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エミリア レイノー国へ

 翌日、レイノー国へ帰省するソフィアが迎えに来てくれた。

 両親が反対しようとも無視を決め込んだ。

 そして旅の荷物にしては多すぎる荷物を馬車に詰め込んだのを見て、日頃何も言わず父親の言いなりの母が

「帰ってくるわよね?」

 と恐る恐る聞いた。

「ええ。では行ってまいります。」

 そっけなくそれだけ言い、レイノー国へ出発した。

 荷物のほとんどはソフィアの屋敷に置いてくるつもりの物だった。


 どれだけ話しても平行線だった。両親とは分かり合えない。

 今まで貴族の令嬢として過不足なく育ててもらった。貴族の娘として、家の為に政略結婚も受け入れていた。しかし、それは相手も同じ気持ちでお互い協力し合い、家族としての情を育てていければの話だった。

 いや、数か月前までは同じ気持ちだと思っていたのに。


 毎回、直前に約束を反故されると、好きな相手でなくても傷はつく。

 それを一方的に許せと言う両親に反発しかなかった。娘のことよりも、体面と婚姻によるメリットの方がそんなに大事なのかと悲しくなった。

 こんなに腹が立つのも意固地になるのも、ヨハンのせいではなく、両親に大事に思われていないことが分かったからだ。エミリアはもう親に期待していないとはいいながらも人知れず涙した。



 移住の準備や観光などレイノー国を10日ほど堪能したエミリアは実家に帰らず、ソフィアと寮に直帰した。将来に思いを馳せて意気揚々の帰国だ。

 帰国後、ヴィンセントにお土産を渡すために会う予定をしていた。

 ヴィンセントには返事をしなければならない。


「楽しかった?」

「とっても刺激的だったわ。ソフィアのおかげであちらでの暮らしの目途が付いたし、ワクワクしているわ。」

「そうか、エミリアはすごいな。尊敬するよ。」

「そんなことないわ。結局・・・婚約から逃げるようにしていくのだから。そんな美化されるようなことではないから恥ずかしいわ。」

「・・・そういえばユーロから聞いたんだけど、お前の婚約者面倒なことになっているな。」

「え?何のこと?浮気相手を妊娠でもさせた?」

「お前っ!なんてこと言うんだっ!ちがうよ!」

「いや、面倒な事ってそういう事かと思って。そうしてくれたら手っ取り早く解消になるからありがたいなあって希望が入っちゃって。」

「例の男爵令嬢、どこかの後妻に入るとか言ってただろう?その相手がお前の婚約者とフラフラ遊び歩いているのを聞きつけてお怒りらしい。多額の慰謝料を要求されたうえ、婚約破棄だと。」

「あら、それならなおさらヨハン様とその彼女が結ばれてめでたしめでたしじゃない。相手のいる令嬢に手を出したのだから慰謝料は半分でも分担しなきゃね。」

「ああ、それがさ。その男爵令嬢の方がノリノリで、お前の婚約者に破談になった責任をとってくれって迫ってるらしいよ。ユーロの話しぶりからすると、後妻に嫁ぐのが嫌で、はなからヨハンを落そうと狙ってたようだ。」

「なるほど?だからわざとらしく顔合わせの日に当ててきたわけね。腹黒令嬢、やってくれるじゃない。ヨハン様は人だけはいいからね、腹黒からしたらちょろかったでしょうね。」

「真相がわかって許してやるのか?」

「え?なんで?関係ないでしょ。仮によ、相手が悪意があって私との仲を裂こうと仕掛けたとしても、嫌なら断ることもできる、別の日に変えることもできる。自分でこのような事態になることを避けられたわけだから、ヨハン様も望んでいたという事でしょう。」

「だけど、お前の実家に弁解に来たみたいだよ。こういうことになっているが、自分はエミリアとの婚約を解消する気はない。問題を解決するまで時間が欲しいって。」

「迷惑な話よねえ。何なのかしら、本当に怖いわ。ヴィンセントが言うようになにかメリットあるかしら?」

「前にも言ったけどさ、やっぱりエミリアのことを本当は好きなんじゃないか?」

「まさか。そうならあんな風に毎回直前にキャンセルする?」

「そうだよなあ。それはないか。もしそうならただの馬鹿だもんな。」

「・・・。まあ、お馬鹿さんというのは遠からずって思うけど。言ってる事とやってる事が違って、矛盾だらけなんだもの。」


 二人してめちゃくちゃにこき下ろしていたが、高いしきりに遮られ、エミリアたちが座っている席の近くに当該カップルがいる事に気が付かなかった。


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