第三十五話 独りぼっちのアルファルド
俺も仲間に入りたい……
どうコトバをかけたらいい?
どうコウドウすればいい?
やっぱ……独りはさみしいよ……
☆百合
ここは盆地だけあって夜になると昼の暑さを忘れるくらい涼しくなる。合宿所の木造の校舎の室内も当然木造の作りでどこを見ても茶色。まるで木の中にでも住んでいるかのような感覚になってしまう。
俺たちが寝泊りしている部屋は二階の教室で校舎の目の前には桜の木が立ち並んでおり、窓を覗くと覆い茂った木が見える。この周辺は街灯もなく山の近くで窓の正面から外を見ると真っ暗闇だ。
夕食後、羽柴は部活のメンバーに大事な話があるといい集合をかける。
「は~い! みんな集まったかな~」と羽柴は楽しそうに話し出す。
「響空君と愛風君がまだですね……さっき見た時、彼らは一階で戦隊ゴッコとやらをやっていましたよ」と音春がクスクスと思い出し笑いをする。
「まったく、彼らはいつも自由すぎる」と透真はしかめっ面をする。
「俺が見てくるよ」と立ち上がり愛風と響空を探しに向かう。
「百合君、ごめん。ありがとう~」と羽柴は申し訳ないと両手を合わせる。
階段を下り、一階の明かりが点いた部屋に行くと愛風と響空、浪さん、航さんが戦隊ゴッコを寸劇で行っていた。そこには寸劇を見守る岬さんと洋さんもいる。
「えっと、お取り込み中のところ申し訳ないのですが……」
先輩たちもいるので申し訳なさそうに腰を低くし間に入っていく。
「お前は! 新手の敵か!」
響空はヒーローになりきり決めポーズをとり大声で叫ぶ。
俺はどう返していいかわからずとりあえずスルーをし、何事もなかったかのように話しかける。
「響空、愛風。羽柴が今からミーティングするっていうから来てくれるか」
「あ、もうそんな時間っすか。忘れてたっす。すぐ行くっす」
「そういえば、そんなことをいっていたな。すまん」
響空と愛風は急いで二階へ走っていく。
「先輩たち、折角の時間を邪魔してすみません」
「いや、こちらこそごめんね」と洋さんが苦笑いをしながら謝る。
「えっと、それでは失礼します」と頭を軽く下げ部屋を出ようとする。
「ねえ、君はこれからどうするの」と岬さんがニコニコしながら声をかけてくる。
「まだ、わかりません……」
「そっか……」
「岬さん、ちょっとお話いいですか」と岬さんに相談という名の雑談を聞いてもらうことにする。
* * *
俺がみんなの集まる部屋に戻るとミーティングが始まっていた。
「ということで、先ずは個人戦に出てみるという感じでいいかな」と一同、同意する。
一つ目のアジェンダは終わりかけているらしい。順序よく話が進んでいればだが……。
今回のミーティングのアジェンダは……
①今後に関して(チーム戦について、個人戦について)
②部活の方向性について
③時間に余裕があれば試合着に関して考える
という内容だと聞いている。
なので次は部活の方向性に関しての話になるはず……。
「じゃあ、次のアジェンダだけど~部活の方向性について……」
羽柴は急に下を向き黙ってしまう。
いつもの様子と違う羽柴。みんなも話し出すまで静かに見守っている。
「今から真面目な話をするね。オレね、ずっと聞こうとして……怖くて聞けないことがあったんだ……みんなはさ、部活楽しい? 無理にお願いした奴もいるし、無理して付き合ってないかとかさ……」
羽柴はいつもとは違い弱々しく頼りない声で話しだす。
しばしの沈黙の時間が流れる。
「わたしは……誘っていただいて感謝していますよ。あまり自分から積極的に何かをするタイプではなかったので声をかけていただいて、今があって……いろいろな新しいことが毎日あって充実しております。ありがとうございます」と音春は満面な笑みで正座をして深々とお辞儀をする。
「僕は……羽柴君たちが剣道部にポスターを貼りに来た日に見た、羽柴君の舞のような剣使いを見て、僕も型にはまらず自由に戦ってみたいと思ったから入部したんだ。まだまだ未熟者だけど羽柴君と並んでも恥ずかしくないように戦えたらと思っている」と透真は真面目な表情で目を輝かせる。
「俺は……ずっと小さい頃からやっていたサッカーをこれからもずっとやっていくんだと思ってたっす。親がサッカーが大好きでサッカー選手の夢を叶えられなかったから俺にその夢を託されて……でも毎日サッカーやってて……ふと思ったっす。俺のやりたいことってなんだろうって。あ、もちろんサッカーは好きだし、楽しいっす。でもサッカーの練習ばっかじゃなくて……本当は友達と普通に遊んだりもしたかったす。葵に何度も誘われて様子だけでもと思っていたら、柊やみんなに出会って……。なんか柊はいつも自由で楽しそうで、俺も自分のやりたいことやってみたいなとか、柊や葵とみんなとアンバトをやってみたいなと思ったす」と愛風、涙ぐみながらはにかんだ笑顔を見せる。
「俺は……俺の活躍できる場所はここしかないと思った」と響空は羽柴を睨みつける。今更何を言わせるんだと言っているかのように。
羽柴は目を潤まし「み、みんなぁ~」と一人ひとりに抱きついていく。
なんか微笑ましい光景だ。青春というのはこういうことをいうのだろう。手伝いという形でここにいるが、俺もあの輪の中に入れたらなと思ってしまう。
「百合く~ん」
羽柴は洪水のような涙を流しながら走ってきて、目の前で躓きバランスを崩し倒れそうになったので手を出すとすれ違ってしまい、羽柴の頭が俺の肩の上にのる形となってしまう。
「百合君がいたから今があるんだよ~本当にありがとう~」
羽柴のあたたかい涙が俺の肩に流れてくる。
「ああ、こちらこそ」と羽柴の背中をポンポンと軽くたたく。
とても心地のいい空気と仲間たち……
俺はここにいるのに……
ここにいるはずなのに……
いていいはずなのに……
ここにはいない気がする……
なぜだろう……
一緒に戦っていないからだろうか……
一緒にいる時間が少ないからだろうか……
孤独を感じる……
羽柴、響空、音春、透真、愛風はまとまったチームに仲間になっていく。
俺は?
どんどん置いていかれる気がする。
時間が経てば経つほど距離がひらいていく。
俺も……俺も……そこに……。
深い青色の空間。ほぼ真っ黒に近いような世界。一筋の白い光が差すところには羽柴、響空、音春、透真、愛風が楽しそうに笑って立っている。
手を伸ばしても届かない。
走っても、走っても追いつかない。
いや、俺が進むどころか後ろに引っ張られている。
声をかけても誰も気がつかない。
もがいても、もがいても……前に進めない。
「……りくん……百合君?」
気が付くと片目から涙が流れていた。
「大丈夫? なんか時間が止まっているようだったよ……」
羽柴は心配そうな顔で見つめてくる。
「あ、大丈夫だ。ちょっと外の空気を吸ってくる」と一人で屋上へ向かう。
俺は……どうしていきたいんだ…。
屋上に行き空を見上げる。
雲に覆われた空、雲と雲の間から少し星が見える。
星が膨張して見える。
少し強い風が吹き、小雨が降り始める。
俺は大の字に寝転び、片手で目を隠す。
涙が止まらない……。
自分の心がわからない……自分のことなのに。
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