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決意する彼

「レオンハルト様、この部屋暗くありません?」


オリバーはレオンハルトの私室のカーテンを開けた。

窓から朝日が差し込み、レオンハルトが突っ伏している机の上の酒瓶が照らされる。


レオンハルトは徐ろに顔を上げた。眼の下にはクマがあり、うつろな瞳だ。折角の美貌が台無しである。


「何処へ行ったんだ…。元気にしているのか…」


ヴィラ伯爵邸を訪れても、アデライードとして会っていた娘には2度と会えないだろう。あの夜が娘に会えた最後だったと思うと、レオンハルトに後悔が募った。ヴィラ伯爵邸で会ったとき、無理やりにでも連れて帰ればよかった。あの夜の娘の健気な姿、抱きしめたときに感じた儚さ娘の全てが愛おしく、狂おしかった。


レオンハルトは昨日から何度言ったか分からない言葉を呟き、また俯く。オリバーはそんな主人に呆れを感じる。アデライード嬢のことは忘れ、早く立ち直って仕事をこなしてもらわないといけない。


「レオンハルト様、そんなに落ち込まないでくださいよ!恐らくアデライード嬢はアデライード嬢で元気にしてますよ」

「元気に…?」

「そうです!レオンハルト様の話からするとアデライード嬢は活発な娘だったようだし、新天地でも楽しんでます!」

「楽しんで…?」

「そうです!きっとレオンハルト様のことなんか忘れて楽しんでます!だから、レオンハルト様もアデライード嬢のことを忘れて、本物の?アデライード嬢と結婚されたらいいんです!」


レオンハルトはオリバーの言葉を聞き、椅子から徐ろに立ち上がる。その眼光は鋭い。


「私が側にいなくても楽しいだと…?」


オリバーは墓穴を掘ったことを自覚した。


ワグナー公爵家の方々は基本的には穏やかで心優しい。だが、そんな彼らが豹変するときがある。それは、執着しているものを奪われそうになったときだ。彼らは何故か異様に執着心が強い。

アデライード嬢だった娘とはレオンハルトと1ヶ月も交流していない。レオンハルトは確かにアデライード嬢だった娘を気にしているようではあったが、レオンハルト自身が伯爵邸へ手紙を持参することはなく、オリバーに託していた。レオンハルトの中で執着心までは芽生えていないように思え、それならばと思い進言したのが逆効果だったようだ。


「悪いが、私は諦めない。私は既にあの娘に結婚相手に渡すピアスを渡している」

「そうなんですか?いつの間に…」


公爵家では、親から子へ出生時にピアスが渡される。

そのピアスは結婚相手に渡すという伝統がある。

レオンハルトとアデライード嬢は婚約状態であっただけで、結婚した訳ではない。それなのにピアスを既に渡した、レオンハルトのアデライードへの執着心をオリバーは実感した。


「私が結婚するのはあの娘だ。オリバー、承知しておけ」

レオンハルトは何としてでもあのアデライード嬢として会っていた娘を見つけ出すことを決心した。

お読みいただきありがとうございます。

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