第四十四話 はじめての公式チーム戦
はじめても
はじめましても
不安でいっぱいだけど
ワクワクっていう期待と楽しみで
不安なんか吹っ飛んじゃうね
★葵
夏休みもあっという間に終わり、空にはうろこ雲が全面に広がっており、アンバト部の練習場にはコスモスが咲き乱れている。夏休み中はアンバト三昧の毎日を過ごした。自分で言うのもなんだがすごく成長した気がする。オレだけでなくみんなも含めて。個人競技にも出たことだし、次は高校の新人戦のアンバトチーム戦に挑むつもりだ。もちろん部活のメンバーからも了承を得ている。
新人戦なので出場できるのは一年生だけである。アンバト部を強化している学校は比較的少なく趣味の範囲くらいの部活が多い。とはいえ、オレたちはこれまでやってきたことを全力で出したいと思う。
そんな意気込みで新人戦を迎える。
新人戦が行われる会場は個人戦が行われた会場とは異なり少し自然に近い地形をした場所だ。山あり谷あり、鋪装がされていないデコボコの地面、足場が不安定でアクロバットが得意なよく動くオレたちには有利なフィールドである。
ルールは五名対五名で武器種もシューターが二種、アタッカーが三種の形式である。出場チームは全部で8チーム、オレたちはAブロックの第二グループ。オレたちのチームは、朴、菖蒲、柾、柊、オレの五名でサポーターとして百合がつく。
サポーターというのはヘッドマイクで全体への指示や状況説明をする人である。公式の試合でメイン選手以外にサポーターをつけることが許可されている。サポーターをつけずメイン選手がリーダーを立てその人が戦いながら指示する場合もある。
Aブロックの第二グループの一回戦。オレたちの出番!
試合スタートの合図で相手チームの様子を見ることなく、オレたちのチームは全員で猛ダッシュをする。オレ、朴のグループと菖蒲、柾、柊のグループにわかれて陣地取りを始める。相手チームは様子を伺いつつ進もうとしていたようだが、オレたちの動きを見て慌てて陣地取りを始める。相手の様子を見ていると向こうも初心者のようで動きにキレがない。陣地取りはとった者勝ちになるが初戦でもあるので様子見で半分位まで陣地取りを行う。
数分後、相手チームも半分くらいまでの陣地取りを終え、シューターの二人を後方に待機させアタッカーの三人が歩いて向かってくる。オレたちもシューターの二人を後方に置きアタッカーの三人で相手チームが来るのを待つ。
相手チームのリーダーらしき人物が片手を上げ近づいて来て「えっと、同じ武器同士の戦いでいいかな?」と言う。
普通の試合ではこのようなやりとりはほとんど見ることがない。
やはり初心者だ。
「あ、はい! そんな感じで戦いましょうか」と笑顔で答える。
オレたちのチームは相手の案に乗って戦うことにする。それぞれの武器種同士で対峙し、相手チームのリーダーの合図で戦いが始まる。オレも菖蒲も柾も様子見のため相手の攻撃を受け続ける。相手の様子はというと多分、本気で攻撃をしているようである。
通常はシューターの人がアタッカーの戦闘中に追加の陣地取りを行ったり、アタッカーに攻撃をするものだが……相手チームのシューターの二人は武器を下ろし戦いを観戦している状態である。希にこの戦い方をしたがるチームもあるが本当に希で……今回の場合は初心者で新人戦でもあり正々堂々という考えでの戦い方なのだろうと思う。
オレはヘッドマイクでみんなに作戦を伝える。
「このままダラダラと戦うのもつまらないから……。菖蒲、柾、オレの三人で同時攻撃をして終わらせようと思うんだけど……どうだろうか」
「僕は問題ない」と柾。
「わたしもです」と菖蒲。
「ラジャっす」と朴。
「そうなると、朴と俺は暇なのだが。はじめての試合だ。最後に俺たちも攻撃してもかまわないか」と柊。
「う~ん、そうだよね……じゃあ、オレの合図で全員同時攻撃する感じでどうだろうか。柊は二人同時に攻撃できるよね」
「無論だ」と柊が自信満々に答える。
「じゃあ、柊はオレと菖蒲の相手を、朴は柾の相手を狙う感じで」
「了解」と柊。
「ラジャっす」と朴。
柊と朴も戦闘態勢に入る。
「じゃあ、みんな準備はいいかな……GO!」
オレたちは一斉攻撃をし、同時にリボンを獲得し、一回戦の試合はあっという間に終了する。
折角のアクロバットが可能なフィールドだがアクロバットなことは一切やらずに終わってしまった。同じ初心者ではあるが、ここまで素人のような試合になるとは思っていなかった。いや、これが趣味の範囲くらいでやるアンバトなのかもしれない……。
試合が終了すると相手チームが横一列に並ぶ。
「君たち強いね。試合楽しかったよ、ありがとう」
相手チームのリーダーが一礼をして去っていく。
「みんな、お疲れさま~二回戦進出だね~次も頑張っていこう~」と元気よく声を出す。
「それにしても呆気なかったな。やる気があるのか」
柾は腕を組み眉間にシワを寄せ少し不快そうな表情をする。
「なんか……あっさりというかあっと言う間だったといいますか……」と菖蒲は苦笑いをする。
「俺らの出番が全然なかったっすね、柊」
「ああ、俺はもっと活躍できるのに……」
朴も柊も納得がいかない様子だ。
みんな、今の試合には不満があるようで勝ったのに喜ぶ気配がない。それだけみんな強くなったということだろうか。
「オレは相手が力不足というより、オレたちの力がついたから物足りなさを感じるんだと思うけどな~。まあまあ、とりあえず勝ったんだし~反省会というか意見交換はあとあと~次の試合が始まるよ~」
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