転生少女と幽閉4
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アニエスが差し入れの新聞を読んでいる頃、エルネストとシリルは、大衆食堂にいた。二人の向かいの席には、エトワール商会の従業員が一人腰かけている。
「王妃殿下を害しようとする人物ですか?」
その従業員は、エルネストの質問に虚を突かれたようだった。
「はい。王妃殿下が贔屓の商会を変えた事で、エトワール商会の経営が上手くいかなくなり、結構な数の従業員が解雇されたと聞きました。その関係で、王妃殿下を害そうとする者が現れないか心配なのです」
エルネストが、本当に心配そうな顔で言う。従業員はエルネストの顔を知らないようなので、王妃と交流のある商人だという事にしていた。ちなみに、王妃暗殺未遂事件については、しばらく公表しない方針だ。
従業員は、しばらく視線を宙に彷徨わせて考えた後答えた。
「うーん、今更王妃殿下を襲ってもまたエトワール商会が贔屓になれるとは思えないし、会長がリスクを冒して襲うとは思えませんね。後は……そうだ、あの男……」
「心当たりがあるのですか?」
「今回解雇になった従業員の中の一人が、綺麗な若い女なんですけど、彼女の弟が、一週間くらい前に商会に乗り込んできたんですよ」
「乗り込んできた?」
「はい。『うちの親が病気で治療費が必要なんだ。姉さんが解雇になったら困る』って言って、会長に詰め寄っていました」
エルネストとシリルは、顔を見合わせた。
昼になり、リュシーはアニエスのいる部屋を訪ねた。ノックをしても返事が無いので、「失礼します」と言って部屋に入る。すると、目の前にはとんでもない光景が広がっていた。
簡素とはいえ、可愛いドレスを着たアニエスが……木刀で素振りをしている。
「アニエス様……?」
リュシーの存在に気付いたアニエスは、慌てて素振りをやめる。
「あ、これは……以前から素振りの趣味があって……エルネスト殿下が木刀を木箱に入れてくれていて……」
困ったようなアニエスの表情を見て、リュシーは思わず笑った。
「フフッ……」
「リュシーさん……?」
「面白いお方ですね、アニエス様は」
「……よく言われるっす」
アニエスも笑った。
昼食の乗ったトレイをテーブルに置こうとして、リュシーはテーブルの上に乗っている新聞を目にした。
「新聞をお読みになっていたんですか?」
「はい。王妃殿下暗殺未遂事件についてはやはり内密にされているようですが、面白い記事を沢山見つけたっす」
「例えばどんな記事ですか?」
「既に薬草として知られているレーヴトケイソウに、新しい効能が発見されたとか。今後レーヴトケイソウの需要が高まるかもしれないので、レーヴトケイソウを加工した丸薬の生産を増やしても良いかもしれないっすね。ルヴィエ家が懇意にしている商会が医薬品も扱っているはずなので、機会があればシリル様に詳しい話を聞いてみたいっす。……まあ、素人の私が口を出す事でもないですが」
「へえ……勉強になりますね」
リュシーは、感心したように頷いた。その後も、アニエスは新聞の記事についてリュシーに聞かせた。
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