第二十話 樒チームのアンバト試合より気になること
一人ひとりの個性というものが創りだす世界は
とても広くて輝いていて……誰にもマネできないものだね
★葵
次試合のアナウンスが流れる。
「次の試合は宝生高等学校と笛吹高等学校の試合となります」
宝生高校……兄貴のいる学校だ。
兄貴の趣味なのか学校のジャージではない少しコスプレに近いような衣装を身につけている。服のテーマ的なものは統一されているようだが全員がお揃いの服ではなくそれぞれに個性を出した服装となっている。
系統は同じでそれぞれの個性で服装をって感じがチームの個性というのを出している感じがする。服装だけ見ると統一感がない、イコール……統制が取れていないようにも一見みえるが兄貴がいるチームで統制が取れないってことはありえない話である。
兄貴は印象操作がとても上手い。服装にも身につけている物や色にしても話し方や間の取り方、行動やタイミングまでもその場その場の周りの雰囲気や人たちに合わせるという完璧主義者である。
けどアンバトに関しては本当に好きなようで周りがどうとか関係なくただ勝つことだけを考えている。一緒にアンバトをやっている時も笑っている顔をみるのが奇跡というレベルで見たことがなかった。色んな意味で兄貴を尊敬していたし、ヒーローだったけど……今はもう兄貴が怖くて仕方ないんだ。でも兄貴のことを考えるってことはまだどこかに憧れの気持ちでもあるんだろうな。
会場に揃って登場する樒チーム。
樒、柚、撫子は笑顔で手を振っていたがすぐに表情と雰囲気が一変する。さっき会った時の頼りない兄貴ではなく戦いに向かう本気の別人のような顔をしている。他のメンバーも女の子にみえた人たちがキリッとした顔つきになり男らしい雰囲気を出している。
少し気になることは……兄貴達のチームメンバーにはファンクラブが存在しているのかアイドルのコンサートで使用されるような名前などが書かれた団扇や応援幕を持った女性の集団が歓声をあげている。兄貴達の高校は共学だから普通の光景なのか?
「羽柴の兄貴たちの登場だな」
「なんか衣装がカッコイイっすね~」
「葵、俺たちもあんな衣装を用意しようじゃないか」
朴と柊は目を輝かせてオレを見る。
二人は……やはりそこが気になったかと思っていると。
「僕は学校指定のジャージでいいと思う」
柾は眼鏡をクイッと上げ優等生らしい発言をするが、それに対して柊は眉間に皺を寄せ不満というような表情をしている。
「う~ん、学校指定の体操着だとさすがに恥ずかしいので、ユニフォームみたいなのがほしいかもですね」
菖蒲はこんなのいかがでしょうといわんばかりに人差し指を立てウインクをし、空気を読んだと思われる柾と柊の間くらいの提案をする。柊は少し嬉しそうな表情になる。
「部活といえばユニフォームがあるのが普通っすね」と朴も賛同する。
「確かに、そうかもしれないね。じゃあ、なにかしら用意したほうがいいのかな」
菖蒲のいうようにさすがに学校指定のジャージってのもあれだし、ユニフォームくらいほしいところではあるな。
「そうだな、ユニフォームならコスプレのような衣装よりまともだな」と柾は両手を腰に当て、なぜか自信満々でいつもより大きめの声で話す。
「あ、もしかして……コスプレっぽい格好が恥ずかしいんすか?」と朴はニヤニヤした顔で柾を横目で見る。
「な、いや…そんなことはない。というかそんなことではない」と柾は少し動揺している。
そうか……恥ずかしいんだな。
「柾、学校のジャージではテンションが下がってしまう。だから気分を上げるために場に合わせたユニフォームが必要なのだ。なに、恥ずかしがることはない。お前なら着こなせるさ」
着こなせるって柊はどんなものを想像しているんだろうか。少し不安になってくるな。
柾の肩をポンポンと叩く柊。
「いや、だから……僕は……」
柾は少しテンパり、顔が赤くなる。
「羽柴君はどう思いますか?」と話題を変えて助けを求めてくる菖蒲。
「え、あ~ユニフォームは作りたいよね~でも部費がほぼないからな~」
兄貴の試合のことより服装の話か……そうだよな。みんな今から起きることなんか想像はつかないもんな。こんな呑気な会話で心が落ち着くとは……。
「俺は自費でもいいから揃いのユニフォームを作りたい」と柊は何を想像しているのかニヤニヤと怪しい笑みを浮かべている。
コイツの場合はコスプレがしたいというようにしか聞こえてこないのだが。
「みんな、試合より服装って……着目点はそこなんだな。それに響空君はコスプレして戦いたいと言っているように聞こえてくるな」と百合は呆れながらも少し楽しげな様子だ。
ん? ってか試合……気になるの??
「さすが百合君、まさにその通りだ。俺は全身黒ずくめの格好で試合に臨みたい。忍者ってわけにはいかないからみんなでマントを羽織るとかどうだ」
柊は百合が理解してくれたと思い込み、訴えるかのように百合の手を掴む。百合は苦笑いで振り向き、助けを求めてくる。
「黒のユニフォーム……かっこいいけどさ……なんか地味じゃない? ユニフォームにするならもっと爽やかな色味というか、色があってもいいんじゃない。あと、マントは邪魔なだけだから却下ね」
黒じゃなければ何色がいいとか断定できない優柔不断な感じ……。
「マントは必須アイテムだろ」と必死になる柊。
「必要ありません!」と強めに言ってみる。
オレらの会話を聞いて柊以外のメンバーはわかりやすいくらいの苦笑いをしている。
「なら……なら……ヒラヒラしたなんか……」と柊は自分の考えに賛同してもらえず小さくなっていく。
「とりあえず、普通のジャージで決まりだな。それに自費だと、いくらかかると思っている」とまとめにはいる柾。
「そんなにお金がかかるんすか?」と朴。
「柾、お前はそんなに本格的なものを想像しているのか? なんてやる気だ!!」
柊は更に勘違いをし、目を輝かせる。そして柾の手を取り手をブンブンと振る。
「いや、だから……」
柾は柊に話が通じず諦めたかのように目が死にはじめ、身体もなすがままの操り人形のようになる。
「まあまあ、もう試合始まるし、服装のことは後にして観戦しよう」と百合が間に入り場を収める。
すみません。それはオレがやらないといけないことなのに。
「そうだ、今日は試合を見に来たんじゃないか」と柾は目の輝きを取り戻す。
「そうっすね~その話はあとでするっす」
「ふむ、今は葵の兄者たちの試合をみようじゃないか」
「羽柴君のお兄さんの試合楽しみです」
静まり返る会場。
「First half game. Ready go!」
試合スタートのアナウンスが響き渡る。
お読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願い致します!




