18:ユーシャ様は、無双を楽しむ!?☆
◇◇◇からヴァン視点
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ユーシャ様とヴァンが連携し戦ってからも、逃げ遅れた小動物に憑いた瘴気や人型の瘴気と対峙することがあったけれど、回を重ねるごとに二人の息はピッタリ合ってきているように思えます。
そしてやはり、瘴気に飲まれた動物を浄化すると辺りの瘴気が霧散するので、まだらに広がった瘴気の原因は動物にあると、ほぼ私達の中では結論付けることができました。
今、一人の青年と一匹の可愛いワンコは『特訓だ!!』と言いながら駆けて行き、私は危ないので少し離れたところから特訓を見守っています。ユーシャ様のお声が入って来ない距離から見ていますとなんていうか、面白いです。
「ユーシャ様!どうぞっ!!」
「ワン、ワン、ワン!!」
「ユーシャ様、攻撃します!!」
「キャン、キャン、キャン!!」
ヴァンが背を少しお辞儀の様に低く屈めて、そこにユーシャ様が飛び乗り、小さな後ろ足を肩に、前足を彼の頭に乗せて、可愛らしく吠えている大道芸のワンちゃんのようですし、必死さがもの凄く可愛らしい。
至ってユーシャ様は真剣ですし、ヴァンも真剣ですので、これは私の心の中で思っているだけですが。
「こう言ってはなんじゃが、なぜか飼い主が芸を仕込んでいる図にしか見えんのう……」
「……」
せっかく心の中に留めていたのに、ゼニール様がそれを言ってしまうだなんて!でも、はい。そう見えますよね。
「ヴァンが羨ましいな。私もあれくらいできるが、背丈が私の方が高いせいなのか何なのか、ユーシャ様に頼って頂けなくて非常に残念だ。訓練は得意なのだけどね」
「頼っていないわけじゃないと思います。逆に……背中を任せている?そのようなことを以前おっしゃっていました」
ヴァンは、なんていうかユーシャ様にマーキングされているから、ちょっと所有物に近いところからスタートしていたわよね?今は信頼している仲間のような感じかしら。
ゼニゲバ様は……おそらく干し肉のことでしょうけど、『ジャーキーを隠し持っている人』と『臭いけど、ちょっと癖になる臭さになってきた人』って言ってたわ。
オツカレ様は、『デカいデンチューは結構強い、怒らせたら危険』って言っていたような……でも、オツカレ様が一番ジャーキーをこっそり食べさせにくるから、案外懐いてはいるのよね。
「ほう……?それは光栄だ。ふぅむ、なるほど。私は後衛役を担えばいいのかな?」
「戦い方については、私には全くわからないので何とも言えませんが、でもいつも冷静に、そして的確に指示をして下さる団長様がついていて下さるので、ユーシャ様もヴァンも安心して戦えるのではないでしょうか?」
「ハハハ。いや、これはシア嬢に慰められてしまったようだな……そうだ、今後は前をヴァンに歩かせて、私がシア嬢とユーシャ様の隣を歩こうか?」
「え?オーツレント様が、ですか?」
思ってもいなかった提案に、思わず目を瞬いてしまった。ユーシャ様がヴァンの背に乗るのであれば、私とユーシャ様は今まで通り後ろを歩いて、オツカレ様の指示でユーシャ様の紐を離してというやり方の方がやりやすいということかしら?
「なるほど。言われてみれば確かに、それの方が……」
「団長!!」
「ん?ヴァン、どうした、訓練は終了か?」
「……いえ、ユーシャ様が喉が渇いていそうだったので小休憩ですシア、ユーシャ様に飲ませて差し上げて」
「あ、うん。わかったわ」
「あと、これ……このグミの実お前好きだろ?見つけたから取っておいたぞ」
「わっ!こんなに!?ありがとう。私これ大好きなの、大事に食べるわね」
いつの間にこんなに集めていたのだろうか?とても嬉しいけど、食べきれそうにないし、あとで一緒に食べるのが良いかもしれない。
それにしてもヴァンって言葉がわからないはずなのに、感情のタイミングだけ合っているのかしら?ユーシャ様も楽しそうで……ちょっと嫉妬してしまう。通訳はまともにはできないけど、でも、これがなかったら私なんて必要とされないし。私も、もっとユーシャ様と遊んだりしようかな。
「ユーシャ様!!お待たせしました」
「ワン、ワン!!」
≪おい、ナカマ!さっきの見た?オレのビュン!あ、違った、【TUEEE!!】って必殺技をついにモノにしたんだ!俺とデンチューが組めば、お前一匹くらい余裕でオレが守ってやれるぞ!強い番犬ユーシャ爆誕だぜ!!≫
ユーシャ様の言葉がわからなくても伝わってくるほど、ぴょんぴょん跳ねたり、私の周りをグルグル走りまわったり……でも、ユーシャ様の「オレが守ってやる!」という言葉に膝から崩れ落ちそうになります。見た目が子犬のようなのにギャップが……
「ユーシャ様、大好きです!!」
お腹や頭を撫で、水分補給のあと、私もユーシャ様との親睦を深めるべく、枝投げキャッチをして遊びました。
◇◇◇
「団長……シアとなんの話をしていたのですか?」
「ん?なにか気になることでも?」
「いえ、なにか今後の作戦のような話が聞こえまして……聞くならシアではなく、自分が直接聞くべきではないかと思っただけです」
「ヴァンが?ハハ……なるほど。で、聞いていたのならどう思った?」
どう思うかって……シアの隣に団長に付かれてしまったら会話は減るだろうし、一番はもしもの時に庇い立てることがし辛くなる、というのが本音だけど言えるわけがない。
「団長の作戦は非常に良いと思いました……ですが、私とユーシャ様も回を重ね、スムーズな連携が取れるようになってます。ユーシャ様的には急に慣れた隊形が変わるのは動揺を招くのではないでしょうか?」
「ふむ……確かにそれも一理あると言えるな。ユーシャ様の信頼厚いお前が言うことも正しい」
「では……」
「だが、それはそれとして、本当の理由は……?」
本当の理由……ってどういうことだ?と思い、首を傾げると……あ!団長の口元がニヤニヤしているじゃないか!!もしかして俺は嵌められたんじゃないか!?うわぁ!!バレたくない人にバレてしまった!
ここは一つ、シアにも定評があるスンな真顔で「なんのお話でしょうか?」とすっとぼけるという手を使うしかないだろう。よし、平常心、平常心……
「本当の理由を言うのであれば、我々も協力を惜しまんぞ?味方は多い方が良いのではないのか?」
「うっ!」
終わった……ガッツリとバレてんじゃねぇかよ~!!最近当たり前にそばにいるから気が抜けてたかもしれない。あぁ~やってしまった
「そうじゃな。暇で娯楽に飢えとるしの」
「うわぁ、ゼニール様まで!!人の恋路を娯楽代わりにしないで下さ…あっ!!しまった」
うわぁぁぁ!!よりによってダブルでバレていたなんて恥ずか死ねる!!!一体いつから?さっきの?いや、あの口ぶりはもっと前からだな……もうやだ。オワタ
「お願いします!自覚したのは2年前くらいですけど、その前からも大切に見守って来たつもりです。軽い気持ちではないので、どうかシアには言わないで下さい!!」
「なんじゃ、ワシらも舐められたものよの。言ったところで誰得じゃ」
「そもそも、あれだけ見せつけておいて気付かれないと思う辺りが甘いぞ、ヴァン。超少数精鋭でむしろ良かったな」
「えぇ!?そんなに、ですか?おかしいな……その割に本人には全く響いていないみたいですけど…」
第三者から見てバレバレであったのなら、もう少し本人にも『もしかして…?』と意識してもらえても良さそうなものじゃないか?お二人が異常に鋭いのか、シアが異常に鈍いのか……
「妻に逃げられてる私が言うのもなんだが…ヴァン、あの櫛はダメだな」
「そ、それも見られていたんですか!?」
「言っとくが、ありゃ別の勘違いをしとる顔じゃったぞ」
「え、勘違い!?どんな、でしょうか……?」
何かを勘違いしたから、あの時 態度が急に変わったってことか?確かにちょっといつもと違うなとは思ったけど……中古が嫌なだけじゃなかったのか。
「それはな……」
「ヴァン~!ユーシャ様飲み終わったよ~!特訓の続きしないの~?」
「ワン、ワン!!」
「あっ、え、あー……今行くっ!!」
あぁ!!勘違いの内容が聞けなかった!!気になって仕方がないじゃないかっ!チラリと恨めし顔で団長と魔術師長を見やると、二人はニヤリと笑って『夜にツマミを持って、ワシらの部屋まで来い』と小声で伝えてきた。
くっそー!!こうなったらお二人を味方につけて、絶対成就させるぞ!
ラストの「ワン、ワン!!」は≪お~い、デンチュー遊ぼうぜ~≫だと思います(^^)
次話の甘度☆☆




