転生少女の決意2
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翌日、アニエスは王城の広間にいた。隣にはエルネストがいる。広間でしばらく待っていると、フレデリクと現王のレオナールが入って来た。カーテシーをして頭を下げながら、アニエスはチラリと現王を見た。今まで現王を間近で見た事が無かったが、優しそうな目をしている。美しい顔立ちと青い瞳は、エルネストに似ていた。
「頭を上げなさい、アニエス・マリエット」
玉座に座った現王に言われ、アニエスは頭を上げる。姿も若ければ声も若い。現在四十歳とは思えない。
「文化祭での事は聞き及んでいる。魔術を使い来場者達を助けたそうだな。皆に変わり礼を言う」
「もったいないお言葉でございます」
アニエスは、緊張しながら応えた。
「今日君に来てもらったのは、他でもない。そこにいる愚息との婚約についてだ」
現王につられて、アニエスもチラリとエルネストを見る。
「平民の君が愚息と婚約する事になった理由は、建前としてはマリユス・ヴィトリーの子である君を監視する為だった。だが、その建前はもう使えない。君がマリユスではなくナディア・フーリエの娘である事はもう高位貴族に知られている」
アニエスは、心臓が早鐘を打つのを感じた。まさか、婚約を解消するよう言われるのだろうか。エルネストも、少し不安そうな表情をしている。
「そこで、君に一つ聞きたい。……君は、愚息と共に人生を歩みたいと思っているのかな?」
アニエスの顔に汗が浮かぶ。まだ自分に自信が持てない。エルネストの隣に立つのに相応しいとは思えない。それでも、自分の素直な気持ちを伝えたかった。
「はい、エルネスト殿下と共に生きていきたいです。私は……エルネスト殿下の事を、お慕いしております」
その言葉を聞いて、現王は微笑んだ。
「……なら、婚約を継続すればいい。文化祭で貴族達を救った功績があれば、高位貴族も婚約に反対しにくくなるだろう。それに加えて、君がどこかの貴族の養女にでもなれば、さらに婚約は盤石なものになるだろうな。貴族の派閥の問題など面倒もあるが、それは私や愚息達が対処しよう……それでいいな?フレデリク、エルネスト」
名を呼ばれた二人は、揃って「はい」と答えた。
「……ありがとうございます、陛下」
アニエスは、穏やかな表情で頭を下げた。
広間を後にした後、アニエスとエルネストは二人きりで城の庭を歩いていた。
「……私を養女として迎えてくれる家が、あるでしょうか?」
アニエスが、不安そうに口を開いた。
「ああ、その事だけど、何とかなりそうだよ。ガイヤール家が、君を養女にする話を前向きに考えているらしい」
「コレット様の家が……」
考えてみると、ガイヤール夫妻が娘の命を救ったアニエスを養女に迎えようとするのは、不思議ではない。それに加え、コレットが「アニエスと姉妹になりたい」と我儘を言っている可能性もある。
「ガイヤール家の養女になれるのなら、私も嬉しいっす」
「……ねえ、アニエス、もう一度、言ってくれないかな」
「何の事っすか?」
「さっき、僕の事を、『お慕いしております』って……」
アニエスは、少し困ったような表情をして黙っていたが、意を決したようにエルネストを見ると言った。
「エルネスト殿下、お慕いしております。この先何があっても、殿下を信じ、殿下の側にいる事を誓います」
言い終わった瞬間、エルネストはアニエスを抱き締めていた。
「……ありがとう、アニエス。幸せにする」
「……もう幸せっす」
アニエスは、微笑んで言った。
二人を祝福するように風が吹き、側にある花壇から花弁が舞い上がった。
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