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転生少女と剣術大会2

よろしければ、お読み下さい。

 次の日、試合が始まる前エルネストが闘技場の通路を歩いていると、アニエスが男子生徒と話しているのを見かけた。そのウェーブがかった黒髪の生徒とアニエスは、随分親しそうに見えた。

「アニエス、おはよう」

エルネストが声を掛けると、アニエスは振り返った。

「おはようございます、エルネスト殿下」

「今日は木刀を持っていないんだね。……ところで、そちらの方は?」

「ああ、こちら、ロック・アーバン様。図書委員をしていて、よくお世話になってるっす」

アニエスが紹介すると、ロックは恭しく礼をした。

「お初にお目にかかります。ロック・アーバンと申します。以後お見知りおきを」

ロックも剣術大会の選手らしい。「準備がありますので」と言って、その場を去って行った。


 アニエスと二人きりになったエルネストは、アニエスに聞いた。

「……君は、ああいう男が好みなの?」

「異性として好きかという意味っすか?それなら、別に好みというわけではないっす。親切な方だとは思いますけど」

「そう……ならいいんだ。でも……」

エルネストは、アニエスに顔を近付けて言った。

「あまり他の男子生徒と仲良くしないで欲しいかな。妬けるから」

「え……」

アニエスが少し動揺した気がする。顔も少し赤くなっているようだ。

「じゃあ、僕はもう行くね」

アニエスの反応に満足したエルネストは、そう言ってその場を去って行った。

その場に残されたアニエスは、少しの間その場を動けなかった。今のエルネストの言葉は、まるでアニエスに惚れているみたいじゃないか。隠している事情がありそうだが、アニエスは都合が良いから婚約者に選ばれただけのはずなのに。今まで優しくしてくれたのだって、親友だと思ってくれているからだと思っていたのに。


二日目の試合が始まった。エルネストは順調に勝ち続け、とうとう準決勝まで駒を進めた。準決勝での相手は、ロックだった。

「お手柔らかにお願い致します」

開始時の挨拶で無表情のままそう言ったロックだが、準決勝まで勝ち残っただけあって、一筋縄ではいかなかった。

 エルネストが全力でスピードを上げて斬りかかっても、ロックはひらりと身をかわす。ロックは、斬りかかるというよりは突くような動きでエルネストを攻撃してきた。ロックはしなやかに動き、いろんな角度から攻撃する為、かわすのが難しい。

 そんな中でもエルネストは隙を突いてロックの胸の辺りを狙うが、ギリギリのところで避けられた。そしてロックは、剣でエルネストの脚を打ち付けてきた。エルネストは仰向けに転倒する。

 その隙にロックがエルネストの胸を突こうとするが、エルネストは下から素早くロックの胸を突いた。しばらく辺りが静寂に包まれたが、エルネストの勝利を告げるアナウンスが流れた。

 歓声が沸く中、エルネストは真顔のままだった。一歩間違えば、エルネストは負けていた。まだまだ未熟である事を思い知らされた気分だった。ちらりと応援席を見たが、アニエスの姿は見当たらなかった。


 しばらく休憩の時間が取られた後、とうとう決勝戦を迎えた。場内はひと際盛り上がっている。エルネストの目の前に現れた対戦相手は、鎧を身に着けた小柄な人物だった。面を被っているので顔がわからない。これが、フレデリクの言っていた「すごい奴」か。

 試合が始まった。鎧の男がエルネストに斬りかかってくる。エルネストは攻撃を避けた後、鎧の男にフェイントを仕掛けた。右から攻撃すると見せかけて一歩引き、左から斬りかかる。

 しかし、鎧の男はそれを間一髪で避けた。そして、素早くエルネストに斬りかかる。エルネストはまた攻撃を避けると、今度は地面スレスレの低い位置から剣を振るう。鎧の男はピョンと跳ねて避けると、上からエルネストに斬りかかる。すごい跳躍力だ。

 鎧の男と剣を交えながら、エルネストはある事に気が付いた。エルネストは少しだけ口角を上げると、鎧の男の剣を弾き返し、攻撃を仕掛ける。

 左から斬りかかると見せかけて、足を一歩引く。鎧の男は、またフェイントを仕掛けられたと判断し、エルネストから見た右側に神経を集中させる。しかし、エルネストはそれを見越したように、素早く左から斬りかかった。金属同士がぶつかり合うキンという音が辺りに響く。エルネストの剣は、鎧の男の胸を突いていた。


 「勝者、エルネスト殿下!!」

興奮した声のアナウンスが会場に響いた。大きな歓声が場内を包む。エルネストは、剣を腰に収めると、苦笑した。

「本当に、君には驚かされるよ。どうしてこんな事をしているのかな?アニエス」

鎧の男――アニエスは、面を取ると困った顔で微笑んだ。

「バレてたんっすね。……殿下には敵わないっす」



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