転生少女と剣術大会1
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薬草実習で負ったアニエスの怪我も癒えてきたある日、学園の近くにある闘技場は賑わっていた。学園主催の剣術大会がある為だ。学園に在籍する男子生徒の多くは参加する事になっている。
開会前、闘技場に入ろうとしたエルネストは、会場の外でアニエスを見つけた。制服姿のアニエスは、いつもと同じく、木刀で素振りをしている。
「おはよう、アニエス。君は競技に参加しないのに、今日も素振りをしているの?」
学園の女生徒は大勢会場に来ているが、皆応援の為に来ている。
「おはようございます、エルネスト殿下。やっぱり、こうしているのが落ち着くっす」
「そう。素振りをするのもいいけど、試合が始まったら、僕の事を応援してくれると嬉しいな」
「もちろん、応援するっす。一応、エルネスト殿下の婚約者なので」
「一応……ね」
エルネストは苦笑したが、アニエスに手を振って闘技場に入った。
この大会はトーナメント方式で、二日間に渡って行われる。使うのは殺傷能力のない模造刀で、対戦相手の胸に剣を当てるか相手を場外に追い出すと勝利となる。ちなみに、服装や防具にこれといった規定は無いが、剣に殺傷能力が無い為、生徒は胸に小さな防具を着けるだけで、制服姿で参加する事が多い。
大会が始まり、エルネストは一回戦を難なく勝利した。試合終了直後エルネストは応援席を見渡したが、アニエスの姿が無い。クラスごとに席が決められているし、黒髪はエルネスト達のクラスではあまりいないので、見つけやすいはずなのだが。
しばらくして行われた二回戦もエルネストが勝利した。応援席を見渡すと、今度はアニエスがいた。無表情で大人しく席に座っている。続く三回戦もエルネストが勝利し、剣術大会の一日目は終わった。
エルネストが王族専用の控室に戻ると、アニエス、ブリジット、フレデリクが待っていた。フレデリクは学園を既に卒業しているが、控室への出入りは許されている。
「お疲れ、エルネスト」
「エルネスト様、お見事でしたわ。……まあ、勝ち残る事は予想していましたけれど」
フレデリクとブリジットが口々に言った。
「ありがとう、二人共。……アニエス、僕の応援してくれた?」
「はい、お見事でした」
アニエスは、頷いてそう言った。
「……一回戦の時、応援席に居なかったようだけど」
「気のせいでは?ちゃんと応援してたっす」
腑に落ちないが、そういう事にしておこう。
「そう言えば、聞いたか?すごい奴がいるって」
フレデリクが話題を変えた。
「すごい奴?」
エルネストが首を傾げた。
「ああ、銀色の鎧を身に付けた男で、顔も鎧で隠してる奴なんだけどな。小柄なのに、見事な腕前で、体格差のある相手にも難なく勝っているんだ。もしかしたら、お前と決勝戦で当たるかもな」
「ふうん……うちの学園に、小柄でそんなに強い生徒がいたかな……?」
「もしかしたら、外部の参加者かもしれないな」
今回の剣術大会には、学園の生徒以外も参加できる事になっている。なんにせよ、強い相手と闘う事は自身の成長に繋がる。エルネストは、明日の試合を楽しみに感じた。
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