第三十六話 第三十七話 はじめての公式戦
キミがいると頑張れるオレがいる
キミがいると笑顔になれるオレがいる
キミの存在があるから"今"のオレがある
★葵
眩しくて暑苦しい太陽と青い空が見えないくらいに巨大な白い入道雲が空を占領している。そんな暑い中、ツクツクボウシたちはのんびりと歌を唄ってっている。合宿も終わりオレたちは学校での部活に明け暮れていた。桜美大学の先輩たちも毎日ではないけれど練習に付き合ってくれている。それぞれ買った武器も馴染んできて、みんなの気持ちもわかり、時間が経つにつれ団結力が増していく、そんな日々。
来週にはアンバト個人戦がある。個人戦は小学生の部、中学生の部、高校生と大学生の部、大人(社会人)の部がある。オレたちは実際の試合を行ったことがないので練習も兼ねて個人戦にエントリーすることにした。
シューター(アーチェリー、銃、手裏剣)の個人戦は通常のアーチェリー競技や射撃競技のように的に当てた得点で競う。アンバトの銃競技は武器が二種のため二種の得点の総合点数で競われる。
アタッカー(剣、双剣、槍 等)の個人戦は二種あり、対人のものとシューターのように決められた的を狙い得点を競うものがある。対人の個人戦のルールは、決められた七箇所につけたプレートのうち四ヶ所のプレートを取ることができたら勝ちとなる。プレートがつく場所は、首から吊るしたネックレスタイプが一つ、肘に二つ、腰に二つ、膝に二つである。得点制のルールは、スタート地点からゴールまでの時間の速さ、スタートからゴールまでにある障害物となる的の得点の総合点数で競われる。
シューターのメンバーは一種目にエントリーし、アタッカーのオレたちは二種目ともエントリーすることにした。
アンバト個人戦一日目。
青空に大小の雲が広がり会場の周辺には元気よく背伸びをした向日葵の花が咲き乱れている。アーチェリー以外のアンバト個人戦は兄貴達の試合を見に行った会場で行われる。得点を競うものに関しては屋外で対人戦に関しては屋内の会場で行われる。
「みんな、今日は初めての個人戦だ!気合入れていこう」と満面の笑みで両手を大きく広げる。
チームのみんなは緊張しているようで、いつもより少し表情が硬い。
「はい、頑張りましょうね」と菖蒲はいつものキラキラした笑顔でガッツポーズをする。
「ああ……頑張ろう……」と柾は緊張しすぎて縮こまっている。
「が、頑張るっす……」と朴もテンションが低い。
「柾も朴も緊張しすぎだよ~もっとリラックスしないと良い結果出せないよ」
オレは柾と柊の背中を軽く叩き、気合を入れる。
「あ……ああ……平常心、平常心……」と柾は念仏を唱えるように小声でぶつぶつとつぶやいている。
「緊張になんか負けないっす……」と朴はガッツポーズをするが力が入っておらずプルプルしている。
ダメだな、これは……。
「あれ、そういえば。柊はどこ?」
「さっきまでいたのですが……どこいったのでしょうか」
オレと菖蒲がキョロキョロと周りを探しているとグラウンドの方から歩いてくる柊。
「どこにいってたんだよ」
「ああ、ちょっと野暮用でな」
「野暮用?」
「まあ、気にするな。ところでその二人はどうした? ロボットのようだぞ」
「あ~なんか緊張してるみたいで……なんか緊張を解くいい方法はないかな」
「うむ……そうだな。UBダンスをしてみるというのはどうだろうか」
「UBダンス? アンバトダンス? まあ、緊張が解せるならなんでもいいや、お願いするよ」
「ああ、任せろ」
柊は柾と朴の前で仁王立ちをする。
「おい、お前たち。今から俺がやるダンスを真似しろ。緊張が解ける魔法のダンスだ」と柊はキレッキレのダンスをはじめる。
「え、いや……こんなところでダンスは……」
「やるっす」
「おい、ちゃんとやれ。そんなでは緊張なんか飛んでいかないぞ」と大きな声を出す柊。
柾は恥ずかしがりながらへにゃへにゃと踊り、朴は元気よく楽しそうに踊る。柊のキレッキレのダンスが注目の的となり人が集まりはじめる。
なんだろう……恥ずかしいな。よし……他人の振りをしよう。
オレは少し距離を取ろうと歩き出すと棒のようなモノで頭を叩かれる。
「いてっ」
振り返ると呆れた顔をした成瀬先生が立っていた。成瀬先生の後ろには桜美大の先輩たちも揃っている。そして先輩たちは笑いをこらえている様子だ。
「羽柴、あいつらをどうにかしろ」
「あ~あれは緊張を解そうとして……」と話の途中で成瀬先生の剣の柄で頭を叩かれる。
「いてっ」
「学校名が入っているジャージを着て、目立つようなことは止めさせろ」
「あ~ですよね。じゃあ、ジャージを脱ぐように……」
オレはまた成瀬先生の剣の柄で頭を叩かれる。
「て……。はい……そういう問題ではないですよね。止めさせます」
オレは柊、柾、朴のダンスを話し合いの末どうにか止めさせる。柊たちは身体を動かし足りないらしくラジオ体操の音楽を流れてくるのでオレも交ざって体操をはじめることにした。
「羽柴……あいつは……。音春、あいつらのことは頼んだ」と成瀬先生は顧問なのに他人のフリをして行ってしまう。
「うふふ、はい。お任せ下さい」
「結果、羽柴君も緊張しているってことだね」と洋さんはクスクスと笑う。
「湊先輩、顧問として見てあげなくていいの?」と凪さんは流し目で優しく微笑む。
「湊先輩も本当は彼らの仲間に入りたいんでしょ」
「大人ぶっちゃってね」
「ねえねえ知ってる? これで先生らしいですよ」
「へえ、どこかのヤンキー学生さんかと」
「あらあら~残念なイケメンさんですのね」
「大人の振りしたって大人にみえてないぞ」
女子部員の潤さん、碧さん、浬さん、汐さん、水さん、透さんたちは成瀬先生にヤジを飛ばす。
「またお前らか。俺は立派な社会人だ。お・と・な・だ」
女子部の先輩たちは、またまたといわんばかりに笑っている。
成瀬先生は大きなため息をつき、半目でこちらを見ながら去っていく。先輩たちも成瀬先生の後に付いていく。
オレたちはラジオ体操を終え、試合会場に向かう。今日は百合がいない。最近はいつも一緒にいたから少し寂しく感じる。百合がいるとカッコつけた自分が出て、自然と自分が持っている力を発揮できていたから。今日は少し不安だ……そしていつにもなく緊張している。久しぶりのアンバトの試合……今のオレができる力を出し切って精一杯やってみよう。
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