転生妻の帰還4
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アニエスとエルネストは無事レーヴ王国に帰還すると、皆喜んで迎えてくれた。ブリジットなど、『アニエスが皇太子と結婚させられなくて良かったねパーティー』を開こうとした程だ。一方、ロック・オーバンはクヴィエト帝国へと出立した。クヴィエト帝国を悩ませている魔物の問題は、解決しそうである。
そして、クヴィエト帝国の件が解決してから半年程経ったある日、フレデリクとブリジットが結婚式を挙げた。パレードの際、ブリジットが素敵なウエディングドレス姿で民衆に手を振っているのを見て、アニエスは笑顔を浮かべながら涙ぐんだものだ。その夜、城で盛大なパーティーが催された。
「改めて、結婚おめでとう、兄さん、ブリジット妃殿下」
「おめでとうございます、フレデリク殿下、お嬢。パレードでのお姿、素敵でした」
エルネストとアニエスが、主役の二人に近付いて祝いの言葉を述べた。
「ありがとう、二人共。やっとこの日を迎えられたよ。……ブリジットにはこれから先苦労をかけてしまうかもしれないが、共にこの国を支えよう」
「ええ、苦労は覚悟の上です」
フレデリクとブリジットが穏やかな笑顔で見つめ合った。
「話はこれくらいにして、食べようぜ。ほら、向こうのテーブルにおいしそうな料理が沢山並んでる」
「そうっすね。行きましょう」
四人揃って料理の並ぶテーブルに近付く。アニエスは、ローストビーフが載っている大皿に近付き、小皿に自分の分を取り分けた。昔から肉料理は大好きなのだ。そして、口にしようとした時。
「……うっ」
急に気持ち悪くなった。吐き気がする。お肉を前にして気持ち悪くなるなんて……。
「どうしたの、アニエス。大丈夫?」
エルネストが、心配そうに聞く。
「急に吐き気が……」
「医者を呼ぶ?」
「部屋で休めば良くなる気もしますが……念の為、診てもらうっす」
しばらくして、アニエスの自室には医者を含め五人が集まっていた。
「それで、先生。アニエスの吐き気の原因は……?」
エルネストが聞いた。白髪頭の男性医師は、口ひげを撫でながら言った。
「妃殿下は、病気ではございません。まあ、一言でいうと……ご懐妊ですな」
しばらく、沈黙が流れた。
「え」
「え?」
「えええええー!!」
四人の声が部屋に響いた。アニエスは、茫然とした。妊娠?自分が?……いや、よく考えたら、思い当たる節はあるけど。じゃあ、気持ち悪かったのは、いわゆる悪阻ってやつだったのか。
「……アニエス、おめでとう!」
ブリジットが手を胸の前で合わせて言った。
「おめでとう。そうか、お転婆のアニエスもとうとう母親になるのか……」
フレデリクも、うんうんと腕を組んで頷いている。
「……僕が、父親……」
エルネストは、まだ茫然としている。
「……エル様、私……いい母親になれるように、頑張るっす」
エルネストは、ハッとして言った。
「頑張り過ぎないでね、アニエス。……アニエスは、きっといい母親になれるよ。僕も、出来る限りアニエス支えるから」
「ありがとうございます、エル様」
アニエスは、穏やかな笑顔で微笑んだ。八歳で転生したと気付いた時は、まさかゲームでは名前すら出てこない自分が第二王子の妻になり、子まで成すなんて思いもしなかった。人生はゲームとは違う。これからも何があるかわからない。でも、エルネスト達がいれば、何でも乗り越えられそうな気がした。
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