第十五話 アンバトのルールとはじめてのアンリアルバトル
君のカラー(個性)は最高にステキでカッコイイよ
君の好きをとことんやっていいんだよ
君らしくでいいんだよ
★葵
フワフワとした綿あめみたいな小さな雲が水玉模様のように並ぶ空。桜の木は青々とした葉で覆われており、紫陽花の花が咲き、カエルの合唱も聞こえる季節。
アンバト部を作ってもう二ヶ月が経つ。個々で担当武器の練習を行いある程度形になってきた。秋にある新人戦の試合に出場するのを目標としてチーム練習を始めている。
アンバトの試合形式は決められたフィールドの中で相手チームとバトルをして得点を競うというものである。ほとんどの試合は5名~6名の武器を持った競技者と競技には参加せずチームに指示を出すチームサポーター1名で行われる。チームサポーターに関しては競技者自身が行う場合もある。
武器は遠距離武器となるシューターの銃、手裏剣、アーチェリーなどの中から2種~3種と、近距離武器となるアタッカーの剣(単剣)、双剣、槍などの中から3種を用いた武器を使用する。武器種は2種類まで同じ武器が使用可能である。武器種に関しては都度必須のものがある場合、自由の場合などがあるがほとんどが自由である。
アンバト競技のルールはフィールド内での陣地取りと対戦となり最終的には得点制で勝ち負けが決まる。陣地取りはフィールド内にあるいくつかの的をチームカラーにすることで行動範囲が決められる。スタート時の陣地はフィールドの形状にもよるが半々で自分の陣地がセットされている。
競技者はシューターの攻撃であるカラーが3回当たると失格になる場合と身につけているリボンが相手に奪われた場合に失格となる。失格となったものはフィールド上から退出しなければならない。最終的にはリボンの数が3~4本(五人チームの場合は3本、六人チームの場合は4本)先取すると試合終了となる。
シューターの銃、手裏剣、アーチェリーは人に当たっても問題がないようにアンバト用の特別な保護がされ、銃はカラー剤の弾、アーチェリーや手裏剣はカラーがついたものを相手に当てると得点になる仕組み。
シューターの役割は陣地取りと相手の競技者にカラーを当てること。基本は陣地取りが優先で行われる。陣地取りはフィールド上に的がいくつか設置されており、そこにカラーを当てると自分の陣地となる。当然、上からカラーを当てられた場合は相手の陣地となる。また、自分の陣地以外に入ると失格となる。陣地取りはとても重要で戦闘範囲はその陣地取りで大きく変わってくる。陣地が広いほど戦いは有利になる。陣地は的と的を繋げることで光のラインが出現し戦闘範囲が決められる。陣地は的と的を繋げたラインが範囲となるため、アタッカーのための戦闘スペースを作る必要があり、アタッカーが戦っている最中もシューターはアタッカーのため陣地を常に考えながらフォローする役目と相手の競技者にカラーを当てる役目と二つの役目を果たすため重要なポジションである。
アタッカーは武器のレプリカが使用される。しかし見た目や重さなどにルールはないので相手を怪我させるような装飾等が付いていなければどんな武器を使用しても問題はない。アタッカーの役割は、同じアタッカーと戦い、身につけているリボンを奪うこと。
ちなみに服装には規定はないのでコスプレに近い格好をするチーム、学校のジャージを着用するチームなど様々な格好で出場している。服装には規定はないが必須で身につけないといけない装備はあり、目を守るためのサングラスかゴーグルは必ず身につけなければならない。またチーム同士で会話をするためにヘッドセットを身に付ける。
この学校のアンバト部は新設されたばかりの部活なのでお金もなく、柊の持参した手裏剣以外はレプリカというよりおもちゃに近い武器で今は練習している。オレも本当は自分専用の剣があるのだが他のアタッカーのメンバーに合わせ木刀を使用している。朴はサバゲで使用する銃を使ってそれぞれ練習をしている。最初からレプリカを使用するか悩んだのだが先ずは雰囲気を重視してみようと思い、おもちゃのような武器を使用することにした。
という訳で個々で練習だけしていてもということで先ずは練習試合からはじめてみることにした。経験者のチームAがオレと柊。未経験者のチームBが、菖蒲、柾、朴。このチーム分けでチーム練習を始める。いきなり競技のようにやるのは難しいので今回は陣地取りようの的は用意せず、柊と朴は3分置きの30秒間だけアタッカーへの攻撃を行ってもらい、アタッカーがその攻撃を避け他の時間はオレが菖蒲と柾と戦うという練習方法を取る。個人でやるのとは違い対象物ができることで今まで個人で出来たことができなくなるのがチーム戦である。
「ははは。ようやくこの時が来た。皆よ、俺の実力をみせつけてやろう」
柊は手裏剣が連なったネックレスのようなものを首から下げ、指先が出るグローブを着用し伊達眼鏡の下に眼帯をしている。そして片手で顔を隠し、もう片手で顔を隠した手の肘を支えるポーズを決め込んでいる。なんだろう……どこから突っ込めばいいのか。とりあえず柊は形から入るようだ。
「俺も負けないっす」
朴は柊とおそろいの指先が出るグローブを着用し二丁拳を構え戦隊もののようなポーズをとっている。なんというか……これはこれでどこから突っ込めばいいのか。
「やるからには本気でいきますよ」と天使の笑顔で立ち姿が美しく双剣を構える菖蒲。うん……美しい。
「今できることをお見せしましょう」と白の稽古着に黒の乗馬袴、スポーツ用のサングラスを着用し両足を揃え木刀を両手で構える柾。柾の場合は真面目にやっているのか……統一感のなさにもはやどこへ向かっているのかわからない。
「よっしゃ! みんなの今の実力を見せてくれ」とオレはウインクをし、手を大きく広げる。
「じゃ、いくよ! ……スタートッ!!!!!」
オレのスタートの合図で一斉に走り出しバトルがスタートする。砂埃が立ち辺りの視界が悪くなる。菖蒲と柾は慣れない視界に足が止まる。オレはその隙に菖蒲と柾の身につけていたリボンをあっさりと奪う。スタートしてからの一瞬の出来事であった。
「は~い、終了で~す」とオレは2つのリボンを高々と上げる。
「え……」
「もう取られたのか……」
菖蒲と柾はあっという間の出来事に驚き、立ち尽くす。
「二人共~砂埃くらいで狼狽えるなんて~まだまだだね~」
「もう一回です」と菖蒲はいつもの笑顔ではなくキリっとした表情をみせる。
「ああ、次はこんなヘマはしない」と柾も声も大きく真剣な眼差しを向けてくる。
「お二人共、次は俺たちの出番を作っていただこう」と柊は上から目線で妖しく微笑む。
「頑張ろうっす」と朴はキラキラな笑顔で拳を大きく上げる。
リボンを再度身に付け、第二回戦をはじめる。
菖蒲も柾も二回目で砂埃を克服する。『感覚』を覚えるのが早い。そのあとも何度も何度も練習を重ね、チーム戦というのも少しは形になってきたがオレが理想とする競技に近づけるため実際の試合を見に行くことにした。
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