第二十九話 夏合宿のはじまり
一歩を踏み出す勇気がほしい
行動一つで言葉一つで未来は大きく変わっていくのだから
★葵
雲一つない青々とした空。太陽は空を独り占めし、目が開けられないくらいピカピカと眩しい光を放ち暑苦しい存在感をこれでもかというくらいに向けてくる。
高校に似た山々に囲まれた場所。セミたちはあちらこちらで合唱大会をしている。周辺にはサバゲの施設、アンバトの施設、射的場やアーチェリー場などもある。
合宿場所は田舎の廃校になった小学校を貸し切って行われている。廃校になった校舎は木造二階建ての各学年ひとクラスしかない小さめの校舎で、小さめの校舎に対して校庭は広大である。
合宿は桜美大学の先輩たちと、今回はいつも名前だけの顧問である成瀬先生も一緒だ。そして一緒に活動をするわけではないが大学の先輩たちは男子だけでなく女子のアンバト部も参加している。
少し緊張したオレたちチームと大人の余裕がみえる雰囲気のある先輩たちが校庭に集合する。
「湊先輩の生徒さんたち、こんにちは! 今日からの合宿、どうぞよろしく。えっと先ずは、自己紹介をするね。僕は部長の夕陽洋。担当武器は銃です。何かわからないこととかあったら何でも聞いていいからね。えっと次は、副部長どうぞ」
洋さんは黒髪のマッシュボブで可愛らしい見た目をしていて性格は優しそうで真面目なお坊ちゃんタイプ。
「やあ、よく来たね。今日からよろしくね。わたしは副部長の白浜凪。担当武器は双剣だよ」
凪さんは前髪のサイドが長いショートヘアのピンクパープル色の髪、常に流し目で色っぽい雰囲気と喋り方をしている。
「ふふ、みんな初々しい感じで可愛いね~。えっと、ボクは湘南岬。担当はアーチェリーだよ~よろしくね♪」と岬はニコニコ笑顔でアイドルのように手を振る。
岬さんはレモンライムの髪色でセミロング、背も低めで言葉使いも丁寧、女性ような柔らかい雰囲気で可愛さと女性のような色っぽさを出している。
「可愛いね……。それは男ではなく女性に向ける言葉な気がするけど……。オレは海士崎海。担当武器は主に手裏剣だけど、双剣もたま~にやる感じかな。よろしく」と海はウインクをする。
海さんは名前のように海のような青髪で波のようなゆるフワの髪、少し垢抜けた男女ともにモテそうなイケメンって雰囲気。
「俺は由良浪。担当武器は湊先輩と同じ剣。以上」
浪は腕組をし不機嫌そうに眉間に皺を寄せている。
浪さんはワインレッドの髪色の少し長めの無造作ヘア、常に怒っているような眉間にシワを寄せ少し難しそうな感じ。
「入野航です。俺の担当武器は槍です。よろしくお願いします」
航さんは黒髪でロングヘアで片目を隠した前髪とポニテールをしている。影のある雰囲気がある。少し柊に似ている空気を感じる。
「ついでに俺の自己紹介もしてやる。俺は桃源高校で数学を教えている成瀬湊。担当武器は剣。アマチュアの試合とかはこいつらと一緒に試合に出たりしているから、まあ、まだまだ現役って感じでやっている。改めてよろしく。んで、俺は今回……顧問としてついてきたと言うより俺のために来たって感じなんで、そこもよろしく頼むわ」
だと思った。顧問として来るなんておかしいと思ったんだ。はやり自分の練習の為か……。とは言ったものの剣使いな訳だし……教わったり盗めそうなところは盗もう。
合宿の一日のメニューは午前は筋トレ、各自担当武器の練習。午後からはチーム戦の実践、反省会、反省会を反映したチーム戦の実践という感じである。チーム戦はくじ引きで決めた混合チームで対戦するそうだ。
筋トレはまあ……いつも通りでいいとして。各自担当武器の練習……同じ武器種の人と練習するのは久しぶりでワクワクする。いつも兄貴にベッタリだったオレなので兄貴以外の人の戦い方を参考にしたことがあるかと言われると……正直無い訳で……だからこそ色んな人の戦い方や癖、自分にはない技術を観察して自分に必要であれば吸収したいと思う。人によっては戦い時にしかみせない技術はあるだろうし、個人で戦う時とチームで戦う時の戦い方が異なる人もいると思う。とりあえず、色々と試せそうなことをやってみるのと、盗むのと……やることが盛りだくさんだ。ほんと楽しみすぎる。
午後のチーム戦の実践は初日の今日は高校生チームと大学生チームでのチーム戦となった。オレたちはまだチーム戦を一度しか戦ったことがないので、前回同様の様子見での戦いとなる。積極的ではない戦い方。その戦い方は相手チームも困惑するようでお互いが睨めっこ状態になることが多い。スピード感のない戦いとなり、当然反省会ではもっと積極的に動くようにとアドバイスを受ける。
本来ならばサポーターがいることもあるが今はいないし、百合にお願いするとこも難しいと思っている。サポーターは全体を把握した上で戦略をたてなくてはならないので現状それができるのはオレだけだし、オレがみんなに指示したことで動けるかもまだ不安はあるし、負担をかけてしまうこともあると今は各自で戦うようにしている。
別の言い方をすれば信用していないとも言えてしまう。どうするのがみんなの力を最大限発揮できるのか……ずっと悩んでいる。その結果がこれ……。やはりオレが先導していくべきなのか……。
今回の合宿には百合は半分だけ参加している。半分というのはマネージャー的なお手伝いというか午後の練習以外は参加しているという感じだ。午後の時間はこの辺でアルバイトをしているらしい。
どんなバイトをしいているのか気になるところではあるがここで変に干渉してアンバト部から離れてしまうのもと思い……何も聞かないでいる。
そういえば……百合は小柄で可愛い容姿をしているのでここに来た時に海さんと岬さんにナンパされていた。海さんは女性であれば声をかけてしまうという病気らしく、岬さんに関しては可愛い人が好きらしく男女関係なく可愛ければ誰でもいいらしい。百合は岬さんのお気に入りになったらしく、百合の傍には岬さんが必ずと言っていいほどくっついている。くっついているというのは、アヒルの親子のように一定の距離を保って一緒にいるというわけではなく、物理的にくっついている……密着しているという意味である。
人の距離の取り方は人それぞれだし、それぞれがもっているパーソナルスペースの大きさも異なる。相手を見て距離の取り方を判断しようとするとやっぱり距離が出てしまうし、もっと距離を詰めようとして拒絶されたらと思うと一定の距離を保ってしまう。だからそういうのを気にしないで出来る人はすごいと思うし、勇気があるなと思う。
一歩を踏み出す勇気がほしい……いや、ほしいという希望だけじゃダメなんだ。勇気を持つんだ。例え失敗したとしても前へ進むべきだ。失敗を恐れてはずっと止まったままだから……失敗をしてもそれを糧にしてもっと成長していきたい。
行動一つで言葉一つで未来は大きく変わっていくのだから。
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