5:ユーシャ様の、大は小を超える!?
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7話くらいから恋愛っぽさが徐々に出ますので……(><)
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ユーシャ様に促され、小走りで散歩していると、小走りしたことでユーシャ様のテンションが格段にアップされました。
ハッハッハッ「バフッ!」
≪ハッ、ハッ、ハッ!!ハァ~やっぱり走るのが一番楽しいぜ!!≫
「ユーシャ様~ちょっと、ストップ!少しだけお待ちください!」
只今より、密かに実験をしてみたいと思います。
先ほどユーシャ様が放たれた【ご聖塊】――ちなみにこちらも無臭で丸く、まるで金貨のように黄金色に輝いております――もしかしてこれにもなにか特殊な効果があるのでは?
そう思った私は周囲を確認し、そのまま土に埋めてみることにしました。
「この誰も来ない魔術師塔の通り辺りなら、迷惑も掛からないはずよね」
結果から言えば、とんでもなく大変なことになってしまいました!
なにもなかった、ただの通路に花々は咲き乱れ、実もなにもつけていなかった果樹も一気に数珠なりに実りだしました!もう辺り一帯が植物園のようです!!未開の地かなにかに迷い込んでしまいましたか!?
「おぉ~い!シア、まだこんなとこにいたのかよ。っていうか、なんだよこれ!?どっかの楽園かよ!」
本当にこちらが到着する前に、ヴァンが追い付いた。元はこんなに早かったの!?
「どうしよう、ヴァン。もはや道に迷ってしまう程、通路が生い茂ってしまったのよ……」
「ワン!ワン!」
≪おい、おい、今日はどうなんてんだぁ?うにょうにょ木が伸びたり、実をつけたり……ここは俺が住んでた場所とは全然違う場所みてーだな。なんか空気が違う、悪い臭いがたまにするんだよなぁ。もしかしてコイツか……?≫
ええっ!違いますっ!!
それよりも、さすがユーシャ様!!やはり聖犬で間違いないのでは!?すでに遠く離れた瘴気の臭いまで嗅ぎ分けているだなんて……すごいわ!
クンクンクン……「ワン、ワン!!ウワン!!」
≪くせえ臭いはこっちの方からだな……お、コイツだっ!!おい、コイツくせえぞ!!それ以上近づくな!おっさん臭ってやつだ!若い「すたっふ」がこの臭いヤバイってよく言ってたから間違いねぇ!臭いがうつるから絶対に近寄りたくないってな!≫
あんなに歩きたがっていたユーシャ様が、まさかの拒否犬ポーズ!!食い込んだムニュ顔にちょっと萌えてしまっている私がいます!!って違いますね、瘴気…いえ、おっさん臭と言いましたよね……
「え……?おっさん臭…?」
「オッサンシュウとはなんの呪いじゃ?シア」
「ぎゃーーーーー!!ゼニゲ…いえ、ゼニール様!?なぜここに?」
「なんじゃ人の顔を見て叫ぶとは、失礼な奴じゃ。むしろ、この状況はなんじゃとお主に聞きたいわい。一体なぜこんな密林のような状態になっておるのじゃ?これではより一層、誰も魔術師塔に近寄らぬではないか!人気がさらに落ちるぞい!!」
あ、気にするのはやはりそこなのですか……新人から言うのは憚られますが、もっとこうなった原因は何なのかの方に関心を強めて頂きたいものです。
「キャン!キャン!キャン!」……クンクンクン
≪だから寄るんじゃねぇ!あ、くっさ!!マジくっさー!!……ん、でも慣れるとちょっと癖になる臭いかもしれねぇな、いや臭ぇか≫
わ、わ、ちょっと落ち着かないのでユーシャ様、抱き上げますね!失礼します
「ゼニール様!もう、大発見なんですよ!大発見!ユーシャ様が、ユーシャ様の、ユーシャ様で、勇者様なんですよ!すごいですよね!!」
「全くわからんな」
「シア、それ全然説明になってないと思うぞ」
全く掻い摘まみすら出来ていない説明に呆れたヴァンが、自身のズボンの裾をまくり上げ、ゼニール様に見えるように一歩前に出た
「ゼニール様、宜しければ私の足を見て下さい。少し、湿ってはいますが」
あれ、結局そのままで来たんだ……無臭でも、もしかしたら時間が経つと臭うかもしれないわよね。私は密かに一歩、いや五歩ほど下がっておく。単に主役となるヴァンを立てる為であって、決して臭いを気にしているわけじゃない
「なんじゃ、二人して?どれ、ふぅむ…靴が濡れておるな。毎日、きちんと乾かしたまえヴァンよ」
「はぁ、すみません…いえ、そうではなくて。私の足の怪我はゼニール様はご存知でしたよね?」
「あぁ、足の怪我じゃったか。むむ、傷がないではないか??いつの間に治ったのじゃ?」
「ついさっきです」
「は?追跡?」
「追跡ってなんのですか?先ほど、です」
「……んなぁっ!まさか!!」
「そうです!ゼニール様、まさに!なんですよ!」
「くぅ……この国にワシより優れた魔術師がいるのじゃな…古傷すらも治す、その治癒のスキル…うらやまっ!」
ちょっと!うっかり、ヴァンと一緒にズコーっとコケましたよ!最近ちょっとボケ始めてないかなって心配でしたけど、そこまでボケますか!?
「違いますよ!ユーシャ様ですよ、ユーシャ様!!この密林はご聖塊で、ヴァンの足はご聖水でたちまち治ったのですよ!この曇りなき眼で見ましたから!!」
「アガーー!!なんじゃと!それを早言わんか馬鹿者!」
「言いましたよ!」
「いや、シアは言ってなかったと思うぞ」
「男が細かいこと言ってるんじゃないわよ!」
「逆にシアよ、お前はもう少し細かいこと言え。情報を端折りすぎじゃて」
「だって…いえ、あまりのエキセントリックな出来事に、アビリーがバ~ブ~と言いますか」
「アンビリーバボーのことか?それとも、アビリーと言う名の赤子の喃語か?」
「本当、うるさいわね!魔術師はね、古代語の勉強に多く時間を割いてるから、ちょっと世情に疎いのよ!」
「そんなことないぞ、シア。ワシはちゃんと毎月、情報雑誌を取り寄せ読んでおる」
「ゼニール様、さすがです!すごいですね!」
新人教育において、『さすがです!知らなかったです!すごい、素敵です!尊敬します』褒め言葉のさしすせそはとても役に立つよ、といつか後輩に教えたいと思う
「あ~あの毎月検閲の時に入る、【月刊王城スキャンダル】と【ナンプレ雑誌】はゼニール様のものでしたか。でも王城スキャンダルは王城も監修しているもので、ほとんどフィクションですよ?」
「なんじゃと!では、王城侍女のキャシーちゃんと、庭師のアルファの密会話は?次号、ついに告るのではないかとワシは予想しておったのじゃが……」
「そもそも雑誌に載る時点で密会にならないじゃないですか。あれは王城の者が暇つぶしに投稿した物語ですよ。確か、小さく注意書きがあったと思いますが」
「くっ、結局スキャンダルなどと言っても、全ては紛い物でしかないのか……ワシの好奇心とトキメキを返して欲しいわい」
「ゼニール様、きっとどこかに真実も混ざってますって!」
嘘もつき通せば誠となるって先輩方がよくおっしゃってましたよ!
「いや、だからフィクションって…」
「ゼニール様は老い先短いんだから夢くらい見せてやりなさいよ!!」
「おい、シアよ。ワシはそこまで老けてはおらんつもりじゃぞ?気持ちは中ニじゃ」
「なんですか、チュウニって??」
「ふふん、これは古代語を解読できる私達 魔術師の特権なのよ!ですよね?ゼニール様!」
「そうじゃ。古代では、夢やカッコいいを追い求め続ける者のことを【中ニ】と呼んだそうじゃ。それに取り憑かれた者を中二病と呼んだらしいが。フフ、『夢追い人の中二魔術師』とはワシのことよ……」
「よっ!ゼニール様のドヤり顔は魔術師塔イチ!!」
「範囲が狭いな」
結局、半分以上がしょうもない話しかしていないけれど、無事、ユーシャ様が勇者様で間違いないと認定を受けることができました。
「ゼニール様、あとは騎士団のみなさんとユーシャ様で瘴気を払ってもらって、ハッピーエンドめでたしってやつですよね?これにて完結です!」
「なにを寝ぼけたことを言っておるんじゃ、シアは通訳をせねばならんのじゃから、同行するに決まっておろうが」
「え!?」
私、ただの新人なんですけど!?
一方通行の疎通スキルをバレないように、どうやって旅をすればいいんですかぁーーー!!
「ワン!」
≪腹減った!≫