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19/29

19:ユーシャ様は、無自覚キューピッド2!?☆☆

ユーシャ様翻訳は後書きに書いてあります(^^)



******



「ハァ……ユーシャ様ぁ、また聞いて下さいよー」

「………???」

 ユーシャ様は小首を傾げ、こちらを見上げている



 とにかく誰かに愚痴りたくなって、またも一番信頼できそうなユーシャ様をチョイス。シアには今日は俺が洗うからユーシャ様の夕飯を作ってやってくれと言って、彼女から引き離した。


 ユーシャ様は何事だ?といったお顔をされているが、気持ち良さそうに「バフッ、フス~」と言っている。恐らく『気持ちがいいぞ』とおっしゃっているに違いない。普段ふわっふわの毛なのに、濡らすと一気にほっそほそになるお姿は何度見ても……面白いので直視しないようにしている。



「また、独り言なんですけどいいですか?」

「ボフッ!」


「ありがとうございます!実は……」



 昨夜、団長とゼニール様より聞かされた内容に驚愕した……村長に譲ってもらえる櫛がないかお願いしたら、中古ではあるけれど、中々品があってシアのイメージにも合うなと思っていた櫛が、まさか俺の【架空の】想い人、もしくは【架空の】恋人のものと勘違いされている可能性があるだなんて!!


 すぐに誤解を解かないと!!と部屋から出ようとしたところ、目にも止まらぬ早さで団長にドアを押さえられ、ゼニール様には魔法で手足を縛られた。お陰で受け身も取れずビターン!と盛大に倒れ、鼻が痛い。

 

 完全に陸に上がった魚のようにビッタンビッタンともがいていると、団長よりまずは落ち着けと言われ、我に返ったけど……両手足縛られ転がっているので、全く締まらない。



「勘違いしているのは間違いないが、理由まではワシらの憶測でしかない」

「そうだ、それなのに『俺には恋人なんていない』とでも言うつもりか?アホなのか?」

「う゛っ!確かに…」


「『じゃあ想い人のでしょ?』と言われたら『想い人もいない』と答えるのか?それとも、いきなり『想い人はお前だ!』と告白するつもりなのか?」

「う゛ぅ゛~ぐうの音も出ない……」



「ほっほっ!まだまだ青いのヴァン。お前も薄々気付いてはいると思うが、シアは普通では落ちて来んぞ。あの子は諦めることに慣れている。昔聞いたことがあるが、恋人はお金がかかるし、結婚は孤児院出身者なので、きっとすることもありません、とな」


「あー…確かに呪文のように、自分は恵まれているからとか、これ以上は望み過ぎてはいけないとか口癖のように言ってますね」


「ほう……シア嬢はそういったタイプか……。きっと普通に恋愛してという形よりも、気付いたら結婚していたくらいに持って行った方が早いかもしれんな。まぁ拒絶されれば元も子もないから、それなりに良好な関係であった方がいいのは間違いないだろうが」



 恋人から始めて結婚じゃなく、即結婚に持って行った方がいいってなると、結構な仲になっていないと難しくないか?そもそもシアに意識してもらわないことには無理だよなぁ



「あの……団長はそこまで相手を読むことができるのになぜ……あ、いえ。失礼しました」

「嫁に逃げられたのか、かのう?ほっほっほっ」

「ハァ、耄碌爺(もうろくじじい)め。そちらは離縁こそしなかったが、屋敷内別居と噂では聞こえてますが?」


「にゃっはっはー!団長ともあろう者がたかだか噂を鵜呑みにするとはのぅ!なんと情けないことか」

「ぐっ……!!」

「ふぉっふぉっふぉっ!!名誉棄損じゃなぁ~。なに、謝って頂ければ許しても良いのじゃぞ?ワシとオーツレント殿の仲じゃてなぁ」


「あ、でもシアが『奥様の御実家の事業が潤っていたお陰で、なんとか屋敷も維持しているみたいで奥様には頭が上がらない』って言ってましたけど」

「なっ!シアが……!?」


「おや、おや、おや?これは中々に……まだ屋敷内別居の方がマシなのではないですか?魔術師長の職にあっても、屋敷の維持ができないほどとは。クク……あ、笑い事ではありませんな、切実な悩みでしょうし。お困りの際はいつでもお声掛け下さい。私とあなた様の仲、なのですよね?」


「ぐ、ぐぬぅぅぅ!!貴様、今度は侮辱罪じゃぞ!!表に出んかっ!!」



 やべぇ、これは藪蛇だったかもしれない。『ハッハッハ!ご無理は良くないと思いますよ』って団長もそんなに煽らなくてもいいのに……。仲が良いのか悪いのかわからないお二人だよなぁ。とにかくうっかり口を滑らせたのはシアに怒られそうだ……ハァ



「あ~っと、そろそろシアの湯浴みでしょうし、ユーシャ様を預かって来ないといけないので自分はこれで……」



 とりあえず逃げた。



***



「……と、まぁ最後はおかしな方向に行ってしまったんですけど。どうしたらシアにわかってもらえますかね」

「!!!?ワン、ワン、ワン!!」


「私に何をわかってもらいたいの?なにか粗相があったかしら……」

「シ、シア!?あ、もう出来上がったのか?今日は随分早いじゃないか」


「あ、うん。今日は干し肉は使わずに、良いササミ肉を譲って頂いたから茹でササミをほぐすくらいしか手間はなかったのよ。それで、なにを理解したらいいの?」



 一番わかって欲しいのは、『俺がお前を好きだってことだ!!』と、そう言えたらどんなに良いか……今のシアに言ったところで『ありがとう??私もヴァン好きよ』と、間に【友人として】が入る台詞をニッコリ返されて終わりだ。



「ワン、ワン!!」

「えっ!?ユーシャ様……またそういうの…」

「え?ユーシャ様がなんだって?」



 ユーシャ様はなにかシアに言った後、身体をぶるるっとさせて水気を切り、シアに飛び掛かった。受け止める体制になかったシアが後ろに倒れそうになる



「シア、危ない!!」

「きゃっ!!」


 なんとかシアの下敷き代わりにはなった……でも先に言っておくけど、これは決してわざとではないし、やましい気持ちもない。微塵も……ないこともない。

 俺は意図せず倒れてはいるが、シアを後ろから抱き締めているような体制になっていた。自分でもどうしてこうなった!?とビックリしているけど、よくこんな助け方ができたな自分、と褒め称えたい。


 微妙な沈黙の中、鼓動がすごく早いのは驚いたから?そして、聞こえているのは自分のものかそれとも……。ぼんやりそんなことを考えていると、少し慌てた状態のシアが俺の腕をぺちぺち叩いていた。


 あまりにも力がなくて全く気付かなかった。可愛い……



「ヴァ、ヴァン…ありがとう、もう大丈夫だから離して。ホント、ユーシャ様には困ったものよね。でも、ユーシャ様も悪気はないのよ?私がちゃんと受け止めれば良かっただけなの。ヴァンはケガはなかった?なさそうよね。じゃあ、そういうことで……」



 放心状態の俺はさておき、こちらを全く見ないまま、シアが急に早口でペラペラとしゃべりだす。よく見たら耳は真っ赤だった。

 

 俺はもう一度、抱き締めていた腕に力を込めて、シアを離さないまま腹筋で起き上がり、胡坐(あぐら)スタイルをとった。俺の胡坐の上にシアが乗っている形だ。めちゃくちゃ軽い、小さい!



「きゃっ!急に起き上がってなんなの?ヴァン、もう大丈夫よ。私はケガもしていないから……」

「髪、乱れてるから直してやるよ。ちゃんと()()()()には気を付けて優しく梳くからさ」



 一度は拒絶された中古の櫛。それでも、すごく大切に使われていたとわかる、手入れもキチンとされていた品のある櫛だった。新品のものはいつかまた買ってやりたいが、今はこっちの方がシアは受け取りやすいかと思ってのことだった。

 

 実際シアがこれまで使っていた櫛も、中古品だと聞いたことがある。安価で質の悪い新品よりも、中古だけど質が良い物を買っているのだとか。



「あ……それ…」

「これな、村長さんが良かったらって言って譲ってくれたものなんだ。男の俺が使うものでもないし、きっと村長もシアにって考えたんだと思うぜ?だからさ……受け取ってくれよ」



 髪を優しく、ゆっくり時間をかけて梳くのは、なにもシアの『頭のかさぶた』に配慮したわけじゃない。そんなものはないことは知っているけど、少しでも長く彼女に触れていたかったのと、もしかして少しくらいは意識した?という期待を込めて反応を見ていた。



「村長さん!?あ、あぁ~村長さんね。そうだったんだ、へぇ~そう」

「何?なんでホッとしてんの?」



【仮想】恋人のおさがりなんかじゃないってわかったから?なぁ、今どんな顔をしてる?



「べ、別にホッとなんてしてないわよ!村長さんがくれたのでしょう?お礼にというのならそれは遠慮なく頂くわ。ちょっと彫りのお花模様も可愛いなって……思ってたから」

「そっか、それは良かった。よし、綺麗になったぞ!前髪もやるか。こっち向いてくれよ」


「なんでよ?嫌よ!」

「どうしてだよ?もしかして照れてんのか?ぶわぁっ!!」


「もう!しつこいのよ!!ユーシャ様が風邪引かないように、しっかり乾かしてきてよね!!」

「あ、シア!!ちょっま……あー…」



 残念、しつこくし過ぎたらしい……まだ湿ったままのユーシャ様を顔面に当てられて、シアはそのまま走って行ってしまった



「ワン、ワン!!」

「ユーシャ様~!!ありがとうございます!めちゃくちゃファインプレーでした!!今のってちょっとは俺を意識したってことでしょうか?」



「ワン!!」

「やっぱり!?よっし!!」





 キョトン顔のユーシャ様を持ち上げてクルクル回ると、ユーシャ様は「バフッ!」っと言っていた。



 きっと「頑張れよ」と言ってくれてるに違いない!




☆ヴァンにはわからない犬語☆


「聞いて下さいよー」

「………???」

≪おん?なんか言った?≫


気持ち良さそうに「バフッ、バフッ」

≪お前ねぇ、洗ってる時は耳押さえられてて聞こえにくいっつーの…って聞いてねぇな≫


「独り言なんですけどいいですか?」

「ボフッ!」

≪だーかーらー…もういいや≫


どうしたらシアにわかってもらえますかね」

「!!!?ワン、ワン、ワン!!」

≪お、ナカマじゃん!今日のエサはなんだ?めっちゃ良い匂いしてんなぁ~≫


「ワン、ワン!!」

≪あ~まぁた、デンチューから好き好きフェロモンが出てんなぁ≫

「えっ!?ユーシャ様……またそういうの…」


「ワン、ワン!!」

≪おい、ナカマが行っちまったじゃねぇか!!オレのエサは!?≫

「ユーシャ様~!!ありがとうございます!」


「ワン!!」

≪早く、離せコンニャロー!!TUEEE!!をかますぞ!!≫

「やっぱり!?ヨッシャー!!」


ユーシャ様は「バフッ!」っと言っていた

≪だめだこりゃ……≫


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