【番外編】第二十四話 葵チームとのアンバト試合
□(しかく)があったとして
それを平面とみるか立体物とみるか
それを下からみるか中からみるか上に乗ってみるか空中からみるか
それを地についているか空中に浮いているかとみるか
答えは十人十色
視点を変えると同じものでも同じに見えないもの
試合同様にヘッドセットをつけ、両チームがスタート位置に着く。
「じゃあ、皆さん用意はいいですか~」
それぞれがOKという合図を出す。
「では、スタートの合図をお願いしま~す」
「はい。では……First half game. Ready go!」
百合の試合スタートの声が響き渡る。
とりあえず小走りで全員で動き相手の様子を見ることにしフィールドの中心まで行くことにする。ちょうどお互いの境界線あたりに全員が揃い距離を取りどちらが攻撃をしかけるか様子見状態となる。お互いが睨めっこをしているとこの練習試合を聞きつけたのか見つけたのか樒の高校の応援をしていた人たちが静かに集まり始める。
樒「うん、このままだとキリがないし柚と蓮、適当に陣地取りはじめちゃって」
柚「ラジャー」
蓮「了解」
柚「じゃあ、僕は赤髪金の近くの的から狙ってみる」
蓮「俺は……」
樒「蓮はボクの弟の近くの的を狙ってみてよ」
蓮「了解」
座った状態で朴の近くの的を狙う柚、座った状態で葵の近くの的を狙う蓮。柚の攻撃を察知し相殺する朴と蓮の矢を見ずに跳ね返す葵。
双方、再び様子見を始める。
樒「へえ、さすがボクの弟」
蓮「樒先輩の弟ならこの状況は当然か」
樒「まあ確かにボクも同じことできるけどさ、兄弟だからって弟も出来るとは限らないでしょ」
柚「柚はプンプンだよ~相殺とか信じらんない……マジぶっ殺す」
樒「ゆ~ず、落ち着いて。ボクは可愛い柚が大好きだよ」
柚「あは~つい、本気モードになっちゃったよ~。本気モードになるのは戦いだけにするね、ごめんなさ~い」
沈黙を続ける葵チーム。
樒「そうだな、多分このまま動かないだろうから、他の三人にも攻撃してみよう」
柚「柚は眼鏡くんとポニテちゃん攻撃しまーす」
蓮「わかった。俺は手裏剣の人を」
柚は柾に一度目の攻撃をかけるが今は様子見の状態なので柾は攻撃を避ける。柾はさっきの試合の光景が頭に残っており、蓮の方を向いてしまう。柚は一発目の攻撃の後、少し間を置いて二発目、三発目の弾を撃っており、柾はよそ見をしてしまったために二発目と三発目の攻撃を受けてしまう。
柚「さっきの試合とおんなじ手は使うわけ無いでしょ~バ~カ」
柚は方向を変え、菖蒲に三発連続で攻撃をする。三発連続となると攻撃を避けるのは簡単かと思うが柚は一発目を顔、二発目を左の腕、三発目を右の太ももを狙って撃ち、菖蒲は三発目の攻撃を受けてしまう。
柚「やっぱこの二人は弱っちいね~。退場にさせちゃっていい?」
樒「しょうがないな~お好きにどうぞ」
柚は次に柊へ攻撃を仕掛けるが朴と同じく相殺されてしまう。
柚「え、なんで当たらないの」
樒「あ~その子、潮先輩より強いよ」
柚「え~ヤダ~」
樒「だから真面目にやってね、柚」
柚「は~い」
葵は本格的にバトルがはじまったため近くにいた菫に攻撃をかける。樒はというと剣を地面に刺し、試合中だというのにニコニコしながら高みの見物をしている。槍はリーチが長いので攻撃範囲が有利ではあるが軽いのが欠点である。槍と剣の相性は悪いわけではないが力勝負となると剣が圧倒的に有利である。
葵と菫の攻防戦がはじまり、槍のリーチがあるためリボンを取れる距離を詰めることが出来ず苦戦する葵。葵が距離を詰めたかと思うとすぐに菫に突き放される。葵の得意な剣の舞で錯乱されようとしても樒が同じ技を使うため菫は全く動じない。葵と菫の攻防戦は続き葵は追い風が吹いた瞬間に剣で菫の槍を地面に押し付けその力の反動と風を使って剣を軸に前転をし菫の腕にあるリボンを奪い取る。
葵「い~っぽん」
菫「さすが、樒の弟だな」
葵「ありがとうございます」
菫のリボンを取った瞬間に樒が猛ダッシュして登場し、力いっぱいの一撃を葵にぶつける。葵は攻撃に耐えられずよろめく。
樒「ねえねえ、剣の舞で勝負しようよ」
葵「望むところだよ、兄貴」
葵と樒の戦いは剣を交えるというより剣を使って美しく踊っているような光景でバトルというよりも演目をみているという状態になる。ただ踊っているのではなく剣を所々交えはするが二人の戦いだけを見ると何が起きているのか不思議な空間である。
葵「で、このままどうするの? 体力勝負でもするわけ」
樒「普通に戦ってもいいんだけど、ボクと葵でしか出来ない戦い方をさ、みんなに見せたいじゃん。自慢の弟だしさ」
葵「自慢の弟? 心にもないことを言うなよ」
葵は踊るのをやめ、力いっぱい樒の剣を振り上げる。樒の剣は舞い上がる。
樒「キレキャラなの~こわ~い。仕方がないな……」
葵「兄貴、もらったよ」
樒「だから甘ちゃんなんだよ、君は」
樒の舞い上がって落てきた剣を葵に蹴り飛ばし、葵はバランスを崩す。その隙に葵のリボンを取る樒。
樒「ボクの勝ち、葵はボクには勝てない運命なんだよ」
葵「……」
一方、菖蒲と柾は二人で撫子に戦いを挑む。撫子は二人を相手にしているのにもかかわらず全く隙がないだけでなく菖蒲と柾を押している。菖蒲も柾も攻撃を受けるので精一杯である。
朴と柊、柚と蓮は陣地取りをしながらも攻防戦を行い、追いかけっこのような戦いとなる。キリがないと思った柚はもう一つの銃を取り出し二丁拳銃で戦うが弾切れとなり、弾切れの瞬間を計算していた柊が距離を詰め、柚のリボンを奪い取る。手裏剣の欠点は飛距離が短いことにあるがアンバトでは拾うことができれば無制限で攻撃ができるという利点がある。
柊「二本目、いただいた」
柚「え~嘘~! こんなに避けられたのは、はじめてだよ~」
蓮も所持していた矢がもう一本となったところで朴に銃を向けられる。追い詰められたかと思った瞬間に樒が朴の背後からリボンを奪い取る。同時に柊の手裏剣が蓮の腕のリボンを掠め、リボンが蓮の後ろの的に刺さる。柊が的に当てたことにより樒は陣地外となり失格となる。
樒「あ~油断しちゃったな~。撫子、もう終わりにしていいよ」
撫子「わかったよ、リーダー」
樒の終了の合図で撫子は菖蒲と柾の武器を振り落とさせ、二人のリボンを奪う。
樒「はい、終了。ボクらの勝ち~おつかれ~」
樒チームがリボンを4つ取り勝利となる。
柚「おつおつ~楽しかった~ありがとう」
柚はキラキラの笑顔で深々とお辞儀をする。
撫子「はじめたばかりにしてはいい感じだったよ、お疲れ様」
撫子も優しい笑顔を見せる。
お互い一例をして解散する。
樒チームは練習場を後にし、高校から乗ってきたマイクロバスに向かう。
柚「僕は弱くない、弱くない、弱くない、チビでもな~い」
樒「柚、最後のはなんか違くない」
柚「僕は昔からチビって言われて、女子って言われて、バカにされてきたんだ。だから見返したくて僕にでも出来るスポーツを選んだんだもん」
樒は柚の頭を優しく撫でる。
樒「忍者君、強かったね」
蓮「忍者野郎だけでなく、赤髪の奴も初心者とかいう割に強かったよ」
樒「そういえば、忍者君は少し有名人だよね……例の貴公子? だったっけ」
菫「そうだったな」
蓮「試合で見かけたことがある」
撫子、菫、蓮は以前から柊のことは知っていた。
柚「え、みんな知ってるの? 柚は知らないけど」
樒「忍者君は手裏剣だけでなく、アーチェリーも銃も使えるしね」
菫「なんというか器用というか」
蓮「僕もアーチェリーの試合で一緒になったことある。向こうは覚えていないようだけど」
柚「え、そうなの……。柚だって有名人になってやるんだから。はやく帰って練習する」
樒「うんうん、みんなで練習しよう。帰りながら反省会をやって、学校についたら練習だ~」
柚「せんぱ~い、ありがとう~」
柚は樒に抱き着く。
「もちろん、君たちもね」と樒はウインクをするが、蓮と菫と撫子は疲れ切ったのか無言で無表情の棒立ちをしている。
「なになに? 楽しそうだね」とマイクロバスの中で寝ていた潮がゆらゆらとやってくる。
柚「潮先輩! 帰ったら一緒に練習しましょう」
潮「やだよ~疲れちゃったよ~」
柚「や~だ! やるの~」と潮をユラユラと揺する柚。
潮「柚~目が回るよ~やめてよ~」
柚「潮先輩が一緒に練習やってくれるっていうまで放さないもん」
潮「わかったよ~付き合うよ~」
柚「ありがとう~潮せ~んぱいっ!」と潮に抱き着く柚。
樒「潮先輩、桃源高の柊君わかりますか? 彼に負けちゃって……」
潮「あ~彼はめちゃ強いからね~」
柚「次は勝ちたいもん」
潮「わかったよ、一緒にたくさん練習しよう」
柚「ありがとう~潮せんぱ~い」
樒たちは学校に戻り、柚の気が済むまで練習は続いた。
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