第三十九話 ニコニコ顔の兄弟
勝手に言いたい放題する奴なんか放っておけ
オレは自分らしく自分の好きをやっていく
誰にも邪魔なんかさせない
★葵
双剣競技が終わり次は剣競技の試合が開始する。
得点制の個人戦の決勝戦グループはオレ、兄貴、浪さんを含めた十名で行われ、兄貴が優勝し、オレが次いで二位、浪さんは四位となった。
ちなみに成瀬先生は大人の部の得点制も個人戦も優勝である。それだけ実力があるのであれば顧問として教えてほしいし、せめてアドバイスくらいくれてもいいだろうと思ってしまう。
対人戦の決勝戦グループは、オレ、兄貴、浪さんを含めた八名。オレはAブロックの決勝戦まで勝ち進む。結構余裕で勝ち進んでいる。決勝で戦うのは兄貴だろうから……オレはそれまで余力をためておこうと思う。
Bブロックの一回戦目は兄貴と浪さんの戦い。
試合はあっという間で……浪さんは樒からプレートを一つも取れず負けてしまう。オレは浪さんは相当強い人だと思っている。その人があっさりと兄貴に負ける。兄貴は無駄を嫌う……だから試合も容赦はしないし、無駄な動きや無駄な時間を作らない。話し方はオレに似せてゆっくりのんびり話すくせに考え方や行動はというと真逆で速やかに完結にという性格である。
兄貴と浪さんとの試合が終わり波さんの元へ向かっていると試合を終えた兄貴が話しかけてくる。
「やあ~葵~久しぶりだね~。決勝まで残ったんだね~さすがだね~」
兄貴はニコニコ笑顔でパチパチと拍手しながら声をかけてくる。
「でもさ、お前はオレには勝てないよ。今日もこれからも……ね」
兄貴は目を開きあざ笑うようにオレに視線を送る。
声もいつもより低く兄貴の一人称がいつもの『ボク』ではなく『オレ』になっている。オレを小馬鹿にして見下す時の兄貴だ。
「じゃあ、検討を祈るよ~」と兄貴はニコニコし笑顔で手を振り去っていく。
兄貴はいつも一方的だ。なんで兄貴はオレをそんなに邪険にするのか。正直、オレは兄貴に何かをした記憶はない……。しかし、ある時を境に兄貴はオレを見る目が変わっていった。もちろんその時も特に何かあった覚えはない。兄貴はいつもオレより何でもできるし完璧で勉強も運動もいつも一番を取る。他にも作文や俳句や詩などを書けば賞を取り、自由研究や習字や絵画コンクールなどでもいつも賞を取る。性格も明るくいつもクラスの中心にいる。本当に何でもできるし、いつも人の中心に存在する人物である。
オレは、そんな兄貴を尊敬していた、憧れていた。邪険にされ始めてもオレは兄貴と一緒に剣競技を行っていた。
兄貴が高校入学が決まったとき……
「お前はさ、これからもオレの背中ばかり追いかけてばっかの人生送るの? そんなんで楽しいの? 自分ってものはないわけ。つまんねーやつ。中身空っぽじゃん」
そう言って兄貴は突然オレを突き放した。中学三年の時、オレは兄貴の背中を追うのを辞め自分のやりたいことを探した。色々と探したけれど……やっぱり剣競技が好きで誰かと一緒にアンバトをやりたくて仕方がなかった。アンバトが強い学校に入りたかったけど、そこには兄貴がいるからその高校には行くのを諦めた。他にもアンバト部がある学校をいくつか探して試合を見に行ったが自分が求めているチームが作れそうになく、たまたま見に行ったアーチェリーの試合で運命的な出会いをしたのである。
そう……それがオレの『コイ』の相手である。
『風を操り幻想的なオーラ』を身に纏っていた人である。
その『コイ』の相手とアンバトを一緒にやりたいから桃源高校に入って今ここにいる。
オレは朴と菖蒲と柾と柊と……キミと……一緒にアンバトをやりたい。心から青春というものを満喫してみたい。今しかできないことを今やりたい。
兄貴に見せつけてやりたい、オレが一番やりたいことを……。
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