第十一話 青春のくす玉
当たり前の日常……
本当は奇跡の連続だったとしたら……
それに気がついたとき……
世界の色はどうみえるのかな
★葵
部活をスタートさせてから二日目。今日から実際にアンバトの練習をスタートさせる予定だ。アンバトは新設したばかりの部活なので練習場らしい場所はなく予備の第四グラウンドとして使われていたテニスコート四個分くらいスペースがある四方は高いフェンスに囲まれた場所を部活の活動場所として用意してもらった。とはいえ現状は荒地になっており歩く場所がないくらいに雑草が生い茂っている。とりあえずここを綺麗に整備しないことには始まらないのでみんなで清掃をはじめることにする。
「かかってこい、雑魚ども」
柊は手裏剣を持っていなくても『敵』というものがあれば戦うらしい。今は雑草と戦っているというか草むしりを元気いっぱいに? 楽しそうに行っている。
「柊~こんな雑魚ども、さっさとやっつけよ~」とオレも柊のテンションに合わせてみる。
「雑魚ども~覚悟しろ~っす」と雑草をみて途方に暮れていた朴もテンションが上がったらしく柊のように雑草と戦いはじめる。
「あ、こんなところに珍しいお花が……」
菖蒲は草むしりをしているというか園芸部の活動しているようにしか見えない。
「君たち、そんなに適当にやってはダメだ! ここは順路を決めてだな……」
柾は口は進むが手が進んでいない。
「手ごわい敵め、この俺が成敗してくれる」
柊は忍者というより戦隊ヒーローのようなポーズをカッコよく決め自分の背丈くらいの雑草を素早く抜いていく。
「柊~君ならできる! 君にしか出来ないんだ!」とオレは適当に柊を煽ってみるとやる気があるのかないのかわからないが柊と朴は目を輝かせて自分がヒーローになったつもりで素早さが増しながら雑草と戦い続ける。
「君たちは、真面目にやる気はあるのか!!」と柾が仕切り始めるが「なにをいっている。真面目に五芒星をかいているじゃないか」と柊は斜め上からの言葉を発する。
「ご、五芒星???」
「なに? 五芒星を知らないのか」
「いや、それくらい知っているが何故今それを描く必要があるのか教えてくれ。端から真っ直ぐにやっていったほうが効率的だろう」
「柾、効率と魔除けはどちらが大事だと思っているんだ」
「魔除け?」
「ここは神聖な場所だ。大事なことだろう」
「え、あ、そ、そうか……」と柊に押し切られる柾。
そんなこんなで柾たち三人はそのコントのような会話を続けながら草むしりを行う。
「本当にお笑い部に変更したほうがいいんじゃないか」と腹を抱えて笑う百合がいつの間にか後ろに立っていた。
「百合君、来てくれたんだ!」
「草むしりの手伝いは……気が向いたらとして、とりあえず差し入れをと」
百合は人数分の飲み物とお菓子を差し入れしてくれる。
「ありがとう~助かるよ~」
「結構、広い場所だな」
「そうそう、思ったより広いところをもらえたんだよ~。一応、裏山の一部も練習に使っていいみたいだし、環境は良さそうだね~」
「あ、あのさ~百合君……」
「なんだ?」
オレは勇気を持って百合を部活に誘うことにする。頑張れ、オレ。
「もし……よければだけど……さ……」
シュッ、カン、カン、カン。
オレの横50センチ先のフェンスに手裏剣が当たり落ちる。
「え……」
大事な事を話そうとしている時に……何故このタイミング……。ショックで言葉を失ってしまう。
「やあ、よく来たな……百合君。これは歓迎の儀式だ!」
柊は怪しい笑顔で相変わらず意味のわからないことを言い出す。
「えっと……て、手厚い歓迎いたみいる?」
百合は柊に合わせたのか侍のような言葉で返しをする。
その返しが面白く、オレは手を叩いて笑ってしまう。
「ははは~いや~なんだよ、そのやりとり面白すぎるだろ~」
「じゃあ、次は俺からっす」と朴は花びらや葉っぱを詰めたバケツを空高く蹴り上げる。
夕日の光が反射してキラキラと光る花びらと葉がヒラヒラと舞い落ちる。土と葉が入り混じった青臭い匂い。普通の人から見たら汚いものに見えるかもしれないがオレたちには最高のくす玉となった。追い風が吹き落ちかけていた花びらや葉っぱは空高く舞い上がる。
当たり前の日常……それは当たり前と思っているから何の感情も持たないが、本当は奇跡が連続で起きていると感じることができると世界が明るくなりカラフルでキラキラして見えるようになる。モノの見え方は状況や環境、その時のココロによって大きく変化するものである。一人でいる時に見えるもの、好きな人と一緒にいる時に見えるもの、仲間と一緒にいる時に見えるもの、全く同じモノを見たとしてもでも違って見えてくるし、そこにいるヒトたちは同じ色、同じ形、同じ角度のモノを見ているとは限らない。目に見えるものは曖昧で……たった一日違うだけでも違って見えるし、見え方、捉え方というものは感情や未来までもを大きく変化させるモノである。
お読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願い致します!




