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転生妻の帰還2

よろしければ、お読み下さい。

 しばらくして、アニエス、タチアナ、ヴァルトルの三人は、城の二階にある廊下を走っていた。アニエスは、こちらの国の町娘のような恰好をしている。昨日買い物に出た際、赤を基調とした袖の白いワンピース風の服を気に入り、洋裁店に立ち寄った際購入していたのだ。メイクも、じゃじゃ馬で有名なアニエスだとわからないよう、タチアナがうまく施してくれた。……隣国にまで自分がじゃじゃ馬だと知られているとはアニエスは知らなかったが。

「急げ、裏にある城壁を飛び越えて、何人か場内に入り込んだと言う情報もある」

「はい!」


 アニエス達は、廊下の端まで辿り着いた。アニエスが窓から顔を出すと、すぐ側の裏庭に大きな木が数本生えているのが見える。

「ここから木に飛び移って、それから民衆に紛れて逃げるっす。多分私だとはバレないと思うので」

「さすがじゃじゃ馬だな。俺が側にいると目立つから、妃殿下とはこれでお別れだ」

「はい。色々ありましたが、魔物退治、楽しかったです。機会があれば、またお会いしたいっす」

「私の事も丁重にもてなして下さり、ありがとうございました」

タチアナも礼を言う。

 そして、タチアナは自室から持って来た荷物を窓から投げた。人には見られていない。アニエスも荷物を投げる。

 「では、私から先に飛び移らせて頂きます!」

タチアナが元気に返事をして木に飛び移る。木から地面に降りようとした時にバキッと枝の一部が折れる音がしたが、タチアナは無事降り立った。


 そして、アニエスも木に飛び移ろうとした時、外から声が聞こえた。

「おい、こっちで物音がしたぞ」

「衛兵か!?」

「構わない。衛兵だとしても押し切ろうぜ」

そんな話をしながら裏庭に入って来たのは、三人の男。平民の恰好をしているので、城に押し寄せている民衆の一部だろう。

 彼らは、裏庭にいるタチアナを見て立ち止まった。

「……見た事があるな、この女」

「……あ、思い出した。昨日俺、街でアニエス妃が魔物を退治しているところを見かけたんだよ。その時、アニエス妃の側にいた女だ!」

「何?この女、アニエス妃の侍女か!……丁度良い。この女を人質にしようぜ。そうすれば、アニエス妃を説得できるかもしれない」

男達が、じりじりとタチアナに近付いて行く。タチアナは、緊迫した表情で後ずさりをする。


 男の一人がタチアナの腕を掴もうとした瞬間、頭上に影が出来ているのに気付いた。

「無関係の人間を巻き込むのはやめるっす!!」

アニエスが木から飛び降り、男の腕を木刀で叩き付けた。

「いってえ……!!」

男は、腕を押さえて蹲った。

「アニエス妃だ!上にいたのか」

「お願いだ、皇太子殿下と一緒になってくれ!」

「もう魔物に畑を荒らされるのはまっぴらなんだ!」

男達が口々にアニエスに訴える。


「私はヴァルトル皇太子殿下とは結婚しないっす!」

アニエスははっきりと言った。

「……でも、安心して欲しいっす。私の代わりに、優れた魔術師がこちらに来る予定っす。魔物の被害も少なくなるでしょう。……それと、人に頼ってばかりではいけません。魔術は使えなくとも、効率よく魔物を倒せるように武術を身に着けたり、道具や罠を開発したりする事は出来るっす。皆、協力して自分達の暮らしを守りましょう」


 しばらく沈黙が流れた後、頭上から笑い声が聞こえた。ヴァルトルが窓から顔を出して笑っているのが見える。

「ありがとうな、アニエス妃殿下。この国の民の事も考えてくれるんだな」

そう言うヴァルトルを見て、男達は目を見開いた。

「皇太子殿下だ……!」

「殿下も上にいたのか……」

ヴァルトルは、男達を見回して言葉を続けた。

「皆、聞いたか?俺は、アニエス妃殿下と結婚しない。皆には苦労を掛けるが、これからも一緒にクヴィエト帝国を平和で豊かな国にしていこう!」

男達から歓声が上がる。

「もちろんです、皇太子殿下!」

「確かに他人に頼りっ放しじゃ駄目だよな。いっちょ頑張るか!!」

ヴァルトルは、民衆に慕われているようだ。男達が士気を高めている様子を、アニエスは微笑んで見つめていた。


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