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第十三話 出会いや繋がりで見える景色の色

 出会いや繋がりで見える景色は自分にはない色ばかり

 一つ一つの出会いは奇跡的で

 誰かと繋がることで見えてくる世界は本当にステキだね

★葵


 今日の練習は軽く準備運動をし山登りをすることにした。山登りといってもそんなに高い山ではなく往復で一時間半~二時間程あれば登れる山である。

 アンバトのフィールドは鋪装された地面の時もあればデコボコの土や石がゴロゴロしている地面や草が覆い茂った地面の時もある。そのため山登りのような自然が残った道を歩くことは試合のフィールドを体感できるのでとてもよい。そして山登りは全身運動にもなり持久力もつくので一石三鳥である。何故、裏山があるかというと校長の趣味が登山ということから登山部があるというのと登山好きな校長がこの土地を所持し、更に広々とした場所で子供たちが声を出し思い切り駆け回れる場所をつくりたかったという理由があるらしい。オレたちがいるのは男子校だが女子校もあり、この学校は初等部から高等部まであるが初等部からいるものは中学高校で他の学校に移る傾向があるようだ。


 登山開始から約三十分が経ち登山部とすれ違う。

「お? 例のアンバト部だな? 頑張れ、もう少しで山頂だ」

 日焼けした肌、引き締まった筋肉の部長らしき人が爽やかに声をかけてくれる。

「お疲れ様です! はい! アンバト部です。もう少しで……頑張ります」

 普段から身体を動かしているオレは山登りのキツさは全くというほど感じていない。他の登山部のメンバーも身体も息も整っており爽やかな笑顔で挨拶をし山を下っていく。

 朴と柊は最初の二十分くらいまでは楽しそうに会話をしながら登っていたが途中からは話す余裕がなくなったようで真顔の無言で登り続けている。菖蒲と柾は荒く息をしているがオレたちのペースに着いてきている。

 ようやく山頂に到着し休憩を取ることにする。

「みんな、お疲れ様~水分補給はちゃんとしてね~あと糖分補給に……はいっ! アメちゃんをどうぞ~」とスキップをしながらみんなに飴を配る。

「元気っすね」

「なんでそんなに元気なんだ」

 朴も柊も少し息切れをし疲れが出ている様子だ。

「それはね、ちゃ~んと先のことも考えて~焦らず自分のペースで登っていたからね~」

 正確には朴と柊のペースに合わせて登っているのでオレにとってはゆったりコースであった。余裕のペース配分だったので疲れもなく呼吸も安定しているというわけである。

「羽柴君は、体力があるのですね。見習わなくては……ですね」

 菖蒲は荒い息をしながらもキラキラした笑顔を見せる。

「本当に感心する。部長のようになんでも器用にこなせるようになりたいものだ」

 柾は少し息切れをしているがまだ余裕があるようにも見える。

「いや~照れるじゃないか~。でも、ありがとう~」

 オレはみんなの中心に立ち一回転し、つま先に手がつくくらいの深いお辞儀をしてみせる。頭を下げたと同時に……。大きな風が吹き、葉桜の葉と桜の花びらが舞う。

 風よみの力……風が吹くタイミングや風が通る方向を見る力。オレはその能力を使って今のタイミングを計りお辞儀を見せたのである。きっとそのことには誰も気がつかないだろう。普通はそんな器用なことは出来ないのだから。でも百合がここにいたら気が付いてくれたかもしれないな……百合も風よみができる。百合はよく教室から空を見ているが、たまに風の吹く方向も見ているから、きっと風よみを楽しんでいるんだろうなと思う時がある。




* * *

 次の日は土曜日で学校が休みだが部活を行うこととなった。部活の場所は学校ではなく、朴の家だ。今日の部活の練習メニューはテレビゲームを使ってバトルの疑似体験をすることだ。サードパーソン・シューティングゲームやバトル系のゲームで擬似アンバト体験、タイミングゲームで動体視力や反射神経を鍛えようというメニューである。といってはみたものの半分は遊びになると思っている。オレは兄貴がいるのでよく二人でゲームをして遊んだ。だからゲームは得意である。

 朴の家は高校から一時間ほど離れた街の住宅街にある。朴の部屋はサッカー関連のポスターやグッズが飾られた部屋なのかと思いきや……アンバトを始めたからかアーミー系の物が置かれサバゲ用の銃がいくつか置かれている。朴は部活であまりアンバトらしい活動をしていないため柊と一緒にサバゲに参加しているそうだ。

 早速、柊は銃を取り決めポーズをし柊に合わせて朴も銃を手に取る。

「二人共~くれぐれも言っておくけど、今日は遊びに来たんじゃなくて部活の一環としてゲームをするんだからね~」と部長らしく真面目に仕切ってみる。

「うふふ、わかりました」と菖蒲。

「了解した。おい、お前たち! ちゃんと聞いているのか」とオレより部長そうな振る舞いで仕切る柾。

「無論だ」

「了解っす」

 柊と朴は銃を元の場所に戻し、大人しくテレビの前に座る。

 お? 珍しく今日は大人しいな……。


 サードパーソン・シューティングゲームやバトルアクションゲームで各々の担当武器種を持ったキャラを選択し、コントローラー操作で武器を使用してプレイする。ゲームの中では好きな武器をもって大きなフィールドで戦うことができる。コンボ技や必殺技まであってリアルでこんな風に戦えたら楽しいだろうなと思いながらみんなで擬似アンバトを楽しむ。

 ゲームの中とは言え自分の担当武器で自由に戦えるということがみんな楽しいようで目が輝き楽しそうな大きな声が聞こえる。そんな光景がオレはすごく嬉しい。アンバトの楽しさを知ってもらえたようでもっと楽しさを知ってアンバトを好きになってもらいたい。

 タイミングゲームもプレイし実際のアンバトの試合に役立つ動体視力や反射神経を鍛える。どのゲームをやってもみんな真剣で子供のような輝いた目をしている。ゲームが楽しいというのもあるだろうけどやっぱりみんなでゲームをしているから楽しいというのが大きいと思う。


 オレには兄貴がいる。兄貴はオレの憧れで大好きな存在……だった。

 一つ年上の兄貴はいつもオレのそばにいてアンバトをする時もゲームをする時も何をする時もいつも一緒だった。兄貴がいるだけで世界はカラフルでキラキラと輝いていて楽しい日々。それがオレにとっての当たり前であって、これからもずっと続くと信じていたんだ。


 突然、兄貴に突き放されて独りになった。


 独りになってアンバトをしてもゲームをしても楽しい気持ちにはなれずにいた……オレの目の前に『ヒーロー』が現れるまでは。

 憧れの存在がいるだけで尊敬できる人物がいるだけでこんなにも世界が変化するということに驚くばかりだ。オレのヒーローに出会ってからはアンバトは前より楽しくなった。兄貴とは違った魅力の持ち主。そして独りで何かをするにしても楽しい気持ちばかりでいっぱいになった。

 今、アンバトをやることが本当に楽しくて仕方がない。アンバトメンバーと一緒にいること、何かをすること、何もかもが本当に楽しくて仕方がない。


 昔のオレは自分に合わない人たちを拒絶していた。

 でも思ったんだ……。

 自分に合わないから拒絶したら自分が持ち合わせていない世界は見ることができない。だから自分に合わないからといってすぐ拒絶するのではなく受け入れてみようと。そうしたら新しい世界が広がるのかもしれないのだから。とはいったものの苦手や嫌いはどうしても出てくるわけで……その時は合わないから嫌い、否定、攻撃ではなく。無関心になればいいと思う。

 出会いや繋がりで見える景色は自分にはない色ばかりで、自分では創り出せない色。だからこそ、一つ一つの出会いは奇跡的で、誰かと繋がることで見えてくる世界は本当に素晴らしいものだと思う。

 今のこの瞬間を大切にしていこうと心から思うんだ。

お読みいただきありがとうございました!

次回もよろしくお願い致します!

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