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第十六話 タイミングの難しさ

君に言葉を伝えたい……

でも言葉は自分の思った温度で伝えることが出来ない

オレがプラスでいったこともマイナスに捉えられることもある


なら言葉にしなければいい?

いや、言葉にしないと伝えられない!


だから言葉は一つ一つ大切に想いをのせて届けたい

少しでも想いが伝わることを願って

★葵


 夏の前のジメジメとした梅雨。昨日は雨が降ってまだ道には水たまりがあちらこちらに残っている。空は洗われたような青々とした色で真っ白な眩しい日差しが登り風は青々とした木々と生乾きのような香りを運んでくる。


 今日はアンバト部のみんなで実際の試合を見に行くこととなった。


 オレは今日が楽しみすぎて待ち合わせ20分前に集合場所に到着する。ベンチに座っていると風に揺られた木々の間から瑠璃色の鳥が見えあまりにも鮮やかで美しい色をしているので目が離せないでいた。

「羽柴、おはよう」

「あっ! 百合君! おはよう、早いね~」

「いやいや、羽柴の方が早いだろ」と百合は少し呆れた顔をする。

「確かにね」

「綺麗な色の鳥だな。今日の空の色にすごく映えそうだ」

「オレも同じこと思っていたよ~やっぱオレたち気が合うね~」

「まあ、腐れ縁のような仲だからな」

 その言葉は今ではなくもっと別の時に聞きたかったな……なんて。

 百合にアンバトの試合を見に行くという話をしてダメ元で誘ってみた。意外と百合も興味があったようで一つ返事でOKをもらうことができた。

「なんか、こうやって話すのは久しぶりだな」

「そういえば最近は部室で昼も食べてたし、ゆっくり話す時間がなかったね~」

 部活をスタートさせてから柊と朴が部室で昼を食べるようになり柊がまた部屋の壁に手裏剣を投げないか心配でオレも昼は部室で食べるのが日課になっていた。

「どう? 順調?」

 百合の言葉は相変わらずシンプルで主語というか言葉が少し足りない。『順調』はオレのことなのか部活のことなのかそれとも他のことなのか全部なのか……。

「そうだね~部活は順調かな~個々で武器も扱えるようになったし、最近はチーム戦の練習もしているよ~。百合君もたまには見に来てもいいんだよ~。なんだったら一緒にやってみてもいいんだよ~」と会話の流れでさらっと百合を誘ってみる。

「そうか、順調そうで良かった」と百合は誘いを何事もなかったかのように流す。

「そういえば、百合君は最近忙しそうだね~天文部が活発に動くようになったの?」

「いや、通常通りだ」

「え~でも最近は授業が終わるとすぐに教室を出ていっちゃうよね~」

「ああ……まあ……色々とな」と百合は急にしどろもどろになる。

「なになに~色々って? 気になるな~教えてよ~」とオレは前のめりになって百合の顔を覗き込む。

「そ、そのうちな」

 百合はそう言いながら苦笑いをして半歩後ろに下がる。オレは少し目を開き上目遣いをし百合に迫ってみる。

「う~ん、今聞きたいんだけどな~」

 オレはわざと百合が下がった分だけ近寄り瞬きせず見つめてみる。だって気になるし今すぐ聞きたいから……少し強引な感じだけど。

 百合は目を背け動揺している様子。

「なんだ、バカップルごっこか?」

 柊は両手を腰に当てて小馬鹿にしたような表情と口調で話しかけてくる。

「わたしも……どのタイミングで話しかけようかと思っていました」

 菖蒲は眉毛を下げクスクスと笑う。柊と菖蒲が来たことでホッとしたような顔をする百合。

 今回は少し頑張って押していたのに……また邪魔が……。

「タイミングって~普通に来た時に話しかけてくれればいいのに~」

 オレはお手上げのポーズをしてニコニコした笑顔で対応する。

「いや、どう見たってあれは……葵が百合君に迫っていたようにしか見えなかったぞ」

「え~そんな、普通の会話だったよね~百合君?」と百合に聞くと「あ、えっと……そうだな……」と会話を聞いていないのか適当な返事をされる。

「あれは、壁があったら壁ドンをしていたような状況だったぞ」と柊は真剣な表情でオレを指差す。

 こいつは……誤解を招くことを! どれだけ空気が読めないんだ……聞かされるオレが恥ずかしくなってくる。

「そう思わないかい? 百合君?」

「あ……ああ……」

 百合はまだ動揺しているようで会話を全く聞いていない様子だ。

「ほら、百合君も壁ドンをされて責められたと言っている」

 おいおい、待て待て。話がなんか盛られて状況が悪化している。

「え~そもそも、壁ドンなんかしてないしさ~濡れ衣だよ~」

「何が濡れ衣なんっすか?」

 また面倒くさい奴が登場したか。良く言えば純粋そうな、悪く言えばアホそうな朴が話しかけてくる。

「何があったんっすか?」と朴は曇りのない眼でオレを見つめる。

「いや~なにも、なにもしてないのに柊がいじめるんだよ~」と泣き真似をして朴に寄り添う。

「な、なんだと! 俺はいじめたりなんかしていない、見たままをだな……」

「まあまあ、羽柴君もそういっていることですし、響空君もそこまでに……」

 柊の話を遮るように菖蒲が仲裁に入ってくれる。

「なんすか~よくわからないっすけど? なんか気になるっす」

 朴は興味津々と言わんばかりに目を輝かせる。

「おい、お前たち。ここは公共の場だぞ、静かにしないか」

 柾は最高なタイミングで登場し、柾の一喝で一同静かになる。

「ところで何をもめていたのだ」

 結局……話を蒸し返す柾。さっきの最高のタイミングという褒め言葉はなかったことにしよう。

「聞いてくれ、葵がだな……」と柊が柾に説明し始めるがそれを遮り話し始める百合。

「なんでもない、たわいもない会話をしていただけだ」

 いつもの冷静な百合がそこにいた。

「ん、そうか。揃ったようだし、そろそろ行かないか部長」と柾。よい感じだ柾! やっぱ訂正の訂正をしるからこのままのキャラを保ってくれ!

「うんうん。そうだね~いこうか~」

 オレは何事もなかったように笑顔でフワフワとスッキップするかのように歩き出す。


 待ち合わせ時間より15分も前に全員揃うとか、みんな楽しみってことだよな。

 本当にタイミングというのは難しいし、行動も言動もそのタイミングにより真逆に解釈されるとこもある。受け取り手の状況も含め、誰もが全く同じ解釈をするというのは難しいことで頑張って伝えようとしても完璧に理解してもらうことは不可能に近い。でも例え誤解されたとしても伝えたいことは言葉や行動で表現しないと伝わらない。だから誰かが察してくれるだろうとか自分のいったことは理解されるだろうという傲慢な態度ではなく謙虚な心構えで言葉を伝えたいと思う。

お読みいただきありがとうございました!

次回もよろしくお願い致します!

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