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第三十二話 team すばる

 この世界は偶然に隣あった星と星を繋げた星座のように

 奇跡と奇跡が繋がり合ってできている

★葵


 夕食を終えると近くの銭湯に行くなり、語るなり、遊ぶなりの自由な時間となる。オレは一人で屋上へ向かい、屋上の床に寝そべる。風は少し冷たく鈴虫たちは美しい音色を奏でている。空は雲一つない空。満天の夜空である。田舎の夜空は街中の夜空とは違い多くの星が見え、近くに感じる。どの星も輝き眩しく空が明るく感じるほどに。


 親指と人差し指で月をつかむ。

「ちっちゃいな~」

 月はほぼ満月で、月の大きさはだいたい三センチくらいだ。

「へ~羽柴には月は小さく見えるんだな」

 百合は屋上の入口の上の方から声をかけてくる。

「俺にはクレーターも見えるくらい大きく見えるけどな」

 百合は天体望遠鏡を使って月を見ている。

「百合君、それを使ったら大きく見えるのは当然じゃないか~」

「まあな」と百合は梯子を降りて来て、オレの横で寝そべる。

「羽柴の見ている月はどんなだ」

「だいたい三センチくらいかな、簡単につかめちゃうよ」

 百合も親指と人差し指で月をつかむ。

「確かに小さいな。そして他の星の明るさで月が余計に小さく感じるな」

 オレと百合は寝そべったまま、星の鑑賞をする。


 百合が星座の説明を楽しそうにしてくれるのだが、どの星も輝いて見えるので百合が説明してくれる話もあまりついていけていない……ごめん。いつもと違って百合は星のことになると饒舌になる。そして表情も話し方も明るくなる。きっとオレ以外の前では見せない特別な百合だろう。オレはそれが嬉しくて思わずニヤけてしまう。本当に居心地の良い時間だ。

「あ、ごめん。つい喋りすぎた」

「いいんだよ~もっと聞かせてよ」

「……正直……興味ないだろう」

 百合は眉をへの字にしてオレの顔色を窺う。

「う~ん、まあ正直……そんなに星座自体には興味はないけど、宇宙は好きだよ。子供の頃、すごく遠くまで見える望遠鏡の話を聞いたけどあるけど……望遠鏡で何億光年先にある宇宙を今見たとして、でも何億光年先だから実際にはもう存在しないってやつ。それってさ、例えば向こうも同じくこっちを見ていたら数秒後にはこの世界はなくなっているってことでしょ。そう考えるとさ、オレたちの時間って一瞬なんだなって思うよね。その話を聞いて”今”っていうのを大切にしなきゃなって思ったんだよね。将来こうしたいとかあったりはもちろんあるんだろうけど、それも当然大事なんだけどさ。でも……今できることを今やらないとって思うようになったんだよね。だからオレにとって星、宇宙は色々と考えさせてくれる存在なんだよね、だから好きなんだ。それにさ、宇宙はすごく広くてさ~宇宙から見たらさ、自分の大きさってほんとちっぽけってか、見えないレベルでさ~小さいことで悩んでたりするとなにやってるんだろうって思うんだよね。悩んでる時間を使うなら、それをプラスにして先に進もうって思うんだよ~だから悩んだら先ず星に相談するようにしてるよ」

 百合は少し驚いた顔を見せ、うんうんと頷きニコッと微笑む。

 よかった。百合はわかってくれたんだ。この話をしてもほとんどの人がポカーンとする。興味がないのか理解が出来ないのかはわからないがオレの感覚が理解してもらえる、すっげえ嬉しい。やっぱ百合はオレの理解者だ。

 オレは起き上がり一丁締めを決め込む。

「そうだ! すばる……なんてどうだろう、オレたちのチーム名」

「すばる? プレアレス星団の?」

「そう! 星……星座って今この地球にいるから見えるし、繋げられるわけでしょ。この世界は偶然に隣あった星と星を繋げた星座のように奇跡と奇跡が繋がり合ってできていると思うんだ。だからね、この地球からたまたま近くに隣り合ったように見える散開星団、分子雲から同時に生まれた星同士が近い位置にある状態の天体で、約六千万~一億歳と若い年齢の青白い星の集団である、すばるはオレたちに似ている気がするから。日本だと、すばるとか六連星とかいうでしょ? 六連ってオレたちの数にも合うしさ! といっても人によるけど、5~7個の星が平均で見えるっぽいけどさ~。まあ、とりあえずそんな理由で、チーム名を『すばる』にします!! 決定!」

「……羽柴もちゃんと考えるたりするんだな……。チーム名、すごくいいと思う」

「百合君、オレそんなに何も考えてないように見えるの? ひどいな~」

「羽柴はあまり自分の話をしないからちょっと驚いただけだ」

「そういえば、こういう話したことないか~オレだって考えることや悩むことだってあるんだよ」

「そうだよな、悪かった。羽柴が言ったことは共感できるな。俺も今しかできないこと……」

 百合はその先の言葉をその後も言うことはなかった。オレは百合が背中を押して欲しいと思った時に押せるようにしたい。百合があるとこで悩んでいることは薄々わかってきて、そして行動に移していることも本当は知っている。それを隠してオレたちに時間と作ってくれて付き合ってくれていることもわかっている。そんな百合をオレは全力で応援したい、いや……力になりたいと思う。

 百合だけじゃなくて、アンバトのメンバーもそうだ。オレのわがままにみんなを巻き込んで付き合ってくれている。オレはみんなに恩返しをしないといけない。自分ができる精一杯のことをやりたい。みんな本当にありがとう。オレは本当に幸せ者だなと思う。

お読みいただきありがとうございました!

次回もよろしくお願い致します!

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