱいの攻撃を仕掛ける。悠真はオレの剣を受けきれずに少し後退りをする。これは力押しで……と思った瞬間、背中から真っ直ぐな風を感じ避ける。蓮の矢が悠真に当たる。自分のチームの人にカラーを当ててもカウントはされないので問題はないが、攻撃を受けた側は少なくとも動揺はしてしまう。悠真にカラーが当たった瞬間、隙ができ、オレは悠真の剣を力いっぱい振り飛ばしリボンを奪い取る。
試合は同じ武器の人と戦うルールはないが大体の人は自分と同じ武器所持者と戦うことが多い。そして自分の試合が終わると他のメンバーの加勢をするか見守るかの選択となる。当然、加勢する場合一対二となるため、その場合はシューターの二人がアタッカーの二人がかりの片方を集中攻撃するという形になることが多い。オレは様子見もしたいというのもあり加勢はせずシューターの二人の動きを注目しながらみんなの戦いを見守る。
菖蒲は陽翔と双剣の戦いに入っており、足場が悪いこともありいつものようには戦えていない様子である。正統派の菖蒲のようなタイプはオレと違って整っていないフィールドは苦手なようだ。足場のデコボコさに足がとられ上手く立ち振る舞いが出来ないでいる。
「百合君、柚も蓮の様子は今のところ動かなそうだよね」
「そうだな、羽柴を警戒しつつ様子を伺っているように見えるかな」
「了解、ありがとう、百合君。みんな、聞いてくれ。作戦なんだけど……オレが菖蒲の戦闘に参戦するふりをして蓮の注意をこちらに向けようと思う。そして、オレが菖蒲のところに向かうと同時に朴も菖蒲の方に向かって欲しい。蓮の注意がこちらに向いたら、朴と柊は槍担当の人を狙って欲しい。朴はポジションをオレと入れ替えるイメージで向かってきてほしい。そのあとは、朴と柊は柚を狙ってほしい。菖蒲と柾はオレたちを気にせず現状のまま戦いを続けてくれればいい」
全員同時に「了解」と返事が来る。
「じゃあ、いくよ。GO!」
オレの合図でオレと朴は菖蒲と陽翔に向かって走り出す。蓮は朴を狙っていたが、相手を変更し、オレの方に矢を向ける。柚も蓮に少し遅れてオレを狙い撃つ。オレは両方の攻撃を避けて朴がいたポジションに向かう。蓮の矢が放たれた瞬間に朴と柊は颯汰を狙い打つ。柚は慌てて柊を狙う。柚のカラーは柊に命中する。朴と柊はそのまま柚の方へ向かいオレたちがいる戦闘場所から離れていく。柚対柊と朴のシューター同士の戦闘に入る。さすがの柚も二人が相手となると厳しい戦いになるらしく距離を取りつつ撃ち合いをしていく。オレは朴がいた場所で蓮の動向を追う。
菖蒲と陽翔は戦闘を続け、陽翔の息遣いが変わった瞬間に菖蒲が攻撃を仕掛け、リボンを奪い取る。柾は力押しで颯汰の槍を地面に押し付け、そのまま槍を払いのける。柾は武器が手元からなくなった颯汰からリボンを渡される。
試合はオレたちのチームの勝ち、新人戦は優勝した。
「あ~もう、樒先輩たちとだったら負けなかったのに~」と柚は頬を膨らませプンプンと怒っている。
「柚、ごめん……」と蓮が頭を下げる。
「蓮のせいじゃない、悠真たちが弱すぎるんだよ~」と柚は悠真、陽翔、颯汰を睨みつける。
「柚……悪かった、俺たちの……」と悠真が謝ろうとするが「あのさ~よわっよわの君たちに~柚って呼び捨てにされたくないんだよね。せめて君くらいつけろよ……クズ共が」と柚は話を聞こうとしない。そして柚子の顔から可愛さが消え、悪魔のような目つきで悠真、陽翔、颯汰を睨みつける。
「あ、蓮は僕のこと~柚って呼んでね~」と柚は可愛いニコニコした笑顔になる。
「ゆ~ず~。あと、みんなも。反省会やるよ~戻っておいで~」と樒がニコニコしながら手招きをしている。
「は~いっ!樒せんぱ~いっ」
柚は笑顔でスキップしながら退場する。他メンバーは下を向き足取りが重そうだ。
「羽柴君、お疲れ様」とオレの肩を叩く柾。
やりきった顔をするチームメンバー達が集まっていた。
「新人戦だから勝てたようなものですよね……」と菖蒲は作り笑いみせる。
「柚……あいつ……俺ら二人を相手にしても動じず、俺ら二人の攻撃を普通に避ける……本当に強い奴だ」
「柚は……化物級っす」
朴も柊も汗を流し、息も荒い。
「うん、柚と蓮は個人戦の結果もそうだったけど……別格だね。あとの三人は新人だから出られたレベルで……基本は試合に出させてもらえなそうなメンバーなんだろうな。未経験者ではなさそうだけど試合慣れしていなそうな印象だし……」
「基本は、アマチュア戦でみた五人でチームを組んで試合に出ているのですね。本来のメンバーと戦ったら勝てる気が……」と菖蒲は少し暗い顔をする。
「まあ、それは実際にやってみないとわからないよ。オレらだって、実力を全て発揮しているわけではないしさ」とオレは笑顔で菖蒲の背中を叩く。
兄貴の実力を知っているオレとしては本来の兄貴達のチームとの戦いは計り知れない。というか兄貴のチームと戦うのは少し怖いと思う……いろいろな意味で……。
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