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10話 虚無の戦


「……あれが、()()()()なのだな」


 二人が去った後、ヴォイドはそんな言葉を漏らした。

 いつものぬぼーっとした無表情ではなく、心なしか何かに感心したような表情を浮かべている。


「これが、平和な世での、貴族の戦いですわ。相手の弱みを見抜き、そこを徹底的にたたくのです」

「オレが学んできたものとは、全く異なる戦い方だ」


「あなたも、少しは剣以外の戦いも学ばれてはいかがです?先ほどのように、無茶な戦法ばかり取っていては長生きできませんわよ」

「そうだろう……な……」


 その時、屈強なヴォイドの身体がぐらりと傾いた。

 相変わらず無表情なままだが、顔色が悪い。


「まさか、貴方。先ほどの魔剣に──」

「それなりに生命力を吸わせたからな。寿命にしておよそ2年くらいか」


 なっ……!


「どうしてそんな無茶を!あなたほどの実力があれば、あの剣に触れることなく制圧することだって容易かったでしょうに!」

「お前が言ったんだ。けが人を出すな、と」


 真剣な彼の言葉に、私の胸はちくりと痛む。

 私の……せいで……!


「それにあの剣は、持つ者の生命力すら奪い取る。叩き折ったくらいで消える呪いでもなかった。俺の寿命を吸って、奴の怪我や生命力も持ち直すだろう」

「だからと言って、あなた自身が傷ついていい道理がありますか!」


 怒鳴る私に、ヴォイドは漆黒の瞳を向ける。

 初めて会った時に見せた、何も映すことのない、完全な虚無の瞳がそこにあった。


「別に、どうということはない。オレの命など、必要ならば使い捨てればいい」

「あな……たは……っ!」


 なぜかそれ以上言葉が出てこなくなって、私はその場で立ち尽くした。

 こんな気持ち、初めてだった。私が、魔眼の魔女と恐れられたこの私が、他人のために怒るなんてことが、あるなんて……!


 何かが零れそうになるのを必死にこらえながら、私は最後にこんな言葉をかけることしかできなかった。


「貴方は、もう少し……自分を大切になさい!」




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