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24/29

24:ユーシャ様の、ご機嫌UPは浄化能力もUP!?

ブクマ登録ありがとうございます!



******



「よし、ここで一度ユーシャ様の散歩休憩にしようか」

「そうじゃな、ワシも少し足を動かしたいわい」


「ユーシャ様、お待ちかねのお散歩ですよ!」

「ワン!ワン、ワン!!」

≪散歩!?今、散歩って言ったか!?やっほーい!!≫



 張り切ったユーシャ様は、降りた途端に走り出してしまったので、私もなるべくユーシャ様のご意向に沿うように、いつもより少し早めに歩きました。



「じゃあ、散歩には自分が護衛につきます」

「ああ、頼んだ」





 まだ一ヶ所残っているとはいえ、二ヶ所の祠の浄化を終えたせいなのか、風は心地よく空気もどこか澄んでいるように感じる。瘴気がない世界とは本来こういうものだったのかな。


 昨日は一日で全ての買い物を済ませなければならなかったというのもあって、朝から行動していたけど、「疲れた」というよりは、「楽しかったなぁ」という思いが、先ほどから浮かんでは消え、また浮かんでは消えを繰り返していた。



「私、どうしちゃったのかしら……」

「ワン!」

≪ここもスゲー広いじゃねぇか!!テンション上がるなぁ~≫



 なんだかんだ言って自分のお金でなくとも、一度に沢山買ったりするのは気分が高揚するものだ。しかしながら、そんな経験は頼まれもの以外でほぼしたことがない。

 だからなんとなく贅沢体験を間接的にした気になって、それが【楽しかった】という記憶になってしまったのだろうと結論づけた。



「ふふ。でも一人じゃなくて、ヴァンがいたから余計に楽しかったのかもしれないわね」

「ん?今、俺のこと呼んだ?」

「ワン、ワン!」

≪お、デンチュー!お前も一緒に走りたくなったのか?まぁ、勝つのはオレだけどな≫



「きゃあ!!急に背後に来ないでよ!びっくりするじゃない」

「お、おう…ごめん。俺の名前が聞こえたから、何かあったのかなって思ってさ」


「あ、うん。昨日はすごく楽しかったなって」

「そ、そっか……そうだな。俺も…すごく楽しかったよ」

「キャン、キャン!!」

≪おい、デンチュー紐を持てよ!競争しようぜ!!≫



「今までおつかいは大体一人で行っていたんだけど、考えてみたら誰かとあんなに長時間()()()()に出たのって初めてだって思って」

「あー…そう、()()()()な、うん。俺もそれは初めてかもしれない」

「くぅ~ん」

≪なぁんだ、走りに来たんじゃねぇのかよ。なんかデンチュー凹んでないか?エサが足りなかったのか……お前大型だからなぁ≫



 ヴァンのエサ?今朝もいつものようにたくさん食べていたわよね?よくわからないけど、目に見えてしょんぼり気味に見えるヴァンは、『おつかいか……』ともう一度呟き、また後方へ下がって行った。

 

 昨日は荷物もほとんどヴァンが持ってくれていたから、疲れが残ってしまったのかしら?オツカレ様とゼニゲバ様も肩をポンポンと叩きながら何かおっしゃってるし、きっと労ってもらっているのね。



 今回ゼニール様、オーツレント様、ユーシャ様で国王陛下へ報告にあがった際、労いと魔術師塔への特別褒賞(ボーナス)を頂いたそうです。


 これで少しは日陰暮らしもマシになるといいですよね!先輩方の喜ぶ顔が目に浮かびます。

 

 しかし凱旋パレードの類は、未だ瘴気に侵されている土地がある以上は、全てを鎮静化させるまで待った方が良いのではないかと、貴族議員の方々から意見が上がった為に行わなかったとか。それには確かに同意です


 前回とは違い門番のみの見送りではないですが、その日業務についていない者達と、目視ではよくわからなかったのですが、かなり離れたところから陛下が見送って下さっているとざっくり言われたので、とりあえずそちら方面に頭を下げておきました。違っていたらすみません。


 考えてみたら目の前に来られても、間違いなくガチガチに緊張してしまうと思いますので、これで良かったのかもしれません。



*** 



 王都を出発して、ニ週間。どうしても途中休憩や、ユーシャ様の散歩などを挟むので、進み具合は少しゆっくりとなってしまいます。

 次の街では馬も交代させる予定です、さすがに馬もだいぶ疲れているように見えます。



「ここが立ち寄れる最後の街になりそうだ。小さな集落の者達はすでに集落を捨て、避難しているからな」

「団長、ここからあと二日ほど進んだところから瘴気が広がっているのですよね?範囲が広いとなると、一ヶ所目のように祠に直接行くことはできないでしょうから、手前から浄化しつつ進むのですか?」



 一ヶ所目は結界を張った状態でも進める程の規模、二ヶ所目は斑状に瘴気があったお陰でそれらを避けたり、小さなものは浄化をしながら祠に向かったのだ。


 だけど最後の祠はそれ自体は小さいとは言え、集落を三つ分くらい覆う程の大きさらしい。さすがに全員の結界を維持したままはゼニゲバ様にも難しいですし、万が一途中で解けてしまったら……考えるだけでも恐ろしいです。

 

 本当はユーシャ様に結界も張って頂ければ一番なのでしょうけど、魔力消費量などがイマイチわからない以上は、浄化のみに専念して頂く必要があります。

 そもそもユーシャ様の結界は<守る!>といったユーシャ様のご意思次第なところがあるのは全員わかっているので、やってくれといってやれるものでもありません。



「二ヶ所目のように高所から瘴気のエリアを確認できれば良いのじゃが……その祠が高所にあるというのが難点なんじゃよ」

「高所に祠があるせいで参拝者もあまり来なくなって、そのまま廃れてしまったのだろう」


「瘴気が高所から下に降りて行きやすいせいで、範囲も広がったのでしょうか?」

「う~ん…どうだろうね。可能性はゼロではないだろうが」

「高所だとどうしてもお年寄りや幼い子供には参拝は難しいですし……浄化して落ち着いたら皆に認知してもらいやすい場所に移設というのも検討した方が良さそうですよね」



 最後の街ということで、ここでも補充の買い出しと休息を兼ねて三日ほど滞在したけれど、街の人達の表情は常に不安を抱えているような、覇気のない表情で、王都でのように楽しく買い物できる雰囲気ではなかった。


 (きっとユーシャ様の御力ならすぐに浄化できるわ!)


 ここでわざわざ「私達浄化してきます!」なんてことは言わない。万が一できなかった時の落胆が大きくなるからだ。私達はあくまでも<瘴気の調査>という名目で来ている(てい)となっている。



***



「手前側はやはりまだ瘴気の濃度は薄そうですね。ユーシャ様ですら、大きく唸りませんし」

「そうじゃな、もう少し進んだ先で、ユーシャ様のご聖塊を埋めるとするかの」

「ワン、ワン!!」

≪まぁた、くせぇところか……せっかく動くやつから降りたのに、全然テンションが上がらねぇな~≫



 ゼニゲバ様に結界を張ってもらい、安全に張ったまま進める範囲、又はユーシャ様が唸り出す辺りでご聖塊を埋めることにした。


 どういうわけか、初めの頃よりもユーシャ様の御力が上がっているようで、埋めた途端に浄化される範囲は初期の頃の比ではなくなっていた。


 それに道中、ご聖水も振り撒かれるので、色の悪い雑草程度しか生えていない場所がたちまち美しい花を咲かせるようになったのだ。それを見てご機嫌に走り回り、またご聖水を撒くと、更に広範囲に花畑が……これって、ユーシャ様の御機嫌度で変わるということでは!?



「シア、これってユーシャ様の御気持ち次第で浄化の範囲も格段に上がるんじゃないか?」

「ヴァンもそう思うわよね!?ゼニール様、私もそう思うのですが如何でしょうか?」

「ふむ、そう見ても間違いなさそうじゃな」

「瘴気の方も人々の嘆きを糧にしているんだ、その逆の浄化は喜びを力に変えていてもおかしくはないのかもしれないな」


「ユーシャ様、本当にスゴイです!!」

「キャン、キャン!!」

≪え!?今、ナカマがスゴイって言わなかったか?オレなんか良い事したっけ?まぁいいや~イエーイ!≫



 ユーシャ様は「スゴイ!」という言葉に、殊の外 喜ばれることはわかっているのですが、尻尾が振り切れそうな程にブンブン振っているお姿は、本当に可愛いくて抱き締めたくなります。


 私達は<ユーシャ様、ご機嫌浄化大作戦>で、予定よりもかなり早く、そして楽に、最後の祠まで辿り着くことができたのだった。


「この分なら、あと数日でこの浄化の旅も終わりそうですね!」

「そうじゃな、何もかもユーシャ様のお陰じゃ」


「今思うと、最初の人型の瘴気と対峙した時の方が余程苦労した気すらしますね。訓練は多少しているとはいえ、大分腕がなまっているかもしれません」

「確かに瘴気方面に盗賊なんかも出ないので、全く戦うことがなかったですね」

「バフッ!」

≪デカいデンチュー、お前ジャーキー持ってねぇか?≫



 ユーシャ様の圧倒的な御力を前に、私達はあと数日後には浄化も終わるだろうと、この時は気楽に考えていた。



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