後悔する娘
アデライードの私室に招き入れられたルシールは、初めてアデライードと面会する。
(花の精霊…?)
アデライードは、ただシェーズロングソファーに軽く腰掛けているだけなのに、目が奪われる。
ハニーブロンド、アメジストの瞳。
華奢な体とつぶらな瞳はまさしく美少女と言って良い。
どことなく気品を感じる。
ああ、この方がレオンハルト様の想い人なのか…。
自分と似通っている容姿のはずなのに、受ける印象が全く異なる。圧倒されて、言葉が出てこない。
アデライードはそんなルシールを気にするもなく、告げる。
「わたくしが戻ってくるまで、代役を務めてくださったとお父様から聞きました。ルシール、領地にお戻りいただいて結構です。これは報酬です。」
アデライードの言葉に従って、侍女がルシールに小袋を両手で差し出す。
受け取った小袋は、ずっしりと重い。
代役の話を了承したときは、アデライードがタウンハウスに戻るのが待ち遠しかった。
でも、今は…。
レオンハルトの顔が脳裏をよぎる。
(レオンハルト様が私に良くしてくださったのも、アデライード様と思っていたから…)
ルシールはレオンハルトへの思いを断ち切ろうとする。
「わぁ!こんなに沢山報酬をもらえるんだ!!ありがとうございます!これからはレオ…ワグナー様から逃げ出したら駄目ですよ?」
「勿論です。これからわたくしがレオンハルト様のことをしっかり支えていきます。」
アデライードが微笑む。そこには1点の曇りもない。
2人が共に人生を過ごすのは決まっていることなのに、ルシールの胸は強く痛んだ。
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