転生少女の苦悩2
よろしければ、お読み下さい。
重要な回に突入かも。
二日後の昼休み、アニエスはまた図書室にいた。そばにはロックとイネスもいる。
「え?蜂の騒動を起こした犯人がわかったの?」
ロックが驚いたように言った。
「はい。でも、その男も人に雇われていたようで。雇い主を見つけないと根本的な解決にはならないっす。それで、死神バチに詳しい人物を調べたいので、イネス先生に奥の書庫に入る許可を頂きたいっす」
論文のコーナーよりさらに奥にある書庫には、死神バチについてさらに詳しく記載してある論文もあるが、貴重な資料も沢山ある。なので、書庫に入るには教師の許可が必要だ。
「……ごめんなさい。書庫に入る許可は、学年主任以上のキャリアが無いと出せないの。私はこの学園に勤めて一年位しか経ってないから……」
「そうっすか……まあ、酒をかけた男はもうエルネスト殿下の働きかけのおかげで衛兵に捕まっているようなので、彼の口から雇い主を聞く事が出来るでしょう」
アニエスは、そう言って腕組みをした。
夜になり、その人物はあるアパートの前に立っていた。白い壁の安っぽいアパート。その一室に足を踏み入れると、その人物は部屋を漁り始めた。
劇場でアニエスを襲わせたのが自分だと露見するのは避けたい。なので、酒をかけた男の自宅であるこのアパートに忍び込んだのだ。
男と自分が接触した痕跡が残っていないか確認していると、不意に玄関のドアが開いた。
「やっぱり、あなただったんすね……イネス先生」
雇い主――イネスは、驚愕した表情で振り返った。そこには、アニエスとエルネストがいた。
「……二人共、どうしてここに……」
イネスは、目を見開いてそう呟くしかなかった。
「先生が黒幕だと思ったので、罠を仕掛けさせて頂きました。先生、一昨日私が劇場での出来事を話した時、こう言ってましたよね。『大変だったのね。酔っ払いの男に果実酒をかけられたり』って。どうして果実酒だってわかったっすか。私は、酒をかけられたとしか言っていないのに」
イネスは、何も言えず唇を噛んでいた。
「先生が雇った男が捕まったのは本当です。その男は、名前が知らないが銀髪の綺麗な女に雇われたと言っていました。でも、アニエスや男の証言だけでは証拠として不十分です。なので、まだ先生が黒幕だと気付いていない振りをして、先生を焦らせたんです。男が捕まったと知れば、先生は証拠隠滅の為に動くだろうと踏んで」
エルネストも口を挟んだ。
アニエスは、イネスの跡をつける役目を衛兵ではなく自分にさせて欲しいとエルネストに頼んでいた。エルネストは、自分が一緒に行くのを条件にその頼みを聞く事にした。
しばらくの沈黙の後、アニエスは呟いた。
「……先生、どうしてこんな事をしたっすか。先生は、いつも私に優しかったじゃないっすか。私が女生徒に虐められていないか気にしてくれたり……」
イネスは、キッとアニエスを睨むと、強い口調で言った。
「あなたが……あなたが、魔物を操っていたからよ!あの薬草実習での事件、あなたがコレットさんの前に出た途端、魔物が引き下がったそうじゃない。あなたが魔物を操っていたとしか思えないわ!」
「え……」
そんな風に思われていたなんて、考えもしなかった。
「違う……私は何も……」
「嘘!だってあなた、黒髪に紫色の瞳をしているじゃない。……しかも、あなた、右腕に大きな痣があるでしょう?夜会で見たのよ!そんな特徴があるのは、ただ一人……」
ハッとなったエルネストが叫んだ。
「やめろ!それ以上言うな!」
しかし、イネスはそれに構わず、決定的な言葉を放った。
「アニエス、あなた、マリユス・ヴィトリーの娘でしょう!?」
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