エピローグ
ここは、ルシフェレス領の地の底。
人間に知られることのない、遥か昔に忘れ去られた呪われた大地。
そこに、一体の魔族が姿を現した。
『お久しぶりです。イシュタル殿』
『ようやく目覚めたか、ゾンダーク』
互いに、異形の姿を持つ魔物。
しかもその威圧感はヴェルフェゴールのそれと比べ、遥かにおぞましいものだった。
『あれから800年か、目覚めてみればそれほどのものではないな』
『しかし、我らが目を覚ましたということは……魔王様も?』
『うむ、おそらくどこかで既に転生されておいでだ』
『お会いするのが待ち遠しいです』
言いながら、ゾンダークはしばしかぶりを振った。
寝ぼけ眼をこするような仕草で、しばし中空を見上げる。
『どうした、ゾンダーク』
『申し訳ありません、イシュタル殿。永い眠りから覚めたせいか、色々と記憶が消えておるようで』
『力の弱いものほどその傾向が強いようだな。ヴェルフェゴールなどは、乱心したようで一人先陣切って滅ぼされたようだ』
『恥ずべきことに、魔王様のご尊顔を忘れてしまったようです』
イシュタルは、かつての部下を慰めるように言葉を返す。
『気にするな。転生された魔王様は元のお姿ではない。だが、その強さは変わることがない。いずこに転生されても、すぐに見つけ出せるであろう』
『魔王様、どれほどのお強さだったでありましょうか』
『うむ。魔王様自身の強さもさることながら、あのお方の最も恐ろしいところはその戦略眼にある。何しろ──」
かつて、共に人間たちと戦った時のことを思い起こす。
魔王の苛烈な戦いは、800年たった今でも目に焼き付いていた。
『何しろ、人間どもの嫌がることを的確に見抜き、容赦なくそこを攻めたてられておいでだった。他人の嫌がるさまを見るのが、何よりもお好きな方だった』
短編でやるには長すぎたので、短期集中連載という形式でお送りしました。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
最後に、
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