転生妻と戦争の危機3
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翌日から、アニエスは益々貴族との交流に力を入れるようになった。クヴィエト帝国が納得しそうな条件を提示できないか、帝国の情報を手に入れようとした。エルネストも、領地を視察したり新規の公共事業に関わったりと、忙しく動き回っていた。経済的な援助を受けなくても済むように努力しているのだ。
数日後、アニエスは庭でエルネストと二人お茶を飲んでいた。
「……こうしてゆっくりお茶を飲むのも、久しぶりっすね」
「そうだね。……そろそろ戻って収支報告書に目を通さないと」
「……大丈夫っすか?目の下に隈が出来てますよ」
「大丈夫。これでも寝る時間は設けてるから。……じゃあ、もう行くね」
エルネストは、立ち上がって歩き始めた。しかし、すぐにふらついたかと思うと、地面に倒れ込んだ。
「エル様!!」
アニエスは、思わず叫んだ。
数分後には、エルネストは自室のベッドで寝ていた。アニエスは、側に置いてある椅子に座って、心配そうにエルネストを見つめている。
ドアのノックが聞こえた。部屋に入って来たのは、フレデリク。
「エルネストの様子はどうだ?アニエス」
「寝てるっす。……医者によると、過労だそうです」
「そうか。こいつ、忙しくしてたからな……」
しばらく沈黙が続いていたが、不意にドアが激しくノックされた。
「フレデリク殿下、いらっしゃいますか!?」
兵士らしい男が呼ぶ声が聞こえる。
「どうした、病人がいるんだぞ」
フレデリクが、眉根を寄せながらドアを開けた。
「それが……東部の地域にクヴィエト帝国が砲撃を仕掛けたそうなんです!すぐに会議室に来て下さい」
「何だって!?……わかった、すぐ行く!」
「私も行くっす」
アニエス達は、足早に会議室に向かった。
「どういう事なんですか、父上!クヴィエト帝国が砲撃を仕掛けたって」
「落ち着け。説明するから」
会議室で、興奮しているフレデリクをレオナールが宥める。
「まず、砲撃による被害はない。砲撃されたのは、何もない荒地だったからな。それと、向こうが砲撃した理由だが、早くアニエスに来て欲しいからだろう。魔物の数が減らず、かなり切羽詰まっているらしい」
つまり、経済的な援助とか関係なく、『早く魔術師をこちらに寄こせ。さもないと今度は被害が及ぶ場所に砲撃するぞ』と脅しをかけているわけか。
アニエスは、絶対にエルネスト以外の元に嫁ぎたくない。しかし、このままだとエルネストの身体が持たないし、国民を危険に晒す事になる。アニエスは考えた末、一つの結論に達した。
エルネストが目を覚ますと、既に夜になっていた。
「……エル様、目を覚ましたんですね」
側にいたアニエスは、静かに微笑んで言った。
「うん、心配掛けたね」
エルネストは、上半身を起こしながら言った。
「喉が渇いてないっすか?水をどうぞ」
アニエスに渡された水を、エルネストは一気に飲み干した。
「……エル様、報告しなければいけない事があるっす」
「何?」
「東部の地域が、クヴィエト帝国に砲撃されました」
「え!?」
「ただの脅しでしたが、とにかく私に早く来て欲しいみたいっす。私は、エル様や国民を守る為に、行動を起こさなくてはいけません。……エル様、あなたの事を、お慕いしております」
エルネストは、険しい顔で聞いた。
「アニエス。急に何を言い出すの、何をするつもりなの?」
「じきに分かるっす。……エル様、もう少し、休んでいて下さい」
「休んでなんかいら……あ……れ……?」
意識が朦朧とする。普通の眠気ではない。そこで、エルネストは気付いた。まさか、先程飲んだ水の中に睡眠薬が?
「……ごめんなさい、無味無臭の睡眠薬を入れさせてもらいました」
「アニ……エス……」
エルネストの身体は、再びベッドに沈んでいった。
翌朝、目が覚めたエルネストは、急いでアニエスの部屋を訪れた。アニエスはいない。食堂に行くと、そこにがフレデリクがいた。
「もう体調は大丈夫なのか?エルネスト」
「それどころじゃない!兄さん、アニエスがどこにいるか知らない?」
「……彼女なら、クヴィエト帝国に行ったよ」
「なっ……どうして止めなかったの!?」
「落ち着け。アニエスは嫁ぐ為に向こうの国に行くんじゃない。交渉する為に行くんだ」
「交渉?」
「そうだ。アニエスが皇太子と婚姻を結ばなくても、将来に渡って魔物を退治できる体制があれば向こうはそれでいいんだからな。……心配かもしれないが、アニエスに任せよう」
エルネストは、唇を噛み締めた。
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