第十二話 個性というカラーから生み出される鮮やかなグラデーション
一人ひとりのステキな個性って……
夜空の星のようにキラキラ輝いて見えるよね
★葵
数日後。グラウンドの整備が終わり、本格的な部活がスタートできる状態となった。とりあえずは基礎トレーニングを重視して筋トレとダンス、グラウンドの横には裏山もあるので山を使ったトレーニングを毎日のメニューに組み込むことにする。
アンバトはただ武器を使えればいいというものではなく、攻撃時の打撃の力、攻撃された時に受け止める力、瞬発力、判断力、可能であればアクロバットができるなど運動能力や筋力があるほどプラスになる。これにプラスで風をよむ力があれば攻撃を受ける前に判断は可能だし、息遣いや言葉の先よみができれば相手の呼吸で先よみができ攻撃や防御なども可能となる。
オレたちのチームはそのプラスの要素を持ったメンバーが多数いる。というか選んだというべきだろうか。偶然というか奇跡的にそういうメンバーが揃ったのである。菖蒲以外のメンバーは元々運動経験者ということもあり筋トレは朝飯前のような余裕さを見せる。菖蒲は荒く息をしながらもオレたちと同じメニューをこなしている。
「菖蒲、厳しかったら休憩しながらでもいいからね。無理はしないでね」
「羽柴君……だ、大丈夫ですよ……お、お気遣いありがとうございます」
菖蒲はいつもニコニコ笑顔で一度も辛い顔を見せず一生懸命にトレーニングを行っている。菖蒲以外のメンバーは余裕な雰囲気なので変に休憩を挟むと菖蒲に気を遣わせてしまうだろうし……でも休憩を入れないと菖蒲も無理して合わせそうだし……う~ん……難しいな。じゃ! ここはこれで行ってみよう!
「よしっ! 10分休憩して、次はダンスだ!」
「ダンスっすか? 楽しそうっす」と朴は軽やかな足取りでクルクルと回転しジャンプをする。
「アンバトとダンス……どういう関係があるんだ?」と柊は両腕を組み、眉間に皺を寄せる。柊には何をやるにも納得の行く説明が必要なようで少し空気を読んでくれたら嬉しいのに! と思う時がある。
「ダンス……軽やかに動けるようにするということだろうか」と柾はメガネのブリッジを指先で上げながら得意げに答える。そうそう、自分で考えてくれるのは本当に助かる! ちょっと違うけど納得してくれたならそれでいい!
「お、さすが柾! そんな感じ! ダンスができると身軽な動きも出来るし戦う時も素早く動けるようになるしね、意外と大事だよ~」
「そうなのか、理解した」と柊はあっさりと納得したようだ。
「うんうん、理解が早くて嬉しいよ~」
早速準備してきた音楽プレーヤーとスピーカーを配置する。
「羽柴君、ありがとうございます」と菖蒲はこちらをみて微笑むので言葉を返さず微笑み返す。
休憩も終わり音楽を流しながらお手本となるダンスを披露してみせる。各々の感覚で踊るのでも問題はないが最初はというかアンバトに役立ちそうな動きを含めたダンスを考えたのでそれを先ずは覚えて踊れるようになってもらいたい。
朴は昼休みのサッカーで遊んでいる時から思っていたが身体能力が非常に高く、ダンスもすぐに覚え軽やかにアレンジまで入れて踊っている。菖蒲もすぐダンスを覚え軽やかにそして指の先まで美しく優雅に踊る。柾はダンスが苦手なようで……強ばった顔とガチガチな動きでまるでロボットのような動きをし見ていて少し面白い。柊はなんだろう、そもそも覚える気がないのか独特の動きで踊っている。ダンスが下手や苦手ではなく協調性が少し足りない気もするが動き自体は軽やかさと重さのバランスがあり動き自体に問題はない。
「菖蒲はダンス経験者なの? しなやかな身のこなしというか~」
「ダンスは経験ないのですが、日本舞踊ならやっておりました。祖母が踊りの先生で覚えさせられたというか、そんな感じです」と菖蒲は少し恥ずかしそうに微笑む。
「すごく綺麗なダンスで見とれたっす」と朴は菖蒲に尊敬の眼差しを向ける。
「うふふ、ありがとうございます。愛風君のダンスはとても楽しそうですね」
「そうっすか?」
朴は褒められるすぐ嬉しくなるようで太陽のような眩しいキラキラした笑顔で軽やかなダンスを披露する。菖蒲は笑顔で手をパチパチと叩く。
「俺のダンスはどうだ」
柊は負けじとダンスというかポーズを組み合わせたような動きを見せる。
「うふふ、響空君のダンスも独特でかっこいいですね」
菖蒲は笑顔で手をパチパチと叩くと柊も褒められることが嬉しいようでいつもの無表情ではなく、はにかんだ笑顔を見せながら踊り続ける。
「羽柴君、僕はどうすれば踊れるだろうか」と真剣な顔をする柾。
「う~ん、そうだな。柾はダンスの動きをとりあえずコピーしようとしてない?」
「ああ、そうじゃないのか」
「まぁ、ダンスを覚えるのが主な目的じゃないから。先ずは気持ちも身体も軽くなったイメージで地面じゃなくて、そうだな……例えば雲の上にいる感じで体重を下にかけたら落ちちゃうかもくらいでフワフワ~ってステップ踏んでみるとか。身体を動かすのも、マニュアル通りに手や足をあげるとか伸ばすじゃなくて、自然に動くと手や足がついてくると思うから~もう少し力を抜いてみたらいいんじゃないかな」
「そ、そうなのか……やってみる」
徐々に柾のダンスが自然な動きになり表情も少し豊かになってくる。
「そうそう、その調子、その調子~」
柾のダンスに合わせみんなも合わせて楽しそうに踊りだす。
ダンスは星が見える時間まで続いた。それぞれの得意な部分を教え合うその光景が夜空の星のようにとてもキラキラ輝いて見える。何事も苦手なことや嫌な気持ちになるとこは当然あって、でもその気持ちを楽しいに変換できたら世界は明るくなって、見えなかったものが見えるようになる。みんなといると、みんなとやるとこんなにも気持ちが明るくなるんだなと実感する。仲間っていいな……。
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