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16/29

16:ユーシャ様は、慰める!?☆

◆◆◆~◆◆◆はオーレンツ、ゼニール視点です


ブクマ、評価ありがとうございます!感涙!!



******



「ハッハッハッ……くしゅん!!…ばふっ!」

≪はぁっくしょん!!あっ、鳥み~っけ!!待て待てぇ~!!≫



「あっ!また足が……ユーシャ様!」

「おっと……大丈夫か?今日はやたらと紐に足を引っ掛けるな」



 今日のユーシャ様は自由過ぎると言いますか、落ち着かないと言いますか……あちこちに動き回るので、対応に間に合わないと、こうして足に(リード)が絡まってしまってはよろけ、ヴァンに支えられるを繰り返していました。


(これは支えてもらっているだけ、ただそれだけよシア!!)


 支えてもらう度に、自分にそう言い聞かせてはいるのものの、よろけ方によっては抱き着いているようにもなってしまって……これならいっそ、そのまま転ばせておいて欲しいと思う。

 

 一応やんわり伝えたものの『お前がそれでケガをした場合、ユーシャ様のお世話係はできなくなるんだぞ。シアはそうなったら自分を責めるだろ?』と言われてしまえば、その通り過ぎて『そうよね、ごめんなさい。ありがとう』と返すしかない……ハァ。



(元はと言えば、ユーシャ様が好き好きフェロモンがヴァンから出てるなんて勘違いをなさるから、なんとなく意識してしまうのよ!)



 とはいえ、ユーシャ様自身は私にそんなことを聞かれているとも思っていないのだから、全く悪くもないのよね……それでも一人と一匹に、私が誰のせいで悩んでいるのか全く気付かれてもいないことがなんとなく悔しくて、無意識に口を尖らせていた。



「なぁシア、もしかして拗ねてる?さっき注意したからか?言い方がキツかったなら謝るから、機嫌を直してくれよ」



『悪かったよ』と謝っている割に、口元は緩んでいてどの辺が反省しているのかわからない。そもそも、そんなことで怒ってなんてないし!全く見当違いな発言と、なんとなく小馬鹿にされているような態度に、今度は頬を膨らまし、プイっとそっぽを向いた。

 

『怒るな、怒るな』って言いながら頭をわしゃわしゃしないで!髪がぐちゃぐちゃになっちゃうでしょ!!



「もうっ!別に怒ってなんかいないわよ!!せっかく整えたのに髪が乱れたじゃない」

「ハハハ!大丈夫、俺が()かしてやるよ」



 梳かすってどういうこと?騎士の人って櫛を持ち歩いてるってことかしら。でも、ヴァンのポケットから出てきたものは女性用の小さな花の彫りが入った櫛で……



(どうして女性物なんてヴァンが持っているの?)



 買い物なんて道中していなかったし、そんな気の利いたお店も見掛けなかった。だったら、その櫛は誰の物なの?

 ヴァンは確か男三兄弟の真ん中だって言ってたし、彼のお母さんのものとも思えない。だってどう見ても若い子が持ちそうなものだし、昔使ってたと言うような年季物でもない……



「ほら、後ろ向けー……」

「やめて、髪に触らないで!」


「え……どうした?」



 ヴァンの想い人からとか……?ううん。使用感はあるし、すでにお付き合いしている人がヴァンに自分の物を持たせたのかもしれない。そういう大切なものを、他所の得体のしれない女の髪を梳かす為に使うだなんて、お相手にも失礼だし無神経だわ!


『ヴァンの恋人のものなんでしょ?使わない方がいいわ』そう言えばいいのに、出て来た言葉は全く違っていた。



「あ……今ちょっと頭にカザブタがあって痛いのよ。だから…いいの」



『どこだよ?』なんて探されないように、さっと手櫛で髪を整えて戻す。ちょっと言い方がキツかったかな?とヴァンを見てみたけど、彼は頭をポリポリ掻きながら『やっぱりこれじゃ駄目だったか』とボソボソ言って、ポケットに戻していた



「……痛かったのに頭触って悪かったな。治ったら使えるように、お詫びに新しい櫛を今度買ってやるよ」

「ううん、気持ちだけで十分よ。櫛は使い慣れたものを持っているもの。それに……こんなたいして手入れもされてない髪に、贅沢だわ」



『本当!?嬉しい!!絶対に約束よ?』っていつもの私ならそう返すでしょ?嬉しいのも本当なのに、やっぱりさっき思い浮かんだ「ヴァンの恋人」の影を無視できなくて、『欲しい』とは返せなかった。



(ヴァンに想い人とか、恋人がいるだなんて、今まで考えたこともなかった。第二騎士団の頃に訓練を見に来ていたファンの子の誰かと……)



 私より年上とは言え、男の人ならまだ十分適齢期だ。いつかそういう日が来るってどうして考えもしなかったのだろうか。ずっとこのままなんてありえないのに……



◆◆◆



 一方、彼らのすぐ前を歩いていたオーレンツは思った。


     (背中が痒い!)


 まぁヴァンは騎士団にいた頃から真面目なやつだったし、おそらくその頃は女っ気もなかった、と思う。そうなると、シア嬢が初恋のようなものなのだろうか?その前は知らないが。

 

 どう考えても『髪を梳かしてやるよ』の辺りまでは声も弾んでいた。しかし、梳く段階で『やめて』ということは、その間になにか不快なことがあった、ということだ。



「ゼニール殿……見ましたか?」

「ふむ………そのつもりはなかったのじゃがな。二択で聞かれているのなら……見た」


「で、どう考察を?」

「おそらくはあやつの取り出した女性物の櫛じゃな」


「柄のセンスがなかったとか?」

「んにゃ、シンプルじゃが花柄の彫りが入ったものじゃった」


「ほう……派手さはないが、日常使いには良さそうですよね?」

「むう……。しかしのう、おそらくあれは中古品じゃな。昨夜、村長になにかお願いしとったのは櫛のことじゃろう。あの村に新品の工芸品なんぞありはしないからの」


「あー…なるほど納得です。他の女性の影を櫛を通して見たか、中古が単純に嫌だったか、辺りでしょうか?」

「普段のシアであれば、『綺麗に使っていた中古品なのね!』と言って受け取っておるわ。おそらく前者であろうな」



 シア嬢の言いそうな台詞ではあるが、この爺さんのしゃがれた声でマネされると妙に気持ち悪い。



「ハハハ、まさか櫛で彼女の気持ちが揺れているなどと、本人は思ってもいないでしょうな」

「まぁ、なるようにしかなるまいて。ワシらは黙って見守り……聞き耳立てる程度じゃな」


「悪い趣味ではありますが、娯楽がないので興味がいきやすいですね。しかし、ヴァンは中々良い青年だと思いますよ」

「それを言うたらシアだって、働き者で気立ての良い子じゃぞ!」



◆◆◆



 なんか前方が騒がしいけど、きっとまたいつもの喧嘩かしら。取っ組み合いにでもならない限りは止めないくてもいいですよね。もう毎日のことで疲れました。ヴァンがいつも静観していたのはこういう理由だったのね。



「くぅ~ん」

《なんだ、ナカマとデンチューはケンカでもしたのか?二人とも元気がない気がするぞ》


「!!!?」

(そうよ、今は浄化をすることが最重要なのに、ヴァンに恋人がいるとかどうとかなんて関係ないじゃない!私ったらバカだわ!)



 ユーシャ様がトトト……と私の方に寄ってきて、抱っこを求めてきました。先ほどまでルンルンで歩いていたのに…


「きゅーん……」

《よくわからないけど元気出せよ、オレがいるからさ。二人はナカマワレってやつか?デンチューも悪いオスじゃないんだ…多分。でも、もし本気でケンカをするなら、オレがビュン!ってやつを出して力になってやるよ!》



「ふふ、ユーシャ様ってば……」



 ユーシャ様はどうやら私の味方をしてくれるらしい。その気持ちが嬉しくてちょっと涙が出た。ユーシャ様はそれをペロッと舐めて慰めてくれました。




 事情もわからないのに、ユーシャ様が気付いて慰めてくれたことが嬉しくて、また少し涙が出た。






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