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二人の魔術師1(外伝)

よろしければ、お読み下さい。

 アニエスがエルネストと婚約する十八年前、ある荒野で二人の魔術師が対峙していた。

「……マリユス、あなたが魔物を生み出していたのね……魔物の数が増えていておかしいと思っていたけど……」

銀色の長い髪を靡かせて、ナディア・フーリエは言葉を発した。苦しげな表情をしている。


「ああ……こんな国、滅びた方がいいだろう」

そう言ったマリユス・ヴィトリーの目には、暗い光が宿っていた。

「確かに、この国は私達の一族を迫害していた過去があるけど、国を滅ぼすなんて……。あなたには奥さんも子供もいるでしょう?」

「クローデットはもうこの世にいないし、ロックはクローデットの遠縁の貴族に預けた」


 マリユス達の一族は、昔迫害されており、マリユスの両親は酷い環境で農作業をしながら暮らしていたが、マリユスが六歳の頃病で亡くなった。両親の死後、マリユスと弟のクレマンは奴隷として売られたが、運良く二人共貴族に引き取られた。

 クレマンは語学が堪能で、引き取ってくれたのが男爵家だったにも関わらず二十一歳の時に子爵の位を賜った。マリユスは魔術師としての才能を開花させ、騎士団で活躍していた。クローデットという恋人も出来た。

 そしてマリユスがもうすぐ二十八歳になろうかという時、クローデットの妊娠が判明した。クローデットとは正式には結婚できていなかったが、ヴィトリー家は賢いクレマンに継がせる事にして、小さいながら家を建てた。マリユスは幸せの絶頂にいた。


 しかし、出産時クローデットの身体への負担が大きく、産婆だけではどうしようもない状態になった。マリユスは医者を呼ぶ為急いで治療院へ向かった。そこでマリユスは愕然となる。当時マリユスが住んでいた町には医者が二人いたが、どちらも不在だった。

 何とか医者を連れて戻った時には、既に子供が生まれており、クローデットは帰らぬ人となっていた。

 後から聞くと、医者は二人共王城に呼ばれていたらしい。王族が数名病に罹っていたからだ。しかし、その病は度重なる不摂生によるもので、しかも緊急性がないにも関わらず半ば強引に医者を連れて来たらしい。もっと早く医者に診てもらえば、クローデットは助かったかもしれないのに。

 幼い頃に両親と共に迫害されたばかりか、愛する人の命まで失った。そんな原因を作った王族を、マリユスは許せなかった。そして、国を滅ぼす事にした。


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