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転生少女と歌姫1

よろしければ、お読み下さい。

 ある日、ルヴィエ邸のテラスにいたアニエスはエルネストと二人でお茶をしていた。

「アニエス、一つお願いがあるんだけど」

「何でしょう?」

「実は、一週間後にクヴィエト帝国の歌姫がこの国にいらっしゃる事になったんだけど、その歌姫が出演する歌劇に招待されているんだ。それで、婚約者として僕と一緒に劇場に来て欲しいんだ」

 その歌姫、ユスティーナ・バレシュは、世界的に有名な歌手なので、外交に利用される事もあるのだろう。向こうの国は、本当はフレデリクとブリジットを招待したかったかもしれないが、生憎その二人には予定がある。それで、エルネストとその婚約者であるアニエスが招待される事になったと思われる。

 「承知したっす。同行させて頂きます」

アニエスは、歌劇を見た事がない。少し楽しみにしながら、お茶を口に含んだ。


 その四日後の昼、アニエスは街で買い物をしていた。帰り道、アニエスは裏路地で誰かが言い争っている声を聞いた。覗いてみると、一人の女性が数人の男性に言い寄られている。男性達は、昼間から酔っぱらっているようだ。

「困ります、手を放して下さい」

「いいじゃねえか、向こうで一緒に飲もうぜ」

「そうそう、楽しもうぜ」

女性は、黒髪を無造作に束ねていて、白いワンピースを着ている。褐色の肌をしているが、異国から来たのだろうか。

「その人、嫌がってるじゃないすか。手を放すっす」

アニエスは、男達に声を掛けた。

「あ?嬢ちゃんには関係ないだろ」

「そうそう、あっち行ってな」

男の一人がアニエスを突き飛ばそうと近づく。

「……仕方ないっすね」

アニエスは、持っていた木刀で男の腹部を打ち付けた。

「いたっ……」

「この女……!」

他の男達もアニエスに向かってきたが、アニエスは次々と男達を打ちのめしていく。

「……何なんだよ、もう行こうぜ」

男達は、よろめきながら路地裏を去って行った。

 「……あの、助けてくれてありがとう」

アニエスと二人きりになると、絡まれていた女性は礼を言った。

「気にしないで欲しいっす。でも、この辺りを一人きりで歩くのはやめた方がいいっすね」

「ええ、今度から一人で歩かないようにするわ……今日は、一人になりたかったものだから」

「はあ……」

何となく放っておけなくなり、アニエスは実家にその女性を連れて行った。そして、店で彼女の話を聞いた。


 彼女はユリエと名乗った。詳しい事は言わなかったが、仕事について悩んでいるらしい。

「……芸術関係の仕事をしているんだけど、私がやりたい仕事をさせてもらえないの。やりたい仕事は評価されずに、嫌々やっている仕事が評価されて……。今、仕事を辞めようか悩んでいるの」

「そうなんですね……」

アニエスは、一口お茶を飲んで口を開いた。

「まあ、結局は本人がどうしたいかという話っすからね……。自分が納得できる仕事をする事が最優先なのか、自分は納得できなくても自分の仕事で誰かが喜んでくれる事が最優先なのか……どちらが正しいとも言えないっすけど」

「何が自分にとって一番大事か……ね。ありがとう、話を聞いてもらったらスッキリしたわ」

ユリエは、微笑んで言った。


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