悪役令嬢と第一王子1
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アニエスの妊娠がわかった翌日、フレデリクとブリジットは王城の庭にあるテラスでお茶をしていた。
「今日も妃教育お疲れ様」
「ありがとうございます、フレデリク様」
フレデリクがブリジットを労う。妃教育は、フレデリクが王位を継ぐまで続くのだ。
「それにしても、昨日は驚きましたね。まさか、アニエスが妊娠しているなんて」
「まあ、よく考えたら、不思議ではないけどな。エルネストの奴、夜は頻繁にアニエスの部屋を訪れていたみたいだし」
「エルネスト殿下は、アニエスに夢中ですものね。……羨ましいわ」
「羨ましいか?俺も、お前に夢中になっているつもりなんだがな」
「そ、そうですか……」
ブリジットが、顔を赤くする。
「……でも、フレデリク様、よく私に惚れて下さいましたね。政略結婚に近いような形で婚約したのに」
「ああ、お前と会ったばかりの頃の印象は、はっきり言って最悪だったな。……でも、段々お前の事を好きになっていった」
フレデリクが初めてブリジットと出会ったのは、フレデリクが十一歳の時。ブリジットは、両親に連れられて王城を訪れていた。ウェーブがかった金髪に青い瞳。可愛い子だとは思ったが、特にときめきもしなかった。
彼女は、フレデリクの婚約者だという。王家との繋がりが欲しいルヴィエ家と、有能なモルガン・ルヴィエを囲い込みたい王家との利害が一致したのだ。特に恋愛結婚に執着していないフレデリクは、まあ婚約なんてこんなもんかと納得した。
それから数日が経ち、フレデリクはルヴィエ家にお茶に呼ばれた。エルネストも一緒だった。お茶会でのブリジットの振る舞いは、お世辞にもいいとは言えなかった。
メイドに、テーブルクロスの色が気に入らないから変えて欲しいと言ったり、料理人にお菓子の味が気に入らないから作り直せと言ったり、とにかく我儘だった。
婚約が決まって一年が経つ頃には、フレデリクはブリジットに会うのが億劫になっていた。この我儘なお嬢様と、これから一生付き合っていかなくてはいけないのかと思うとウンザリした。
ある日、フレデリクとエルネストがルヴィエ邸のテラスでお茶をしていると、ブリジットが言った。
「今日は、料理人が考案した新作のケーキを用意したんです。どうぞお召し上がり下さい」
栗色の髪のメイドが、三人分のケーキをテーブルに置いた。円柱型のチョコレートケーキだ。
「あら……こんな見た目だったかしら?」
ブリジットがぼそりと呟いた。真剣な顔で考え込んだ後、ブリジットは無言でケーキを一口食べた。そして、目を見開くと、次の瞬間、ケーキを地面にはたき落とした。
「何よこれ、まずいじゃない。料理人に作り直させなさい!」
ブリジットはメイドにそう命じると、フレデリクとエルネストの目の前にあるケーキを回収させた。
フレデリクは、眉根を寄せた。チョコレートケーキは、おいしそうに見える。またいつものように、ブリジットは自分好みの味ではないという理由だけで、良く出来たケーキを台無しにしたのかもしれない。
ブリジットは、「少しの間失礼致します」と言って、何故かメイドと一緒にテラスを後にした。もしかしたら、陰でメイドや料理人を叱責するのかもしれない。もしそうなったら、自分がメイド達を庇おう。そう思い、フレデリクはエルネストを残して席を立った。
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