転生少女と真相1
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エルネストがポーラを訪ねた次の日、レオナールとブリュノが執務室で話していると、部屋のドアが強めにノックされた。
「陛下、大変です!アニエス・マリエットが……殺害されました!」
「何だって!」
レオナールが勢い良く立ち上がる。
「どういう事だ!」
レオナールがドアを開けると、兵士らしき黒髪の男――ユベールが緊迫した表情で言った。
「今朝、アニエス・マリエットのいる部屋から叫び声がしたので、見張りの兵士が部屋に駆け付けたそうです。そうしましたら、部屋のベッドに血だらけになったアニエス・マリエットが横たわっており、メイドが震えて床に座り込んでいたそうです」
詳しく話を聞くと、アニエスの世話をしているリュシーが昨夜から行方不明になり、今朝アニエスの部屋に行ったメイドは新人との事だった。アニエスは死後数時間経っている様子で、アニエスの部屋を訪ねたのがリュシーのみだったことから、リュシーが犯人と思われた。
「……エルネストにも知らせたのか?」
「はい。ご遺体をご覧になっても、まだ現実を受け止め切れておられないようでしたが……」
「……アニエス嬢の遺体は丁重に扱うよう兵に言ってくれ。それと、酷だが、エルネストとフレデリクに今すぐ会議室に来るよう言ってくれ。今後の対応を考えなければならない。私もすぐに行く」
「承知致しました」
兵士は、足早に部屋を後にした。
しばらくして、会議室には、レオナール、コンスタンス、フレデリク、エルネスト、ブリュノの五人がいた。エルネストは、茫然とした顔をしている。
「……まず、一連の事件をどう公表するかを決めたい。アニエス嬢は既にエルネストの婚約者として知られている。彼女の死を隠す事は出来ない。彼女が王妃暗殺未遂事件の被疑者として幽閉中に殺害されたとありのままを公表するかどうか……」
レオナールがそう切り出すと、ブリュノが口を開いた。
「そのまま公表するべきでしょう。下手に隠し立てすると、貴族どころか国民全体の不信感を招きかねない」
「もう少し待った方が良いのではないかしら」
そう言ったのは、コンスタンスだ。
「アニエス嬢が私を襲わせた理由も、彼女が殺害された理由もわからないままで公表する方が、良くない憶測を生んでしまうと思うのです」
「アニエス嬢が王妃殿下を襲わせたのは、王妃殿下がエルネスト殿下と彼女の婚約を認めていない者の中の一人だからでしょう。第二王子の妻という立場を確実に手に入れる為に襲わせたのです。アニエス嬢が殺害された理由は、リュシーとかいうメイドを捕まえればわかるでしょう。私は、早めに公表した方が良いと思いますが」
ブリュノが言うと、コンスタンスはしばし考え込んだ後提案した。
「では、明後日公表するというのはどうでしょう。実は、私昨日、投獄されているポーラと面会したのです。彼女は依頼主については教えてくれませんでしたが、依頼主を突き止めるヒントになるような事を口走っていました。明後日には、事件の真相が明らかになるでしょう」
「……承知致しました。明後日公表する事に致しましょう」
ブリュノが頷いて同意した。
「後は、公務をどうするかだな。……エルネスト、婚約者を失って辛いだろう。公務はしばらく休むと良い。フレデリク、お前には負担をかけるが、エルネストの分まで公務を引き受けてくれ」
「わかりました、父上。……エルネスト、部屋に戻ろう」
「……うん……」
エルネストは、相変わらず茫然としていて、誰とも目を合わせない。フレデリクは、エルネストを支えるようにして部屋を出て行った。
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