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17:ユーシャ様は、TUEEE!を会得する!?



******



 ユーシャ様のお陰で気を引き締め直し、その後はヴァンとも普通に話こともできました。


 そもそも、ヴァンに恋人がいようといまいと私には関わりないことなのに、どうしてあんなことを思ったのか不思議でなりません。

 

 考えてみたら、魔術師塔の先輩方は独身又は離縁された者が割合多いように思います。けれど、それの恩恵なのか、先輩方は孤児院から連れて来られた私を邪険にすることもなく、私に最低限の言葉使いや先輩、後輩の縦社会なるものを教えて下さいました。

 

 たまにこっそりおやつを分けて下さる先輩もいましたね。大抵はゼニゲバ様の御年に近しい方々でしたけど。孫やペットのようなポジションでしょうか?


 それでも家族のいない私には魔術師塔の先輩方を家族のように思っています。ただし、家族だからって何でも話せるわけではないですよ?魔法陣の書き間違えについては墓場まで持って行こうと思ってますから!


 先程からグダグダと色々言っていますが、つまり私は「結婚」なんて夢はとうに諦めているということです。お付き合いくらいはしてみたいなとは思ったことはありましたが、逢瀬にはお金がかかると言いますし……無理だと思います。

 一回のデート代の為に、二食生活をどのくらい行えば良いのでしょうか?やはり無理ですね。


 こういうことばかり考えているので、交際なんて私には向いていないのです。相手もいませんが。皆さんはどうやってやりくりしているのかしら?


 むしろその節約術の方に興味があります。


 うん、良い感じに興味が逸れたわ。生きるにおいて、生活や節約、仕事のこと以外はあまり興味を持つものじゃないわね。他に興味を持てるような立場ではないし、興味を継続できるお金も時間もないのだから。


 今は自活できて、お役にはあまり立てていないけど、仕事もあって、職場の先輩方も優しい……これ以上なにを望むというの?


 私は生まれてからずっと孤児院にいたわけではない。両親と生活していた小さい頃の記憶は、もう遠くに霞んでいてほとんど思い出せないでいる。捨てられたのではなく、事故で二人は亡くなったのだと聞いている。

 それなりに愛されていたとは思うし、(おぼろ)げな記憶の中の両親は笑っていた。きっとその思い出があったから、スレないままでいられたのだろうと思う。



『シア、あなたは恵まれているのよ。だからこれ以上多くを夢見てはいけないわ。叶わないって知った時に落ち込むのはあなたなんだから』そう、孤児院を出る時に年長者の一人に言われた。

 すごく引っ掛かる言い方だなと思ったけど、なぜか忘れられないでいる。



(いけない、また考え事に没頭してしまって、ユーシャ様を追い抜いてしまったわ!)


 ……あれ?ユーシャ様が警戒しているような動きをしている!



「ヴヴ~……」

≪また、あの変な感じがする……せっかく洗ってもらったのによ!≫



「!!?皆さん、注意して下さい!ユーシャ様がまた何かを感じ取ったようです!」


「なんじゃと!まだ目には見えないというのに、ユーシャ様にはわかるのじゃな」

「これぞまさしく聖犬であるが故ではないですか?ユーシャ様のお陰で、我々も早めに警戒できますね」

「でも瘴気の浄化に関しては全てユーシャ様頼みなのが、もどかしいです」



 ユーシャ様の警戒通り、道中にはまだ報告に上がっていない、新しい瘴気溜まりがありました。二番目とはいえ、やはり中程度となると瘴気溜まりの増え方も早いように感じます。


 先日浄化した三つの中でも比較的軽度の瘴気は、大きく一ヶ所にある程度はまとまっていましたが、こちらは転々とまだらに増え、じわじわと確実にエリアを広げているように思えます。



 ユーシャ様は気丈に振舞ってはおられますが、少し及び腰になっているご様子。こういった場合は抱き上げて撫でると落ち着くようですので、今回もそうしました。



「グルゥゥ……バウ!ヴヴ~~!!」

≪くせぇ臭いが濃くなってきてる!!またあの、うにょうにょか?いや、なんか違うな。飛んでる?≫

 


 私に抱かれたままのユーシャ様が再度唸り始め、牙を剝きだしました。飛んでる、とは……?



「ユーシャ様が、瘴気が濃くなってきているとおっしゃっています!なにか飛んでいる?ものが来ているとも……」


「飛んでるじゃと?では警戒は空か!?一応全員に結界じゃ」

「空だけではないですよ。飛んでくるのであれば多方面を警戒せねば」

「先には進まず、ここで向かい打ちますか?」



≪くせぇ臭いが追い付くぞ!ナカマやデンチュー達にはこの臭いがわからねぇのか?臭いがついたら中々取れねぇのに……≫



 ユーシャ様の思考が入ってきます。私達にはわからない、瘴気の臭いというものがあるようです。やはりこの辺りは嗅覚というやつでしょうか?



「キャン、キャン、キャン!!」

≪あ、デンチューの方向に来る!知らせてやらないと!!ナカマ!ちょっと離せ!!≫


「え?ヴァンのところですか!?あっ、ユーシャ様!!」



 手を緩めた途端に、ユーシャ様はスルッと飛び降りて、一目散にヴァンのところへ走って行きました。でも、ヴァンのところに瘴気が向かっているって言っていた……



「ヴァン!!あなたのところに瘴気が向かっているって!!」

「え!?俺のところ?……わぁっユーシャ様!!」



 ユーシャ様がなぜかヴァンの背に飛び乗り、低く唸り激しく吠え出しました。



「ガルゥゥゥ!!ガウ、ガウ!!」

≪デンチュー!お前狙われてるぞ!お前も威嚇しろ!!メスを守れなきゃ、一人前の成犬とは言えねーぞ!≫

「え?シア、ユーシャ様はなんて言ってるんだ!!」

「あ……狙われてるから攻撃しろって!」


「攻撃……?どこに向けて攻撃したらいいんだ」

「ヴァン、ユーシャ様は右側を向いて吠えている!きっと何かが見えているのだ、一度薙ぎ払ってみろ!!」


「はい!!」

「キャン、キャン、キャン!」

≪なんかすばしっこいやつだな!どっちから来るんだ≫



 ユーシャ様が吠え続ける中、ヴァンが見えない瘴気へ向けて薙ぎ払った。すると薙ぎ払った槍からユーシャ様の真空破のようなものがまた現れました!!

 しかし、当たってはいないようで、ユーシャ様が吠えるのをやめていません。今度は左に吠えています



「ヴァン、今度は左よ!!」

「わかった!!」


「キャン、キャン、キャン!!」

≪あれ?さっきビュン!が出たよな?デンチューが持ってる、細いデンチューからビュン!って……もしかして≫



 ユーシャ様は何かに気付いたようで、ヴァンの肩に小さな足を乗せ、髪の毛に必死にしがみ付きながら、今度はヴァンが薙ぎ払うのと同時に吠えました。



「な、なんじゃあの攻撃は!?」

「ヴァンの攻撃に咆哮を乗せているのでは?」

「ユーシャ様!?今、俺の槍からもの凄いものが飛び出ましたけど!?」



 オーツレント様がおっしゃるように、ユーシャ様が単体で繰り出した真空破よりも、ヴァンとの合わせ技の方が倍以上の真空破が飛び出していました。そして飛んでいたとされる瘴気の正体は……モモンガ!?

 

 

 ユーシャ様の浄化を受けたモモンガは元に戻ってはいましたが、向かって来る間にあちこちぶつけていたせいか、すでに事切れていたのでそれについては不明のままだった。


 この辺りの瘴気がまだらに広がったのは、もしかしてこの瘴気に侵された野生動物のようなものが動いたからだろうか?

 瘴気に侵されてしまった動物はそう長くは生きられないから、途中途中で息絶えて、その息絶えた場所がまた瘴気に侵されていくという現象が起きているのかもしれない。土地柄、この辺りは野生動物が多い。


 こういったことも研究チームに報告し、今後詳細を調べてもらうそうだ。



「ワン、ワン、ワオーン!!」

≪わかった!!オレわかっちゃったぞ!?デンチューのビュン!の時にオレも吠えればビュン!が出るんだ!!連続でできたし、絶対そうだっ!!やっぱオレってTUEEE!!あ、技の名前はTUEEE!!にしようかな。カッケー!≫



 キラキラとした目で、ユーシャ様が振り返る。『ユーシャ様スゴイです!!』と両手を広げると私の元へまた走って戻って来て下さいました。もう尻尾は高速でぶんぶんとしていて、最近はよく洗っているのでモフモフのふわふわでとても可愛い……これもまた浄化作用があるような気さえします。



 ユーシャ様が喜ばれるので、たくさん褒めつつ撫でてあげていると、ユーシャ様の思考が流れてきました。うっかり疎通スキルを切るのを忘れてました



≪ナカマに褒められんのはやっぱり嬉しいな!でも、一応デンチューも協力したから、軽く褒めてやったらあいつも喜ぶと思うけどな。でもまぁ、いっか。オレたくさん褒められたいし≫



 確かにヴァンとの共闘でしたねと思い、『肩や髪に土がついているから』と言って、バレないように払うフリをして頭を撫でてみました。届かないので座ってもらいましたが……



 なんとなくですが、心なしかヴァンも喜んでいるように見えました。




次話は甘度☆

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