転生少女の苦悩5
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リビングでフォスティーヌが出してくれたホットミルクを飲み、アニエスはホッと息を吐いた。
「落ち着いた?」
フォスティーヌが穏やかな笑顔で聞く。アニエスは、無言で頷いた。
「……お父さん、お母さん、私、本当の親の事、聞いたっす……」
二人が、ハッとした顔をした。アニエスは、今まであった事を全て話した。
「そうか……マリユスの事を知ったのか……」
ジョズエが腕組みをして呟いた。
「……二人は、私の事を知った上で引き取ってくれたんっすよね……ロゼーヌ姉さんがまだ一歳で手のかかる時期だったのに」
「うん、最初ルヴィエ家を通して王家から話がきた時は驚いたが、まだ赤子だったお前を見てすぐ引き取る事に決めたよ。特に理由があったわけじゃない。揺り籠の中で眠っていたお前を見て、『この子は俺達の子だ』って思ったんだ」
「……育ててくれて、ありがとう……二人が私の親になってくれて、良かった……」
不意に、店の方のドアが開く音がした。フォスティーヌは一旦リビングを離れたが、すぐ戻ると、アニエスに告げた。
「アニエス、お客様よ」
「え……」
フォスティーヌの後ろから姿を現したのは、平民の恰好をしたエルネストだった。
「アニエス、心配したよ」
「……ご心配おかけして、申し訳ないっす」
今、リビングにはアニエスとエルネストの二人しかいない。ジョズエとフォスティーヌは、気を使って席を外してくれている。
「元気……ではないだろうけど、君の無事な姿を見て少し安心した。何かして欲しい事があったら言って。僕は君の婚約者なんだから」
婚約者。その言葉を、あと何回言ってもらえるのだろうか。アニエスは、胸が締め付けられるような思いだった。
「……私が殿下の婚約者に選ばれたのは、私がマリユス・ヴィトリーの娘だからなんですよね……」
「正確に言うと違う」
エルネストは、真剣な顔つきで言った。
「王宮の皆を納得させる為に、監視だの何だの言ったけど、本当は、僕自身がアニエスを望んだんだ。君が誰の子でも、どんな理由をこじつけてでも君を側に置く気だった。君は自己評価が低いから、こんな事言っても信じてもらえないと思って今まで黙ってたけど……ずっと、アニエスの事が好きだったんだ」
アニエスは目を瞠った。エルネストが自分の事を好き?そんな夢みたいな事があるだろうか。でも、目の前のエルネストが冗談を言ったり何かを誤魔化しているようには見えない。
「……夢じゃ……ないんすね。本当にエルネスト殿下が私の事を……」
「うん、君の事を愛している。……ねえ、アニエス。高位貴族の中には、君の監視はルヴィエ家に任せて、僕との婚約を破棄するべきだと言っている者達もいる。でも、僕は何があっても、君を放さない。それだけは、覚えておいて」
「殿下……」
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