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番外編:シアさんの、結婚後に始まる恋もある!?☆☆



******



 ヴァンと結婚してから更に一年が経った。その頃にはすっかり祠の瘴気も収まり、祠とその周辺も含めての浄化も無事完了していた。


 ユーシャ様のお陰で、苦戦を強いられることはなかったものの、浄化にかかった時間はやはり一番大きな瘴気個所だっただけあり、おおよそ2年近くを費やしていた。


 ヴァンも小さいとはいえ、毎日のように山を駆け下り、駆け登る訓練で足腰を鍛えたり、王都へ行った際に訓練の空き時間を利用して元同僚と打ち込みや対人戦の訓練を続けていた。

 そのままスムーズに戻れたら良かったのだけど、『きちんと実力を認められて入団したい』と本人が希望するので、今度一から入団試験を受け直すそうだ。



 私とヴァンの新婚生活は相変わらず順調そのもの。元々ヴァンも寮生活をしていたし、実家が商いをしているのでみんなで分担しながら生活していたそうだ。

 助け合いが当たり前の家庭だったこともあって、何でも協力的です。


 私が風邪を引いた時だって、全ての家事をこなしながら看病までしてくれて……嬉しい反面、ちょっと凹んでしまいました。


 でも、ヴァンは本当に私をよく理解している、と思う。落ち込んでいることにはきっと気付いていたんだろうけど、そこには触れず『おかずを考えるって難しいなぁ。毎日違う献立を考えるシアはすごいよ。治ったらシアの特製贅沢スープが飲みたいなぁ』と言って、さりげなく私の料理の方が美味しいとフォローしてくれます。


 ちなみに【特製贅沢スープ】とは、ヴァンが畑を荒らす害獣を仕留めた時に出す、トロトロになるまで煮たお肉と畑の野菜をたっぷりと入れた、サラサラタイプのビーフシチュー……()()()のことです。


 プロポーズを受け入れたのは、なんていうか……ヴァンとの結婚生活が容易に浮かんだし、それがしっくりきたから。けれど恋心を自覚した瞬間に即プロポース&即結婚したところがあるので、恋愛→結婚ではなく、結婚→恋愛が始まっているような感覚です。


 こうして日々、優しい夫に感謝し、日々、目の前の私の夫は素敵だなと惚れ直しています。



「ふふっ」

「うん?どうしたシア。急に俺の顔見て、笑い出したりなんかしてさ。顔になにかついてるのか?」


「ううん。私の旦那様は格好良いし、頼りになるし、家事にも協力的だし、あと思いやりも…」

「ぶっ!!ごほっ、げほっ……」


「え、やだ!器官に入っちゃったの?」

「ちょ、ちょ、ストップ!ストップ!シアさん、急にデレるのやめてもらえませんか?」


「え、デレるって?ヴァンって照れるとなぜか「さん」付けになるわよね。私変なこと言った?」

「お前、結婚してから唐突に俺を褒め出すようになってないか?俺は結婚前とそんなに変わってないと思うんだけど。俺に気を遣ってるとかじゃないよな?」



 えぇ!?ヴァンって自分では全然自覚してないのね。結婚前と結婚後では全然違うのに。どちらかと言えば、結婚後は結婚前より冷たくなったとか、顎で使われるみたいな話を聞くけど?

 市場へお遣いに出掛けた時におば様たちがそう話してるのを聞いていたから、結婚ってそういうものなのねと思っていた。


 それなのに、ヴァンはそんな夫像とは全然かけ離れているんだもの。私の方がむしろ「どうしてこんなに優しいの?」って思ったわよ。


『お前が好きで、大切だからだけど?』って当たり前のように返された時なんてどれほど驚いたことか……姿はヴァンだけど、中身別人なんじゃないかって一時期本気で疑ったものだわ。


 つくづく貴族籍に入って、お貴族様へ嫁ぐことにならなくて良かったと思う。そもそもうまくやれるとは到底思えないし、貴族ならではの面倒なしきたりとか、無駄にお金のかかる実用性のないドレスの購入とか、無駄にお金のかかる食べきれない料理とか……私の嫌いな「無駄・お金が(すごく)かかる」が入っている時点で無理よね。



「変なヴァンね。自分は散々私を褒めそやす癖に、私が褒めたら駄目なの?毎日、ヴァンには感謝しているし、結婚して良かったなって思っているのに」

「……マジか。もしかして俺って思ったよりもシアに愛されてる?」


「どういうこと?そりゃあ、結婚当初は好感を持っているって感じだったかもしれないけど、私だってこれだけヴァンに大切にしてもらっていたら、大切に思うし、大好きだなって思うわよ」

「うぐぅ……!!シアさんが、シアさんが俺を!?」


「そうよ、ヴァンが好き」

「ストップ!一気に聞くと身が持たない……。今更ではあるんだけど、やっぱり勢いで結婚させてしまったのはズルかったかなって、ずっと引っ掛かっててさ」



 一応、自分でも勢いでプロポーズしちゃったっていう自覚はあるのね。いくら私が世間知らずでも、許嫁とか婚約でもしていない限り、いきなり恋人関係を飛ばして結婚ってならないことくらいはわかる。



「そうね。勢いは確かにあったけど。でも、お貴族様じゃないのよ?嫌いな人とは結婚なんてしないわ」

「あの時はずっと片想いだったシアから、ちょっとでも自分に好意を抱いてもらったってわかっただけで舞い上がっちゃってさ。今しかチャンスがない!みたいに思ったところがあるんだ」


「もしかしてヴァン、結婚を後悔して…」

「してないっ!!するわけないだろ!毎日シアにも伝えている通り、俺はお前を愛しているし、幸せ一杯だ。ただ、俺の予想よりも早くお前が俺を見てくれるようになったから……」


「……なによ、それ。ちなみにヴァンはどれくらいを予想していたの?」

「……最低5年かな」



 え……?嘘でしょう!?どれだけ気が長いのよ!ヴァンって忍耐強さが昔からあるとは思っていたけど、だからって……しかも「最低」って言ったわよね?それ以上も覚悟していたってこと?



「私も今更だけど、私のどこがそんなにいいの?たいした特技もないのに。唯一褒めてもらったことがある顔かしら?」

「顔じゃ…!顔は関係ないとは言わないけど、一番はお前の生きる強さ・逞しさかな。実際俺はそれに救われた人間だ。足が不自由になる前から多分好きだったけど、不自由になってからの方がもっと好きになった」


「でも、平民なのに第ニ騎士団に属していたのよ?結構モテていたんじゃないの?」

「うー…ん、それもまぁ否定はしない。でもあれって俺が同じ平民だから手が届き易いってのもあったと思う。実際、退いてからはパタッと来なくなったからな、そんなもんだ。全く変わらなかったのはお前くらいだったし」



 へぇ。でも第二にいた頃はやっぱりモテてたんだ……へぇ~~~。中にはきっとカワイイ子の一人や二人?もっとかしら、いたんでしょうねぇ。モテて嫌な気はしないわよね。何人かとは付き合ったりしたことくらいあるんじゃない?あの頃はもっと若かったのだし。



「………ふぅん」

「ふぅんって……。あの、シアさん?もしかしてなんだけど、嫉妬?なぁんて……」



 ヴァンをジト目で見た後、黙って立ち上がった。嫉妬?確かにそうよ。でもそれを本人に指摘されて『はい。嫉妬です』なんて今は言いたくない。なんかムカつく!



「………私、ユーシャ様連れて畑行ってくる!」



 実家もない私が出て行っても、行けるのは家の隣にある庭の畑くらいだけど、心を落ち着けるのならそこしか思いつかない。



「え?ホントに嫉妬だったのか?かわっ……!いや、ごめん!シアごめんって!俺はシア一筋だから!!」



***



「はい、ヴァン濡れ手拭い……あと、ごめんなさい」

「イテテ……いや、俺こそ無駄に怒らせてごめん」



 先程あまりにも「嫉妬、嫉妬」と確認してくるものだから、恥ずかしくなって……つい平手打ちしてしまいました。ヴァンの顔には私の手形がハッキリと型抜いたようにうつっています。さすがにやりすぎました、ごめんなさい。



「そ、そういえば、顔を全く見せなくなっていた陛下とか王太子殿下を最近城内で見掛けるようになったと話題になってるみたいね」


「ああ。今までゼニール様やオーツレント団長しか謁見してこなかったのは、何も俺たちが平民出だからではないっぽいよな」

「え、そうなの?もしかして王家に連なる方々は瘴気の影響を受けていたとか……?」


「秘匿しなければならないんだけど、俺たちはその瘴気浄化に関わった関係者として教えてもらったんだ。さすがに国のトップが全員動けないなんて言えやしないよな」

「見送りが門番しかいなかったり、豆粒サイズにしかお姿が見えなかったのはそのせいだったのね。それなら納得だわ」


「それで、ユーシャ様にもぜひ褒賞をってことで、今度ユーシャ様のお見合いパーティを開くらしいぞ」

「え!?それ本当!良かったぁ、ユーシャ様のお嫁さん探ししてあげたいってずっと思っていたから」



 本当ならユーシャ様にお嫁さんを迎え終わってから結婚すべきだったのにってずっと気掛かりではあったけど、さすがに私の一存で勝手にお嫁さんを決められない。



「ユーシャ様にも良いお嫁さんが見つかるといいよなぁ」

「そうよね。ユーシャ様にも私のように良い人に恵まれて幸せになって欲しいもの」



「うっ!ハートにトスって刺さった!シアさん、俺死んじゃうからもう勘弁して!」

「……もう、いい加減にして!!」








シアさんもなんだかんだ惚気ている

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