オルフェウスは銀の花冠を抱かない。~悲劇の双子に救いをもたらすための物語~
『わたし』は金耀樹《きんようじゅ》。世界の上に根付いた一本の古木だ。
長い間、わたしはひとり佇むだけだった。何も変わらない日々、音もなく流れていく季節。これからも変わらず静かであり続けるはずだった時の中に、ある瞬間、波紋のように一人の少年が現れる。
「あんたは銀葉。……呼び名がないの面倒だし、それでいいだろ」
少年――エンジュはわたしをそう名付け、それから何気ない日々が始まった。
エンジュは不遜で、口が悪くて。斜に構えた態度とは裏腹に、その表情はどこか寂しそうだった。
ふとした瞬間に見せる鬱屈の理由など、わたしは知る由もなかったのだけど――。
ある日、エンジュを取り巻く悲しい真実が、わたしたちの日常を破壊していく。
「……その樹があるから、君は僕から離れていくんだろう? だったら」
穏やかな日々は、唐突に終わりを告げる。
わたしの前に現れたエンジュと同じ顔をした少年、エルンスト。彼はわたしの存在が害になると断じ、エンジュから引き離すため、刃を向けてきたのだが――。
散る血の代わりに見えたもの、それは鮮烈なまでに赤々とした最後の夕日だった。
運命の双子。エンジュとエルンスト。
かつて二人で一つだった少年たちは、すれ違いの末に何度も殺しあう。
繰り返される時間の中で死んでいくエンジュを救うため、わたしは幾度となく運命の円環に挑む。
彼らを救う道を選べるのは、わたしだけ。
最期から二番目の夕日。そこに残された真実にたどり着く道は、ただひとつ。
長い間、わたしはひとり佇むだけだった。何も変わらない日々、音もなく流れていく季節。これからも変わらず静かであり続けるはずだった時の中に、ある瞬間、波紋のように一人の少年が現れる。
「あんたは銀葉。……呼び名がないの面倒だし、それでいいだろ」
少年――エンジュはわたしをそう名付け、それから何気ない日々が始まった。
エンジュは不遜で、口が悪くて。斜に構えた態度とは裏腹に、その表情はどこか寂しそうだった。
ふとした瞬間に見せる鬱屈の理由など、わたしは知る由もなかったのだけど――。
ある日、エンジュを取り巻く悲しい真実が、わたしたちの日常を破壊していく。
「……その樹があるから、君は僕から離れていくんだろう? だったら」
穏やかな日々は、唐突に終わりを告げる。
わたしの前に現れたエンジュと同じ顔をした少年、エルンスト。彼はわたしの存在が害になると断じ、エンジュから引き離すため、刃を向けてきたのだが――。
散る血の代わりに見えたもの、それは鮮烈なまでに赤々とした最後の夕日だった。
運命の双子。エンジュとエルンスト。
かつて二人で一つだった少年たちは、すれ違いの末に何度も殺しあう。
繰り返される時間の中で死んでいくエンジュを救うため、わたしは幾度となく運命の円環に挑む。
彼らを救う道を選べるのは、わたしだけ。
最期から二番目の夕日。そこに残された真実にたどり着く道は、ただひとつ。
零章「二度目の出会いと、もう一つの答え」
∞:いずれ、去っていく君に
2023/08/27 21:02
1:朽ちていく金耀《わたし》、君の呼ぶ声
2023/08/27 21:02
2:時が流れるという必然
2023/08/27 21:03
3:鈍色の春、芽吹かない緑に
2023/08/27 21:04
4:誰の跡形、鳥の望む空
2023/08/27 21:04
5:最後の夕日の向こう
2023/08/27 21:04
真章「最後から二番目の夕日」
1:忘れることが『救い』なら、世界はずっと静かでいられた。
2023/08/28 21:46
2:誰もここに『いなくても』
2023/09/23 18:01
3:得られぬ後悔など『無意味』だと
2023/09/23 18:01
4:囚われの空に鳥は飛ばない。
2023/09/23 18:02
5:幸福《エンジュ》と言う名の赦し
2023/09/23 18:02
偽章「あなたを救う物語」
0:そうして、暗闇が訪れて
2023/09/23 18:02
1:それは報われることなき『一番目』の後悔
2023/09/23 18:03
2:偽られし『二番目』の告白
2023/09/23 18:04
3:何者も踏み込めぬ『三番目』の虚構
2023/09/23 18:04
壊章「時の終わりで君を待つ」
0:優しい終焉
2023/09/23 18:04
1:過ぎ去りし日々は幻想のように
2023/09/23 18:05
2:彼ら《ふたり》の物語
2023/09/23 18:06
3:虚実の標、限りなくゼロに近い願い
2023/09/23 18:06
4:そして僕らの時は止まる
2023/09/23 18:06
5:時の終わりで君を待つ
2023/09/23 18:07
終章「オルフェ・フィロ」
0:永遠の一葉
2023/09/23 18:07
Epilogue:『r』
2023/09/23 18:08
Epilogue:『n』
2023/09/23 18:08
∞:いずれ、出会う君に
2023/09/23 18:09