転生少女と薬草実習1
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魔物が登場します。
ある日、学園の裏庭にアニエスのクラスの生徒達が集まっていた。イネスが微笑みながら説明する。
「今日は、薬草を採集する実習を行います。有毒な植物と間違えないよう注意しましょう」
貴族に薬草の知識は必要ないが、選択科目として薬草に関する授業がある。アニエスは、歴史や経済の授業より、こういう授業の方が好きだ。
ある程度薬草の説明をした後、イネスが言った。
「では、二人一組になって実際に薬草を採取して、加工してみましょう」
アニエスは困った。アニエスはエルネストと婚約した為、女生徒から嫌われている。男子生徒も、アニエスにちょっかいを出すとエルネストに睨まれるので声を掛けづらい。そして、そのエルネストはこの科目を選択していない。つまり、組む相手がいない。
「あら、あなた組む相手がいないの?仕方ないから、私が組んであげるわ」
そうアニエスに声を掛けて来たのは、コレットだった。つっけんどんな言い方ではあるが、先日の事件があってからコレットは反省したらしく、今も厚意で声を掛けて来たのがわかる。
「ありがとうございます、よろしくお願いするっす」
裏庭は学園が管理していて、色々な薬草が生えている。怪我に効く薬草や胃腸の働きを良くする薬草など、アニエスが興味を持つものばかりだ。
「……あなた、楽しそうね」
コレットが、目を輝かせているアニエスに向かって言った。
「そうっすね。……こんな小さな植物に人間の病気を治す能力があるなんて、すごいじゃないっすか。興味は尽きないっす」
「そう……。あの、この前の事、本当にごめんなさい……。あなたは、私が咎を受けないように、私があの男達を雇った事を内密にしてくれるような人なのに……」
「もう気にしないで欲しいっす。それより、早く課題になっている薬草を集めてしまいましょう」
「あなたって、本当に優しいのね……」
コレットは、穏やかな笑みを浮かべた。
次の瞬間、獣が唸るような声が聞こえて、アニエスはバッと振り返った。そこにいたのは、人間の三倍はありそうな大きさの黒い犬だった。ただ大きいだけではない。その犬には、頭が三つあった。魔物だ。
「ひっ」
コレットが思わず声を上げた。これはまずい。魔物は人の声に反応しやすい。案の定、魔物はコレット目掛けて走り出した。
「危なっ……!」
アニエスは、コレットを正面から抱き締めるようにして庇った。
次の瞬間、アニエスの背中に激痛が走った。魔物の爪で引っかかれたのだ。
「……っ!!」
背中から出血しているのがわかる。
「アニエス……!!」
コレットが叫んだ。
「……声を出してはいけません。魔物が興奮するっす……」
「ご……ごめんなさい……」
アニエスは、隠し持っていた木刀を握りしめると、魔物と向かい合った。勝てるかどうかわからないが、コレットを守らなければ。
しかし、魔物はしばらくアニエスをジッと見た後、後ろを向いて立ち去って行った。何故立ち去ったかはわからないが、助かった。安心すると、アニエスはその場にへたり込んだ。
「アニエス、大丈夫?すぐに医務室に連れて行くからね!イネス先生にも報告しないと」
コレットが慌てる中、アニエスは何かを考え込む表情をしていた。
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