第四十話 葵と樒の戦い
どんなステキなコトバより……
キミが傍にいてくれて
キミの笑顔があるだけで元気になれるんだよ
★葵
兄貴はBブロックの決勝戦に勝ち進む。
決勝戦はオレと兄貴の戦い。
負けられない……いや、負けたくない。
AブロックとBブロックの決勝戦になり、オレと兄貴がステージに立ち試合スタートの合図がかかる。オレは試合開始の合図と同時に猛ダッシュをし真正面から樒にぶつかっていく。
「葵、気合が入っているね~君の愛しの人は見に来ていないのに頑張るね~」
兄貴はいつものニコニコ笑顔でオレの剣を受ける。
「ベラベラしゃべっていると舌を噛むよ、兄貴」
オレはこの試合で今までにないくらいの本気を出す。
兄貴のようにニコニコした表情が作れないほどの本気モード、目が完全に開いた状態。オレも兄貴も隙がない交戦を続ける。
今日の試合は屋内で体育館のような整えられた場所なので風よみができない状態である。兄貴はオレの動きに合わせて動いてくる。左にステップを踏み、その後素早く右にステップを踏んでもすぐに対応されてしまうし、しゃがむとすぐに下にガードをされてしまう。兄貴はオレの心でも読んでいるかのようにオレの動きに素早く対応してくる。
逆に兄貴の動きは素早すぎて追うのが精一杯でなんとかギリギリのところでガードをして攻撃を防いでいる。兄貴の呼吸は穏やかで読むことができない。唯一出来ることと言えば……プレートの音色で音読みを行い動きを先読みをすること。オレは兄貴から二つのプレートを取ることができた。兄貴はオレから三つのプレートを奪っている。兄貴がもう一つのプレートを落とせば試合終了となる。
オレは兄貴に力いっぱい剣を叩き込む。力いっぱいの攻撃を何度かやり攻撃パターンを兄貴に覚えさせたところでオレは兄貴の剣に力を込めない攻撃をし、代わりに足で兄貴の剣を思い切り蹴り高くジャンプする。さすがの兄貴もバランスを崩す。ジャンプして降りる瞬間に兄貴の肘と膝のプレートを取り、試合終了となる。
オレは初めて兄貴に勝つことができた。
「よっしゃあ~~~」
オレは、大きく両手を挙げ大きな声で喜ぶ。
「あ~負けちゃったな~葵は強くなったね~」
兄貴はニコニコした笑顔で拍手をする。
「なんて……。バーカ、手加減してやったんだよ」
兄貴は目を少し開き、見下したような顔でオレを見る。
オレはショックと疲れで膝に力が入らず、ぺしゃんと座り込む。
「……しば~羽柴~」
百合がオレの名前を呼ぶ声がする?
居るはずがない相手の声がするなんて自分の心の弱さなのか……幻聴とか……。
「羽柴~」
百合の声がさっきより大きく聞こえる。声がする方を向くと百合が観客席からこっちに向かってくるのが見える。
「あれ~なんでいるんだ? お姫様の登場だね~」
兄貴はニコニコ笑顔で百合に手を振り、会場を後にする。
「百合君、勝ったよ~」と立ち上がり笑顔で両手を挙げるが、力を使い果たしてその場に膝を突いてしまう。
「羽柴!」と百合はオレの腕を引っ張る。
「えへへ~ちょっと本気出しすぎちゃった~」と百合の肩をかりてゆっくりと歩きだし、みんなが待っている観客席に向かう。
「百合君、どうしたの? 今日は来れないんじゃなかったの?」
「なんか用事が思ったより早く終わったから見に来れた。そしたら羽柴の試合が始まったばかりのところで……いつも思うけど羽柴は戦っている時が一番カッコイイな。あ、それと優勝おめでとう」と百合は、はにかんだ笑顔を見せる。
こうやって自分の存在を認めてくれる人がいることで自分がここにいていいんだと実感できる……ありがとう。
観客席に戻るとチームメンバーが拍手をして迎えてくれる。
「羽柴君、優勝おめでとう。いつもながら素晴らしい戦いだったな。しかし、少し気になったことがあるのだが、足で他人の武器を蹴るのはルール違反にならないのか」と柾。
「あ、そこね……ルール的にNGとはなっていないけど、比較的……やらないことではあるかな。審判のさじ加減ってところもあるだろうし……。ただ明らかな妨害行為としてやるのはルール違反になるから気を付けないといけないかな」
「そうなのか、覚えておく」と柾は少し難しい顔をし、頷く。
「葵、本当にすごかったっす」
朴は目をキラキラさせ両手を広げて大喜びしている。
「さすがです、羽柴君!すごい戦いで目が離せなかったです!本当におめでとうございます」
菖蒲は両手を合わせ、天使のような笑顔で微笑む。
「優勝するのは当然だ! オレたちのリーダーだからな」
柊は自分が勝ったかのように上から目線だ。
「みんな、ありがとう!」
優勝したこともみんなの言葉も嬉しくて、一粒の嬉し涙を流す。
樒はチームメンバーの元に戻る。
「樒先輩が優勝すると思ったのに~」と柚は頬を膨らましプンプンしている。
「あ~ごめん、油断しちゃってさ~」と樒は苦笑いをする。
「らしくないですね、樒先輩」と蓮は少し怖いで樒を見つめる。
「あれ、蓮! 来てくれたんだ~。んで、蓮の方は試合どうだったの」
「当然、優勝です」
「だよね~! さすが、蓮だな~。おめでとう~」
「ありがとうございます」
「も~蓮ばっかりズルい~僕のことももっと褒めて~」と柚は樒の腕に抱きつく。樒は柚の頭を軽く撫でる。
「さっき、散々褒めただろ~」
「え~もっと、もっと~」
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