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番外編:ユーシャ様の、お見合い大作戦!



******



 本日ついに、王城の庭園にてユーシャ様のお見合い会は開かれることとなりました。


 そして、ついに陛下や殿下もご挨拶に来られるのでは?と思っていたのですが、まさかの強い犬アレルギーをお持ちだそうで……。一匹程度でしたら結界で覆うなどして対応できますが、本日は屋外、風も無風ではありませんし、桁が違います。



 今回は通訳で呼ばれる覚悟はしていました。正装を身に着けろ=お金が掛かる、なんてことがあったらどうしようと心配していましたので、城から()()()お借りした衣装で済み、ありがたいと思っています。


 ただ、防汚魔法を施してあるとはいえ、借り物を汚したらどうしようかと今から震えてますが……



 当初は全くユーシャ様の存在自体の認知度はなく、もやもやとした日々を過ごしておりましたが、浄化後の陛下や殿下の病状回復と共に、すぐに新聞などで徐々に知れ渡ることとなりました。

 今や、ユーシャ様も王都に来ると一躍()()()です。


 あ、私は相変わらず黒っぽい魔術師ローブを被っているので黒子に徹しておりますよ!マネージャー兼SPとして、薄い存在感をフルに活用し、ローブにユーシャ様を抱き込んで隠しながらここまでやってきました。



「ユーシャ様、久しぶりの王城ですよ」

「くぅ…ん」

《なんか、ここ人間が多くないか?怖い……オレ、家に帰りたい……》



「帰りたい家」が我が家なことはかなり嬉しいものの、今日はお見合いです。ユーシャ様にもきっと良い出会いがあるはずですので、背中をさすり励ましました。うっとりとして気持ちいいようです。



 とりあえず始まる直前まで私が抱き続けたことで、ユーシャ様も落ち着きを取り戻しました。



「おいシア、そろそろだって。大丈夫そうか?」

「わかったわ。さぁ、ユーシャ様お見合いが始まりますよ」



 庭園に入ると、ケンカなどしないようにおおよそで距離を離してはいるけれど、皆さん、ほぼ一ヶ所に固まっていました。

 少しだけオシャレに蝶ネクタイをつけたユーシャ様。この蝶ネクタイ一つで、私の全身コーディネート3着分のお値段と聞き、倒れそうになりましたがユーシャ様に相応しい装いですよね。



「ユーシャ様……可愛いレディたちがお待ちですよ」

「クンクンクン……!!!?」

≪ナカマと前に来たことある場所だよな。ん?……ええっ!?メスがいっぱいいる!!!≫



 ユーシャ様がレディたちに気付き、自ら挨拶に走り出しました!そしてここからが私の一番重要な任務が始まります!



「じゃあ、ヴァン。私頑張ってくるね!」

「ああ。でも張り切り過ぎて魔力不足にならないようにな」



 むん!と両手に力を込めて、護衛も兼ねて一緒に来ていたヴァンに伝えると、フッと目を細めて私の頬をスリッと撫でた。一瞬何が起きたのか理解するまでに数秒を要したけど、気付いたらぽぽぽっと一気に顔が熱くなるのを感じた。え、なんで?なんで今なの!?


 以前は何を考えているのか読み辛かったけど、今度は別の意味でどんな行動を起こすのか、はたまた言ってくるのか、全く読めなくて困るし、心臓に悪い



「ちょっと!他の人もいるのに、何してるのよ!」

「ごめん、なんか気合入れてるシアが可愛くて、つい。でも毎日触れているのに、まだ照れるのか?すぐに顔を赤くするの、可愛い」



 あの、スーンと真顔がデフォだった人と中身が同じとは本当に未だに信じられないのだけど、今日のヴァンは特別に騎士服の正装を着用している為、普段と全然違うから調子が狂う。

 初めて見る姿に自分の夫なのに別人のようで直視できない。でも自分ばっかりドキドキしているようでなんとなく面白くない!そう思ってヴァンを横目でキッと睨んだ。



「そう睨むなって。初めて着飾っている姿を見て、俺もちょっと気持ちが高揚してんだよ。こんなに可愛いシアと結婚できた俺は幸せ者だなぁってさ」

「ねぇ、ホントにあなたヴァンなの?」



 絶対なにか悪いものでも食べたか、何かに乗っ取られたかじゃない?よく考えたら私の夫はこんなにキラキラしていないはずだから、他人の空似に違いない。うん、そうだわ。


『お前、自分の夫に酷くないか?』と返された言葉の方が、むしろ普段っぽくてしっくりとくる。



 ハッ!もうユーシャ様が次々に挨拶しているじゃないの!!こんな夫婦の茶番は後にして、今はユーシャ様よ!


 ユーシャ様の言葉や気持ちを聞くことも大事だけれど、レディたちのユーシャ様に対する印象も大切よね。相性が悪そうなレディにはコソっとはけてもらう算段になっていて、どこの家門のレディなのかはわからないように、飼い主はこのお見合い会場には入れないようになっている。

 

 権力を持ち出されたら意味がないからだ。

 

 ユーシャ様に選ぶ権利があるからだとは言われているけれど、私はできれば相思相愛となって欲しいと思っているので、今日は声を聞いて聞いて聞きまくりますよ!


 すでに何匹かユーシャ様に興味がない子達がいたので、その子達はお見合いから除外する。そしてユーシャ様自身がニオイの相性が良くないと感じた子も除外。

 

 30匹ほどいたお嫁さん候補ですが、人間とは違い思った以上に進みが早いです。

 


***



 そしてついに最後の1匹となりました。西の国から渡って来たとされるマルチーズという白く毛足の長いレディ。

 

 ユーシャ様の様子からこの子では?と思い、聞き耳モードに入りました。良い雰囲気でしたので、木陰から見守っております!



「きゅーん……きゅーん……」

≪リリィはあそこにいるアイツ……ナカマのことは嫌じゃないか?オレの番になるならナカマとその番のデンチューとも一緒に暮らすことになる。リリィの匂いすごく好きだ。でも、オレはナカマ達も大事だから懐けないなら番になるのは諦める≫



(覗いてるのが即バレてしまいました!?それにまさか、お嫁に迎えるのは私とヴァンも判断材料だったのですか?)



「きゅーん……くぅん」

≪ユーシャ様が大切に思う(人間)なのでしたら、きっとお優しい方なのでしょう?わたくしは構いません。ナカマ様、デンチュー様ともうまくやれますわ。そして、ユーシャ様の御力を引き継ぐ次代をきっと産んでみせます≫



(こちらは、まさかの嫁と姑舅のような扱いになってる!?そして結婚もなぜか貴族っぽい!)



「ワン!ワン、ワン!!」

≪ヤッター!!ナカマ、オレの嫁を見つけたぞ!!散歩中に嫁が見つかるなんてすごい偶然だ!≫

「わんっ!」

≪ナカマ様、リリィと申します。どうぞ呼び捨てでお呼びくださいませ。不束者ですが、末永く宜しくお願い致します。犬種は違いますが、わたくし達きっと相性が良いと思いますの≫


「ワオン!」

≪リリィ、人間には言っても通じねぇぞ?でも、大切なナカマに挨拶してくれてありがとな≫


「きゅーん」

≪言葉は通じなくとも、想いは通じるものと思いますわ。わたくしの飼い主様も理解しようとして下さいましたもの。少し理解の偏りはありましたけれど≫



(じょ、上品。お貴族様のレディは流石だわ……。むしろ私の方が不束者なのでは?お座りの所作すら美しい)



 しかし、まずは一回目でユーシャ様と相思相愛の尽くす系レディをお嫁さんに迎えることができました!素晴らしいことですよね。

 そういえば、このレディはどこの家門ご出身なのかしら?預かっている資料と一匹一匹に取り付けられていたエントリーナンバーからどこの家門かを確認してみました。



「リリィさんは……17番。え、、、っと。カレミナス伯爵家のレディね……え?カレミナス!?」

「ん?カレミナス伯爵……って団長じゃないか!?」


「いやぁ、我が家のリリィと縁を結ぶことになるなんて、さすがはユーシャ様、お目が高いですね」



 どこからともなく飼い主であるオーツレント様が現れました。一体どこに潜んでいたのでしょうか?怖すぎます。



「団長!?あの子は団長の……?」

「うむ。リリィだけではないけどね。ペットとしての癒しもあるが、私は訓練が得意で――」


 聞けばオーツレント様は大変な愛犬家で、お屋敷には大型犬も含め5匹もまだいらっしゃるとか。


 全匹もれなくオーツレント様が直々に訓練し、ペット兼SP犬として育て上げている。一見、優雅な貴婦人にしか見えないリリィちゃんの見た目の愛らしさとは裏腹に、SP犬としても優秀だという。

 

 やはり私の方が不束者ですよね……?



***



 こうして素晴らしく良くできたリリィちゃんをお嫁さんに迎え、半年もしない内に妊娠・出産。


 元気一杯の真っ白い二匹のオスが生まれました!生まれた子達はミックスとは言えあまり違和感はなく、とにかく子犬は可愛いです!生まれたての頃は、手の平に乗るくらい小さくて、ビックリしました。


 そしてスクスクと育ち、リリィちゃんの教育と自衛できるようにとオツカレ様が訓練を施して下さったお陰で……



「ワン!」

≪母上、本日もお屋敷周辺、ナカマ様の周辺にも敵と見られる者は確認されませんでした!≫

「ぼふっ!」

≪ご苦労様、それは何よりだわ、引き続き警戒は怠らないようにね、ユーリ≫


「ウワン!ワン、ワン!」

守護ポイント()付近でイノシシを発見、デンチュー様と捕獲しました!≫

「きゅーん」

≪素晴らしいわ、リーシャ。今夜はご馳走ね≫




「ワン!ワン!ウワン!」

≪お前達ご苦労だったな。小さいと思っていたお前達も間もなく成犬だ。成犬のオスはメスを守れなければならないが、お前たちは辛い訓練にも耐えた猛者と言ってもいい≫


「わおーん!」

≪成犬を過ぎたら、守護ポイント(ニつの祠)の警備・守護犬として誉高い任務が待っています。慢心することなく、あなた達のお父様から受け継いだ【オレTUEEE!!】の精度を高め、悪を処するのですよ≫


「ボフッ!」

≪頑張るんだぞ!≫


「「ワオーン!!」」

≪イエス、サー!!≫



 あんなにもホワホワとして、小さくよちよち歩いていた子犬たちは、今や無駄な贅肉のない小型犬とは思えないほど引き締まったSPと化しています。ちょっとオツカレ様の訓練はハードなのでは?

 

 それに元々子犬の頃から「任務」や「守護するもの」を意識して育てられたエリートSPのリリィちゃんの教育のせいか、通じていないはずなのにきっちり仕事を理解して子供にも教育している辺りがプロですよね。


 ユーシャ様を立てるところは立ててますし……私も見習わないといけません。



 リリィちゃんが宣言していた通り、残りのニつの祠の守護は徐々に子供達がメインとなり、親である二匹は私達の住む場所にある祠の警護をしてくれている。もちろん、抜き打ちで二匹の元へ訪問もしていました。




***



 晩年、すっかり浄化犬として定着していたユーシャ様や子孫たち。国からも彼らの功績を讃え石造が建てられた。それは二匹の子犬がモデルだったり、ユーシャ様とリリィちゃんだったり。


 愛らしい石像はそこで暮らす人々に親しまれ、いつの間にか【コマイヌ様】と呼ばれ、百年以上経った今でも祠を見守っている。





<Fin>


 

これにて完結です!最後までお付き合い頂いた方々に感謝します

お読みいただきありがとうございました。反省する部分は次作に生かし、また頑張りたいと思います

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― 新着の感想 ―
[一言] すっかりユーシャ様のとりこになってしまいました。お話とてもおもしろかったです。
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