第十八話 予期せぬ出会い
大好きだった人が……大嫌いになる
それは一瞬の出来事で
それはたった一言のコトバだったりする
★葵
目を閉じ、風を感じながら座ってみんなの帰りを待つ。
「あれ? 葵? ここで何してるの?」
この声は……今一番会いたくない奴の声がする。
「ねぇってば? あ~お~い~く~ん」
会いたくない声の主はオレの声真似をする。
「うわ~葵が二人いるっす」
朴はオレが二人いるような光景を見て驚き、大きな声を上げる。
「分身の術なのか……」
柊は本物の忍者に出会ったかのように嬉しそうに目を輝かせている。
「どうも、こんにちは! 君たちは葵の友達かな? ボクは羽柴樒。葵の兄だよ~」
兄貴はオレと同じようにニコニコヘラヘラした態度と表情をする。
「なんだと、葵に兄がいた、だと!」
柊は驚きを表現したいのかわけのわからないポーズをしている。
ああ、なんでこんな時に……つくづく自分のタイミングの悪さに嫌気がさす。
兄貴はオレの一つ上の学年でオレと双子といっていいほどに顔が似ている。ヘラヘラしている感じも同じであえて違う箇所を言うとすれば髪型が少し違うくらいである。親でもオレたちを間違えることがあるレベルの激似だ。オレが見た目やキャラを変えても兄貴がなぜか合わせてくるのである。本当に不愉快なやつでオレは兄貴が苦手というか正直……嫌いである。
キーン。激痛が走る。ああ、いつものやつか。人の顔が何重もの線でグシャグシャに描かれ表情が見えなくて聞こえてくるコトバは聞いたことない言語でオトの上がり下がりが激しくて聞き取れない。落ち着くためにいつも身に着けているネックレスをギュッと握りしめる。
「やあやあ~兄貴~奇遇だね~」
オレはわざと兄貴に合わせた表情と声のトーンで振り返る。
「葵、元気だった? 高校生になったと思ったら寮に入っちゃうんだもん~寂しかったよ~本当に久しぶりだね、会いたかったよ~」と樒はハグをしてくる。
オレは会いたくなかったよ……兄貴。
「兄貴も元気だった~? 今日は出場するの?」
「あぁ、もちろんだよ! 今日は部活のメンバーと出場するんだよ~」
「これから?」
「うんとね、次の次だね~せっかくだし、試合見てね~、お友達も一緒に~」と樒は柊や朴たちに向けて笑顔で手を振る。
「はい、もちろんです!」と柊と朴は声を合わせて答える。
「そういえば、なんで見に来たの? アンバトはやらないっていってなかった?」
気持ち悪いくらいの満面の笑みでオレの顔を覗き込む兄貴。
「……まあ、なんとなくさ……」とオレは兄貴から目をそらす。
「樒せんぱぁ~い、どこですか~」と遠くから女の子が兄貴を呼ぶ声がする。
「柚~ボクはここだよ~」と柚に大きく手を振る樒。
「先輩、探しましたよ~」と兄貴の腕をギュッと掴む柚。
「ごめんよ、柚。今、向かおうとしてたんだ」と柚の頭をポンポンと叩く兄貴。
「樒、もうすぐだよ、準備しないと」と髪をフワフワとさせた菖蒲のような天使美少女が現れる。
「先輩、どこか行く時は一言いってください」とショートカットのクール系の女の子も現れる。
なんだ、兄貴の部活は女子マネージャーだらけのハーレムなのか……。
「みんな、ごめんよ~次は気をつけるから~」と兄貴は手を合わせ、ごめんの仕草をする。
「こんなところで油を売ってないで行くよ」とフワフワ髪の美少女が樒の肩をポンっと叩く。
「いくいく~でもちょっと待て! せっかくだから紹介させてよ」と樒はフレンドリーにオレに肩組みをする。ああ、本当に気持ちが悪い……。
「こいつは、ボクの弟の葵。双子のように似てるだろ~」
兄貴はそういってオレの頭をガシガシと撫でまくる。
「うわ~先輩、双子さんだったんですね~」と柚は嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねる。
「いや、柚。樒は弟といったから、兄弟であって双子ではないよ」と背が高く細マッチョの男が現れ、答える。
「柚、菫が言うようにボクと葵は兄弟だよ~」
「え~こんなに似ているのに双子じゃないんですね~残念~」と柚はしょんぼりとする。それの様子を見た菫が柚の頭をポンポンと触り、慰める。
「んで~葵、これがボクのチームメンバー。この可愛いワンコみたいのが銃担当の柚、で~こっちのロング髪の美人が双剣担当の撫子、そしてショートカット美人がアーチェリー担当の蓮、最後にデカくて堅物そうなのが槍担当の菫」
え? マネージャーじゃなくてチームメンバーだったのか。ということは全員男子なのか!
「樒の弟の葵です。兄がいつもお世話になっております」とオレはニコニコの笑顔で深々と頭を下げる。
「樒と違って礼儀正しくいい子だね」と撫子は優しく微笑みながら頭を少し傾ける。
「え~ボクもいい子だと思うけどな~」と樒はウインクをし、可愛くピースをする。
「いい子は突然迷子になったりしません」
「あ……はい、気をつけます」
「では、いい子になる予定の樒くん、行きましょうか」
「はい……」と兄貴は小さな声で答え、素直に撫子の言う通りに動き出す。
「それでは、失礼しますね」と撫子は微笑み、胸のあたりで片手を振る。もう片手は兄貴の腕をしっかりと掴んでいる。蓮、菫は一礼をし「バイバイ~」と柚はピョンピョンと跳ねながら両手で大きく手を振り「またね~」と樒はニコニコしながら大きく手を振る。
そして速足で去っていく兄貴一行。
「まったくもう、世話が焼けるんだから」と撫子は大きくため息をつく。
「ごめん、ごめんて。久しぶりに弟に会ったものだからついさ~」
「葵ちゃんだっけ~? 弟きゅん、樒先輩にそっくりでドッペルゲンガーでもでたのかと思っちゃったぁ~」と柚は楽しそうにクスクス笑う。
「ね、可愛い弟でしょ?」
「うんうん、可愛い! でも可愛さでなら、柚の方が可愛いもん。そだ、葵ちゃんも試合に出るの?」
「いや? 何ももっていなかったし、見学じゃない」
「見学? そうなの? 葵ちゃんはアンバトやってないの?」
「どうなんだろうね~」
「ん? どういうこと??」
樒はニコニコ顔でそれ以上は口にせず、撫子、菫、蓮は話を聞いていないようなフリをして誤魔化す。
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