第四十一話 アンバト個人戦 ―アーチェリー編―
好きなことの中でも部分的に嫌いや苦手はあって
別にそれを避けることって悪いことじゃないと思う
好きを好きにやっていこ
☆百合
アンバト個人戦二日目。
アーチェリー競技会場でも個人戦が行われていた。試合会場が他の種目と離れた場所になるので会場はほぼ競技参加者しかいない。アンバトのアーチェリーの個人戦とはいえ、アンバトをやらないアーチェリー競技者も参加している。アーチェリーの競技人口は他のアンバト種目に比べ多く、年齢も性別も幅広い人たちがいるため会場は貸し切りで二日をかけて個人戦が行われている。
二日目の今日は午前中に決勝戦が行われる。
決勝戦グループは、俺と蓮、岬さんを含めた十名で行われた。
結果は蓮が優勝、俺が準優勝、岬さんが三位であった。
優勝した蓮は俺の家の隣に住む幼な馴染みである。俺と蓮は小学生の時からアーチェリーをやっていた。俺が住む家は山の中にあり、店にも車がないといけない距離にあり、農家が多く、家と家の間には必ずと言っていいほど畑や果樹園がある。また隣の家といっても何十メートル先にあるのでお隣さんではあるが少し距離がある。そんな田舎には広々とした森と公園と空き地とアーチェリー場しかなかった。俺の家から歩いていける距離にアーチェリー場があり、そこがいつも遊び場になっていたのである。
中学生になった時に蓮は本格的にアーチェリー競技を始め、俺は試合に出るのが面倒で趣味の範囲でアーチェリーをやっていた。俺と蓮が中学三年生の時、中学校のアーチェリー部は廃部寸前で廃部にならないようにするには成績を残すしかなかった。その時、アーチェリー部の幽霊部員であった俺に蓮がアーチェリー部存続のため試合に出て欲しいとお願いをしてくる。
正直、試合は嫌いだがアーチェリー自体は好きなので試合に出ることを承諾する。そして県大会に出場しチーム優勝した。結果、アーチェリー部は廃部にならず存続できることとなった。大会を見ていた高校のスカウトの人が俺と蓮に声をかけてきた。蓮はスポーツ強化高の宝生高校に推薦で入学することになる。俺は部活としてアーチェリーをやる気はしないし、実家にいるのが面倒で寮がある桃源高校を選ぶことにした。
そう、俺は試合が苦手だ。
でも今日は試合に参加した。
羽柴たちを見ていたら俺も本気でアーチェリーをやってみたくなったから。
元々、アーチェリーは趣味で続けていたし高校に入っても練習場には通っていた。岬さんとはその練習場で小学校の時からの知り合いで、いつも俺たちのことを可愛がってもらっていた。蓮は俺より無愛想なやつなので岬さんがいくら話しかけにいても無視を続けるため、岬さんが可愛がる先は俺だけになっていた。岬さんは俺の家庭の事情も俺が考えているアーチェリーへの思いも何でも知っている。
合宿の時に偶然再会し、俺がアーチェリーをやらないのにアンバト部にいることに疑問を持ったらしく相談に乗ってくれた。俺がまだ気持ちの整理ができないことを伝えると試しに試合に出てみるといいとアドバイスをくれ、今回の試合に参加することになった。実は合宿中もバイトといって出かけていたのは、合宿所の近くにアーチェリー練習場がありそこで練習をしていたからだ。
アーチェリー競技の決勝戦が終了する。
「百合君、蓮君、お疲れ様」と岬さんは笑顔で話しかけてくる。
「岬さん、お疲れ様でした」と返す。
「お疲れ様です」
蓮は岬さんが苦手で不機嫌そうな無愛想な表情をし、少し背を向ける。
「二人共、今から他のアンバトの試合見に行かない? まだ間に合いそうだし」と俺と蓮に手を差し出す岬さん。蓮は当然だが手を取らない。俺は少し迷ったが岬さんの手の上に手をそっと置く。
「よし、いこう」と俺と蓮の手を引っ張り小走りなる岬さん。
「ちょ……おい、僕は……」と蓮が言うが岬さんの耳には入らない。
こうして、岬さんは俺と蓮の手を掴み会場を後にする。俺たち三人は岬さんの車に乗りアンバト競技のメイン会場に向かう。到着すると羽柴と羽柴の兄貴の試合がちょうど始まるところであった。
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