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転生少女と薬草実習2

よろしければ、お読み下さい。

 「アニエス、大丈夫!?」

医務室に駆け込んできたエルネストが緊迫した声で言った。

「エルネスト殿下。大丈夫っす。それと、入る時はノックをして欲しいっす」

「あ、ごめん……」

アニエスは、医務室に常駐する医師に手当てをしてもらっていた。今、丁度制服のブラウスのボタンを留めている所だ。アニエス達が魔物に遭遇し怪我をした事が、早くもエルネストの耳に入ったらしい。

 「……アニエス、本当にごめんなさい、私を庇う為に……」

アニエスの側にいたコレットが、しゅんとした顔で目を伏せた。

「気にしないで欲しいっす。……それに、『平民』とか『あなた』じゃなく、『アニエス』って呼んでくれた事、嬉しかったっす」

「……あなたって、本当に……。今度、何かお礼をさせてね。……じゃあ、私、教室に戻るわ」

そう言って、コレットは医務室を後にした。魔物が現れた事はイネスから他の教師達に伝えられ、今職員室は大騒ぎになっている。そして、薬草実習は中止となり、アニエス達の学年の生徒は全員教室で自習する事となった。


 「……本当はずっとアニエスの側に居たいけど、サボるわけにはいかないし、僕も教室に戻るよ」

そう言ってエルネストも医務室を出ようとした。

「あ、殿下、少し話があるっす」

アニエスが呼び止めた。

「何?アニエス」

「……殿下、今まで以上に身の回りを警戒して欲しいっす」

「どういう事?」

「この学園の生徒は、ほとんどが貴族。生徒達が危険な目に遭わないよう、学園の周囲には魔物除けの香水やトラップがあると聞いたっす。それなのに魔物が入って来た。……もしかしたら、学園内に魔物を引き入れた人物がいるかもしれないっす」

「何だって!」

エルネストは目を丸くした。

「あくまで推測っす。魔物除けに耐性のある魔物だったのかもしれないし、たまたまトラップをすり抜けただけかも。……でも、殿下は命を狙われる可能性のある身。十分気を付けて欲しいっす」

「……わかった」

エルネストは、深刻な顔で頷いた。

 アニエスには、もう一つ気になる事があった。何故魔物はアニエスが怪我をした後、襲うのをやめたのか。その疑問をエルネストに伝えたが、エルネストは無言のままだった。


 その日の放課後、アニエスは図書室にやってきた。カウンターを見ると、図書委員が居眠りをしていた。

「……ロック様、起きて下さい」

ロック・オーバンは、クラスは違うがアニエスと同じ学年の男子生徒。ウェーブがかった黒いショートヘアと茶色い瞳が特徴的だ。

「……ん……ああ、アニエス・マリエット。今日はどうしたの?」

「魔物の生態に関する本を探してるっす。どの本棚にあるか教えて頂きたいっす」

「ああ、それならD-1の棚の上の方にあるよ」

「ありがとうございます」

礼を言うと、アニエスは早速その本棚に向かった。目当ての本を見つけ、取ろうとするが手が届かない。ジャンプして取ろうとするが、やっぱり届かない。

 すると、アニエスの後ろからスッと手が伸びて、その本を取り出した。

「はい」

そう言ってアニエスに本を手渡したのは、ロックだった。

「ありがとうございます」

「……魔物の何について調べてるの?」

ロックが、相変わらず無表情のまま問いかける。アニエスは、薬草実習で起きた事を話した。

「……というわけで、魔物が私を襲うのをやめた理由を調べたいっす。もしかしたら、魔物を倒すヒントになるかもしれないっす」

「ふうん……。頭が三つある魔物って言ったら、これだね」

ロックは、アニエスから本を奪い取ると、該当ページを開いた。アニエスはそのページを覗き込む。

「うーん……。魔物はナディア・フーリエの血に弱かったという記述はありますが、私を襲うのをやめた理由はわからないっすね……」

「そうだね。……この本、借りる?」

「はい、何かの参考になるかもしれないので、借りたいっす」

「じゃあ、カウンターで貸出表にサインして」

「はい」

そう言って、アニエスはカウンターに向かった。


 その夜、アニエスは自室で今日借りた本を読んでいた。魔物が学園にまで入り込んでいた事で不安が大きくなっている。

 ナディア・フーリエもヒロインも不在の中、ブリジット、エルネストを始め、アニエスの大切な人達は無事でいられるのだろうか。

 いや、不安になってばかりではいられない。自分に出来る事はないか探さなければ。そう心を奮い立たせて、またアニエスは本に目を落とした。


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