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21/29

21:ユーシャ様、夜の見張りは任せて下さい!!☆☆

◆◆◆~◆◆◆はオーツレント視点


ブクマ登録ありがとうございます!!(嬉泣)



******



 目は合わせたままで少しの沈黙、おそらく時間にすれば1分もなかったはずだけど、体感ではそれが何時間にも感じられて、とても気まずい



「ヴァン、私……」

「ごめん!今日はお前を困らせたり、怒らせてばっかりだな。今はただ、俺はお前の味方だってことを覚えておいてくれたらいいよ」


「うん………わかった」

「よし、この話はこれでおしまいな?それよりさ―…」



 その後は、本当にただ他愛もない話をして、揶揄われては怒ったりと、いつものヴァンにすっかり戻っていた。

 良かったとホッとする半面、とても気まずかったにも関わらず、いつもと違っていた彼の表情が頭から離れないでいた。



◆◆◆



 一方、建前はうら若き乙女と、年頃の男性を二人きりにして万が一があってはならないから。という名目の元、がっつり聞き耳を立てていたイケオジとお爺さんは、思う。


  (ヴァン、どうにかやり過ごしたな)



『防音は張っていますか?』

『もちろんじゃ、その辺りは抜かりないわい』



『ふぁあ~…年寄りは眠くなるのが早くて敵わんわい』と三文芝居のような欠伸の演技までして早々に寝床についた隣の老人は、夜行性の動物かの如くバッチリ起きている。


 掛布を(まと)い、ローブのフードを被ったその寝姿は、擬態でシュっと細くなったフクロウのようで不気味である。ちなみに「ホーホー」ではなく「ふぉ、ふぉ」と鳴く。



「ゼニール殿はシア嬢を『仕方なく褒めている』わけではないのでしょう?少なくとも私はそう思っておりましたが」

「当たり前じゃ。魔術師長の立場にあって、仕方なく新人を褒めるなんてあるわけがなかろうに」



 それはそうだ。立場の違いから仕方なく褒め称えることは確かにあるが、上の者が下の者に仕方なく褒めるなんて、そうあるわけがない



「しかし、シア嬢は特に孤児院で虐げられていたとか、そういったことはなかったのでしょう?「期待」というのは無駄なことだと、なぜあんなにも頑ななのです?」

「孤児院では虐げられてはいなかったが、我慢しなければならない状況は多くあったようじゃ。引き取った頃にポツリと話してくれた時期があったの」


「我慢?そんなに上の層でしたか?」

「いや、年齢層が中間にあったシアは、おもちゃは下の子に譲り、寄付された服は年長者が着ていたお下がりで中古の中古を繕って着ておったらしい」


「そういう方針の施設だったとか?」

「そうではない。施設に入ったのは7歳近くの頃での。あそこは赤子の頃から施設におる者が多くて、シアは中々馴染めていなかったのじゃ。そのせいで我慢や顔色を伺うのが癖になってしまったんじゃろうな」


 なるほど、自分は亡くなったとは言え、親の愛を知っている状態で施設に入った。親の愛情を知らないままの子供たちを目の当たりにして、『自分は思い出があるだけ十分恵まれているんだ。これ以上を求めてはいけない』と素直な子供ならではというか、変な偏った解釈になってしまったというとことか


 一種の自己洗脳みたいなものだろうか……?ヴァンはこれを解きつつも自分を意識させるのか。中々手強いが以前のようにたまに会う仲ではなく、今は毎日一緒に過ごしている。可能性は低くはないだろう。

 思っていた以上にヴァンはシア嬢に惚れ込んでいるようだ。


 気立ては良く、働き者で、明るく、そして実は隠れ美人の類ではある。ただ元からなのか、栄養事情からなのかは分からないが、小柄なのも相まって少し年齢よりも幼く見える分、可愛らしい印象の方が勝るが。


 しっかりと手入れがされ、標準体型になれば、通りすがる男が振り向くほどの女性になるだろうし、孤児院の出であっても現状は魔術師長が身元預かりである以上、婚姻も本人が思う程さして不自由しないと思うのだが……その当の本人が全く気付いていない



「それにしても、ゼニール殿が施設から子供を引き取ったのはシア嬢だけですよね?亡くなったご子息の代わりに養子をとるのなら理解できますが、なぜ彼女を引き取ったのです?」

「……そりゃあ、魔力が高かったからじゃ。あと、スキルも珍しいものであったしの。実際この通り、大いに役に立っておるじゃろ?ワシの先見の明じゃな、ふぉっふぉっふぉっ」


「魔力が高いという理由だけであれば、これまでだっていたでしょう?確かにあの特殊スキルには大いに助けられていますが。本当に未来を予測していない限り、あのスキルに目をつける者はいないと思いますがね」

「なんじゃ、ワシの天賦(てんぶ)の才を疑っておるのか?おお……そう言えば、団長殿は貴族ながらに叩き上げで登り詰めたお方でしたなぁ。天才を前にしたからと、ひがむでないわ」


「……まぁ、これはただの私の好奇心ですから、おっしゃりたくないのであれば別に構いませんが。それから、天才だからとそれに甘んじてばかりいては、いずれ下の者に寝首を狩られますぞ?」

「ぐっ、なんじゃと!!ワシは人望厚い天才じゃからそんなことは起きたりなんぞせんわ!!」



 確かに薄給で人気もない魔術師職だと言うのに、新人は入らないが、実は意外にも離職率はかなり低い。なんなら、別の日雇いのような仕事をしてまでも続けている者がいると言うのだから、あながち嘘でもないのかもしれない。もちろん口には出さないが。



「わかりました。さて、これ以上は野暮というものですし、明日は私が見張り番で起きていなくてはなりませんのでね。見張りのできないご老人はお早めに寝て頂けると助かります」

「いちいち、引っかかる言い方をするの……ふん、防音を解くぞい!」



 瘴気が浄化されていくように、ヴァンとシア嬢も少しずつまとまっていくといいのだが



◆◆◆



「ねぇヴァン、もう少し近くに座ってもいい?」

「……えっ!?なん、、、いや、いいぞ。うん、全然問題ないけど、どうかしたのか?」



 本人の許可も得られたので、椅子代わりの丸太が大きいヴァンの座っている側へ移動する。


 一瞬、私が立ち上がったことでユーシャ様がお顔を上げたけど、確認するとまたすぐに眠りについた。きっと移動ばかりでお疲れなのだろうと思う。


 ヴァンは【ここへ】と示すように、すぐ隣にハンカチを敷いてくれた。そういった紳士然なことをするタイプと思っていなかったので驚いたけど、素直に感謝して腰を下ろす。



「あのね、ゼニール様達の馬車にさっきまで防音魔法がかかっていたようだったから、もしかしたらうるさくて寝にくかったのかなって」

「ああ、そういう……。どうかな?そこまで繊細とは思えないけど」


「どちらにしても、私もずっと黙ったままだと寝てしまいそうだし、それなら小声でも聞こえる距離に行けばいいのかなって思って」

「そ、そうだな、それがいい!今後もそうしようぜ。俺もさすがに無言はキツイと思ってたんだ」



 慣れているヴァンでもそうだったんだ……良かった、逆にずっと静かに瞑想していなければならない、みたいな決まりがあったらどうしようかと、ちょっと心配していた。



「あぁ、良かったぁ……」

「ん、なにが良かったんだ?」


「ふふ。私の我が儘で訓練させてもらっているのに、眠気対策にお話ししましょうなんて駄目なんじゃないかって思っていたから。ヴァンの眠気対策にもなるなら、私も少しは役に立てそうかなって」



 今や毎日一緒に過ごしている気心知れたヴァンとなら、雑談で良ければいくらでも話せると思う。先ほどまで、どうやって一晩眠気と戦いながら見張りをしようかと緊張していたので、それが少し解き放たれて自然と笑みがこぼれた。



「ぐうっ……!」

「え、なに!?コーヒーが変なところに入っちゃったの?」



 片手で口を覆って顔を真っ赤にしてる……やっぱり器官に入っちゃったってやつじゃない?あれって苦しいのよ。咳は我慢しない方がいいのに。



「いや、違う!これは、不意打ちで」

「不意打ち??なにそれ」



「こっちの気持ちの問題だから、気にするな」

「もう!変なヴァン」



 しばらくしてからヴァンに『まだ初心者なんだから、無理はするな』と、途中仮眠をするよう勧められた。交代要員がいる場合は交代で仮眠を取るものなのだそうです。


 ユーシャ様に設けた寝床で、私であれば十分横になれそうだったので、ユーシャ様に添い寝をする形で眠ることにしました。ここなら、ヴァンにもユーシャ様にも近いので安心です



 本日のユーシャ様は駆ける夢を見ているようで、寝ながら足だけ動いています。可愛い……


「おやすみなさい、ヴァン」

「おやすみ、シア……良い夢見ろよ」



 今日はなんだか本当にいい夢が見れそうな気がします




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