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転生少女と赤ワイン3

よろしければ、お読み下さい。

 挨拶が終わり、また客達は歓談を始めた。そしてアニエスもまた料理を食べ始めたが、周りの視線が痛い。

 早く帰りたいと思いながら溜息を吐くと、ウエイターがアニエスとエルネストにワインを勧めてきた。アニエスは白ワイン、エルネストは赤ワインのグラスを手に取った。

 アニエスはふと思いついて、エルネストに言った。

「殿下、私とワインを交換して頂けないっすか?」

「え?いいけど、どうして?」

「やっぱり、赤ワインを飲みたくなったっす」

「ふうん?……どうぞ」

アニエスはエルネストとワインを交換すると、香りを嗅いだ後、赤ワインを一口飲んだ。そして目を見開くと、エルネストの手をはたいてワイングラスを床に落とした。グラスの割れる大きな音がする。

「飲むな!毒っす!!」

 アニエスの大声に、会場がざわつく。エルネストは、驚いた顔で聞いた。

「毒って、どういう事?アニエス」

「言葉の通りっす。この赤ワインに、毒が入っていたっす。その白ワインにも毒が入っている可能性があるので、一応……飲むのを……阻止させて……頂きまし……た……」

 そう言うと、アニエスは気を失った。倒れる直前にアニエスの身体を支えたエルネストは、焦りを隠せず叫んでいた。

「アニエス、アニエス、しっかりしろ!誰か、誰か医者を!」


 目が覚めると、アニエスは広いベッドに寝かされていた。

「ああ、アニエス、良かった。目が覚めたんだね」

エルネストが、ほっとした顔でアニエスの顔を覗き込んでいた。

「……ご心配おかけしたっす。……どうやら私は無事のようっすね」

「うん、ここは王城の客室なんだ。ゆっくり休むといい」

「ありがとうございます……毒を盛った犯人は捕まったっすか?」

「うん、毒を盛ったウエイターは逮捕された。……でも、安心できない。そのウエイターは誰かに雇われていたみたいなんだけど、その雇い主がまだわかっていないんだ」


 毒を盛ったウエイターは、雇い主の名を言わないよう脅されているようで、まだ黒幕がわからないのだ。かなり怯えていたようなので、家族の命か何かを盾に脅されているのかもしれない。


 「……ねえ、アニエス。どうしてあの時、ワインを交換しようと思ったの?もしかして、毒が入っていると思ってたの?」

「……エルネスト殿下が命を狙われているっていう話を聞いていたので、もしかしたらと思ったっす……」

 ゲームの世界でもエルネスト毒殺未遂事件があったとは言えない。ゲームの世界では、エルネストを助けるのはアニエスではなくヒロインだったが。

 「……僕はいつも君に助けてもらってるね。ありがとう。……でも、出来ればもっと自分を大切にして欲しいな」

「……善処するっす」


 そう言って、アニエスは目を閉じた。そして、一年前の事を思い出していた。

 一年前、風邪を引いたアニエスは自室で休んでいた。そして夕方目を覚ますと、ベッドの側の椅子でエルネストが居眠りをしていた。どうやら、アニエスの看病をしていたようだ。第二王子がだたのメイドの看病をするなんて、当時はかなり驚いたものだ。

 エルネストは、きっと誰にでも優しい。自分が特別ではない。そう思いながらも、アニエスは温かい気持ちになったものだ。



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