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7:ユーシャ様は、キメ技を考える!?☆

ようやく恋愛要素出てきます(^^)



******



 心優しい門番……まぁヴァンの同僚の方ですが。超少数精鋭に相応しく、ごく少数に見送られて私達は城から出発致しました。


 まだまだユーシャ様の御力がどの程度までの範囲に効果があるのかなど、わからないことも多いので、まずは最近確認されたという、薄い瘴気溜まりの場所へ行くことになりました。

 

 ここのレベルであれば、結界である程度は防ぐこともできるし、襲って来るタイプの瘴気も出て来ないだろう、とのことです。


 とはいえ、私は全くこういった現場に出たことなどあるはずもない、新人歴5年のしがないぺーぺー魔術師なので皆さんのようにドーンと構えていられるはずもありません。



「なんじゃシア、いつもの元気はどうしたのじゃ?先ほどからずっと無言ではないか」

「あ、申し訳ございません……私だけ明らかに力量不足なのに、図々しくも浄化の旅に加わってしまったなと思いまして……。せめて皆様の足手(まと)いにだけはならないようにしなければと考えておりました」


「そうなるのは仕方のないことだよ。もう後は棺桶に入るだけのご老人であれば、恐怖も感じないのだろうが、普通の人間なら初めは皆そんなものだ」

「にゃにおう!貴様、ワシを愚弄するつもりか!?」



 いや、あの……私を励まして下さったくだりからどうしてケンカになるのでしょうか!?



「おやおや…私は例を挙げただけで、ひと言もゼニール殿とは申しておりませんが。過剰に反応なさるのは、ご自覚があるからなのでは?」

「ぐぬぅぅ…!!貴様とワシだってたいして年の差もないと言うのに!」


「「えっ!?」」



 う、嘘……!?ゼニゲバ様は御年、、、あら?おいくつだったかしら?そういえば気にしたことがなかったわ。出会った頃から「お爺ちゃん」認定だったからというツケが今頃……

 

 そもそもオツカレ様は一体おいくつなの?40代前後くらいに思っていたのに違っていたのかしら。そうなるとオツカレ様がお若く見えるだけなのか、ゼニゲバ様が極端に老けていらっしゃるのか、もしくは【たいして年の差もない】の感覚がおかしいのか、よね。


(やはりラストかしら?感覚がおかしい説が一番しっくりくる気がする)



「なんじゃ、シア、ヴァンと揃って……ハッ!まさか……歳が近しいとわからなかったのか!?」


「ああはい、正直……」

「いいえ!!ゼニール様もオーツレント様も、二人とも素敵にお歳を重ねた紳士!シブメンですよ、シブメン!!ね、ヴァン?」


「え、シブ…?そうかぁ……?」

「ほら、ヴァンもこう言ってますよ!」



 ヴァン!気持ちはわかるけど『え、お前どこをどう見てコレをシブメンだと判断したわけ?』みたいに軽く指差しながら私とゼニゲバ様を交互に見ないで!!



「……否定的な意見しかヴァンは言ってないと思うがの」

「ヴァン、騎士道は礼節も重んじるものだ。シア嬢のような気遣いは大事だぞ。お前も少しは教えを乞うと良い」


「はい、団長。…というわけで、宜しくな」

「ふぇっ!?なにがどういうわけで宜しくするっていうの?」

「ワン!」

≪ナカマ!この辺って、でっかくて速く走る(自動車)やつも、人も少なくて広々してイイトコだなぁ~≫



「ほら、ユーシャ様も面倒見てやれって言ってるんじゃないのか?」

「全然言ってないわよ!」



***



 旅の途中の宿屋にて―…


 私とヴァンは今、こっそり気配を消してユーシャ様を観察していた……



 湯浴み中はユーシャ様をヴァンに見てもらっていたのだけど、私が部屋へ戻ったところ、なぜかヴァンが入り口の外側で隠れるようにしゃがみ込んでいるのが見えた。

 

 何かへの警戒かもしれないと思い、足音を立てないようにゆっくりと近付き、小声で声を掛けた



『ヴァン、一体なに…』



 私に気付いたヴァンが口元に人差し指を立てたので、私は少し緊張しながらもコクコクと頷き、すぐに黙った。ヴァンから近くへ来るよう手招きされ、ハンドサインで彼の隣に座るように促される。

 

 一体部屋の中になにが……?


 なにかユーシャ様の身に変化でもあったのか、不思議現象でも見てしまったのか……よくわからないけれど、今はヴァンの指示に従うことに。



『で?こんなところでなにをしているのよ。ユーシャ様は?』



 とりあえず小声のまま話した方がいいのかと思って、顔を近づけてギリギリ聞き取れるくらいの声量で話し掛けた。



『ああ。さっきまで一緒にいたんだけど、ユーシャ様用の水が少なくなってたから井戸に水を汲みに行ってたんだ。それで戻って来て入ろうかと思ったら、アレが見えちゃってさ……』

『アレって……?』



 少し開けたドアの隙間から部屋の中を見るよう、くいっと顎で促されたので、ヴァンと場所を入れ替わってこっそり覗き込む。




「ワン!ワン!!ウゥ……」

≪はぁっ!!でりゃぁぁぁ!!…なんか違うな≫


「グルルルルゥ……!!ガゥ……」

≪いや、おんりゃぁぁぁぁ!!だったかな≫


「ヴヴ~ワンワン!!ボフッ……」

≪やっぱ、あちょー!!ほわちゃー!!かな……≫


「ウオウオウオゥ……くぅ~ん」

≪中々アレが出ねぇなぁ~…もっと全ての足を開くとか、ジャンプするとか??≫



(もしかして、ユーシャ様がおっしゃってる【アレ】ってあの時の真空破みたいなやつのことじゃないかしら!?)



 ユーシャ様は小首を傾げながらも、部屋の隅っこの壁に向かって、恥ずかしいのか少し抑えた吠え方をして練習を繰り返していた。


 仮にここで成功されても壁を傷つけるし、最悪破壊するかもしれないとは思いつつも、あまりの可愛さにしゃがんでいなければ膝から崩れ落ちるところだったと思う。


 ポーズ作りのたしっ!たしっ!っとする足や、ふりっと揺れる尻尾そしてお尻が愛らし過ぎて、キメ技を考えているユーシャ様には大変申し訳ないのですが……可愛い過ぎる!!



『なんでプルプル震えてんだ?それより、ユーシャ様には何が見えてるんだろう。あの壁に向かってずっと吠えてるってことは、人には見えない何かが見えてるってことなんじゃないのか?』



 確かに言われてみると、言葉がわからない者が見れば、奇行に走っているか、霊的なものが見えているのかと思うのも無理はないのかもしれないけれど……と思いつつも、盛大な誤解に吹き出しそうになるのを両手で必死に抑えて堪えた。



『違うわ。ユーシャ様はこの浄化の旅に出る時に、人選を行ったじゃない?その時に偶然放った真空破のようなものを、どうやって自在に出すのだろうかと練習なさっているのよ』

『あー…そういうことだったのか。俺はてっきり…』


『もしかしてヴァンって…お化けが怖いとか?』

『は?そんなわけねーだろ。そんなんが怖くて瘴気浄化の旅に同行できるかよ』



 確かにそれもそうだよね、ちょっと軽率だったかも。瘴気も物理攻撃でどにかなるものじゃないのだから、超常現象も似たようなものと言えるのか……一人ふむふむと反省及び納得していると、隣から視線を感じた。



『……なぁに?軽率なこと言ったことなら謝るわ。ごめんなさい』

『いや、そうじゃねぇ。お前ちゃんと髪を拭いてないだろ、肩まで水滴が垂れて濡れてるじゃないか』



 ユーシャ様のお世話くらいしか自分にできることはないので、預けているとはいえ、頭も適当にしか拭かないまま急いで戻ってきた。部屋に戻ってから改めて拭おうと思っていたのだ。

 指摘された肩に触れてみれば、確かにだいぶ濡れている。



『大丈夫よ。今は暖かい季節だし、その内乾くから。貧乏人には風邪も取り憑かないわ。あとで適当に風魔法でも当てとくわよ』

『お前なぁ、その根拠のない【貧乏人は風邪引かない理論】はどうにかならないのか?いくら暖かくなったからって、こんなに滴らせていたら風邪を引くに決まってるだろ』


『そうなの?てっきり今までもそのお陰で引かないんだと思っていたのに。じゃあ気合理論の方かしら』

『お前は体力ないんだから、本当に風邪を引いたら大変だぞ?自分の体調管理をすることも立派な仕事の内なんだからな』



 ヴァンは私からタオルを取り上げ、力強い騎士職の印象からは考えられないくらい、優しく撫でるように拭いて乾かしてくれた。人に拭いてもらうのは気持ちいい。

 でも考えてみたら、普段の彼の力でゴリゴリと拭かれたら首の骨がポッキリ折れているだろう。恐らくそうならないように力加減をしているから優しく感じるだけかもしれない。



「ありがとう。兄弟同士でよく拭き合いしていたの?」

「んー?多分したことも、してもらったこともないと思うぞ。基本的に自分のことは自分で、だな」


「そうなの?優しくて丁寧だし、てっきり慣れているのかと思ったのよ」

「……拭いてやったのなんて、お前が初めてだよ」



 ヴァンは拭き終わって乱れた髪を手櫛で器用に整えてくれた。なんとなくヨシヨシと褒められているようで(くすぐ)ったい。



「ふふ。私って貴重な体験をしているのね。お陰であっという間に乾いちゃった、ヴァンって手が大きいわね」

「はは。そうだ、貴重だぞ?お前だけ、特別。それにしても、シアの頭は俺の両手に収まるくらい小さくてカワ……」


「あ、ユーシャ様!」

「え?あ、いつの間に」



 部屋からユーシャ様の声が聞こえないなと思ったら、いつの間にか目の前に尻尾をぶんぶん振ったユーシャ様がいた。途中で私達の気配に気づいたのだと思う。


 

 でもよく見ると、見ている視線の先は私ではなくヴァン……なにかあったのかしら?



「きゅ~ん、きゅん」

≪なぁんか好き好きフェロモンの気配を感じると思ったら、デンチューか。ふぅん……こいつはナカマのことが好きなんだな≫



「えぇっ!?ヴァンがス……は?…ええっ!?ありえません!!」

「なんだよ?一人で納得するなよ、俺が『ス』ってなんだ?気になるだろ」



 ほら、ほぉらね!どの辺りが好き好きフェロモンだっていうの?すんごく普通にスンとしているじゃない!ユーシャ様はきっと洗髪石鹸の匂いをフェロモンと勘違いしたのだわ、そうに違いないわよきっと!!



「知らないわよ!!ヴァンが「スン」ってしてるって言ったんじゃない?」

「なんだそれ?意味がわかんねぇ……そんなにスンってしてっかなぁ?」



 私の方が意味がわからないわよ!!って言い返したいけど、言えません!!


 私はユーシャ様を抱き上げ、ヴァンに『見ていてくれてありがとう!じゃあね、おやすみ!!』と早口で伝え部屋へ逃げるように入る。

 ヴァンは急な私の態度の変化に追いつかない様子で呆然としていたけど、恥ずかしくて近くにはいられなかった。



「ワン!」

≪メスにアピールするなら機嫌取りは大事だぞ、デンチュー!≫


「ユーシャ様!!」






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